防災講座や研修では、様々な教材を使います。『避難所運営ゲーム(HUG)』などは、その代表例と言えます。詳しくは下記の記事をご覧ください。
ほかにもいろいろな教材があります。防災カードゲーム「クロスロード」や、災害図上訓練「DIG」、豪雨災害からの避難行動を考える「EVAG」などがその一例です。タグクラウドから「教材」を選択したり、検索ウィンドウで「教材」や「プリント1枚」を検索してみてください。それぞれ関連した記事を掲載しています。
防災教材を、正しく使いこなす
こうした【教材型】講習を引き受ける時、常に自戒の意味も込めて考えていることがあります。それぞれの教材は(僕の手作り感満載な教材は除いて…)ほとんど完璧なまでに洗練され、研究されたものです。従って、誰が扱ってもある程度の学習効果は得られます。補助輪付きの自転車に乗れば、自転車に乗ったことがなくても、小さな子供でも、楽しく自転車で走り回れるのと同じようなものです。
ただし、扱う側の講師には訓練と学習、実践という名の修練の積み重ねが必要です。それが分かってない講師は一緒に「補助輪付き自転車」で走り回って終わりです。よく講習で「時間が足りない」とか「指導員が少ない」「参加者が多すぎる」などと言っている講師の話も聞きますが、それはその講師が補助輪付き自転車にしか乗れず教材として扱いきれていない証拠です。手段だけ知っていて目的が分かってない、とも言えます。
本当に教材を熟知していれば、時間や人数といった外的環境は関係ありません。これまで実施した講習の評価シート集計結果から、短時間でも、何百人でも、教材型講習の「目的」を達成する方法はいくらでもあることが分かりました。
軸を明確にしながら使う
伝えるべきこと、大切なこと(=教材の目的)は明確であり、それは「重心・軸」とも表現できます。重心や軸がはっきりしていれば、自転車はもちろん玉も乗りこなすことができます。はっきりしなければ、ふらふらして自信が持てません。先の時間がないとか積極性がないとか、外的環境への不満は、自信が持てないのでうまくいかなかったときの言い訳を探しているようなものです。
僕はこうした代表的な教材を使って講習をする時、自分は玉に乗りながら、参加者には補助輪付きの自転車を渡し、一緒に走り回れる自信を与えられる道化師-クラウン-であれ、ということを常に意識します。道化師は、観客からはふざけて見えても、その本質は極めて洗練されたプロフェッショナルです。
“補助輪”と”玉”の使い分けができる道化師=防災教材を使える講師
サーカスのクラウン(道化師)は、観客・主人の空気や感情を読み取り、「笑わせる」ために様々な技術を駆使します。バカにされたり、蔑まされたりすることもいとわず、ただ相手のために、目的のために全力を尽くします。
防災講座の講師もまた、受講生や児童生徒、学生の空気を感じ取り、全力を尽くさねばなりません。防災講座講師の「失敗」は、受講生や児童生徒、学生の「命のリスクを高める」のです。失敗はおろか、言い訳探しなどもっての他です。言い訳探すくらいなら受けるな。受けるならどんな環境でもベストを尽くせ。
それが、命に関わる講習を担う者が負うべき責任というものです。命の責任を自覚しながらも、相手にそれを押しつけずユーモアを持って接する。
防災講座の講師は、誇り高き道化師-クラウン-であれ。
僕の哲学のひとつです。

在学中からの被災地支援経験を基に、災害救援・防災教育分野での普及啓発を中心に活動。ブログでは実践に基づく情報をお届けします。2男児の父。内容は全て個人の責任に基づくものです。お問い合わせは こちら から