“防災意識とは何か”から考える、防災教育と災害ボランティア育成に取り組む理由

学生さんからの依頼で、卒業研究論文に際してのインタビュー調査に対応させていただきました。回答しながら、改めて考えたことや、きちんと言語化して整理したほうが良いと感じたこともあり、本稿でまとめることにしました。活動実践記録が中心の他記事とは異なり、備忘録的な内容になりますが、関心がありましたらお付き合いください。

目次

防災教育や災害ボランティア育成に際して大切にしていることは

「目的」と「手段」を意識することです。

以下の記事 でも紹介していますが、防災教育にしても災害ボランティア育成にしても「何のために」学んだり訓練を行うのかという目的を意識することが重要だと考えています。そのうえで「どのように」目的を実現するのかという手段があります。なので、筆者が何か教育訓練を行う際には、その点を意識して切り分けるようにしています。

家具転倒防止や備蓄など「何をすればいいか=手段」は知っていても「なぜそれが自分や家族に必要なのか=目的」を知らないと”自分のこと”として受け止めるのが難しいですね。

被災経験がない人たちは、防災に対してどんなイメージを持っていると思うか

実際に統計調査やヒアリングをして回ったわけではないので、あくまで経験則からの私見です。

「必要なのは分かっているけれど、今すぐやらなくてもいい(から特に何もしていない)こと」または「必要と思っていろいろやってはいるけれど、それで正しいのか(十分なのか)は不安があること」ではないでしょうか。

この点は前述した「手段と目的の整理」と、後ほど述べる「防災意識」にも関係してきますので、その点でも少し触れますが、多くの人は防災について関心もあるしいろいろ知ってはいるけれど、行動が伴うかどうかは別である、というのが筆者の意見です。

この質問は「防災に対するイメージ」と方向づけされていますので、街行く人をつかまえて「防災に対してどんなイメージを持っていますか」と聞いたら、上記のような答えが返ってくるんじゃないかなと思います。

何も防災対策をしていない人は「する必要がない」、「自分には無関係だ」と思っているから何もしてないのでしょうか。僕はそうではなく、考え方や行動の”優先順位が違う”だけだと考えています。

東日本大震災を経験していない世代(子どもたち)に、伝えたいことは何か

「その地域に根ざした、命と暮らしを守るための具体的な教訓と備え」です。

東日本大震災そのものを伝承していくことは重要ですし、筆者自身も伝承活動は積極的に支援しています。ただ、それは社会的活動として、もっと言えば日本の文化として根ざすべきものと思うので、子どもたちに伝えたいこととは異なります。

東日本大震災に限らず、あらゆる地域の災害を想定します。例えば筆者が小学校等で、45分くらいで1回だけ防災教育に協力してください、と言われたら上記の内容を意識します。

防災にとって具体的な備え(手段)は重要です。ただ、それをきちんと伝えるためには「なぜ・どうして・あなたが」も意識する必要があります。その地域の被災経験・教訓はきっかけとして有効です。

防災意識とは何か、高めるためにはどうしていけばいいか

「自分が守るべきものが何かと、何をすべきかが、自覚できている」のが、防災意識だと思います。

これだけだと分かりにくいので、段階を追って説明します。

家具転倒防止をしているAさんと、していないBさんを例に考える

例えばここにAさん、Bさんの2人がいたとします。

Aさんは家具転倒防止をしています。Aさんに防災意識があるかないか、を街行く人に聞いたら防災意識がある(高い)、と多くの人が答えるでしょう。Aさんに「なぜ家具転倒防止対策をしたのか」と聞いたら「自分や家族がケガをしないように」といった答えが想定されます。それは「自分や家族が大切であり、地震から守るためには家具転倒防止が必要だから」と考えているからです。

Bさんは家具の転倒防止をしていません。Bさんに防災意識があるかないか、を街行く人に聞いたら防災意識がない(低い)と答える人が多いでしょう。Bさんに「なぜ家具転倒防止対策をしないのか」と聞いたら「面倒だから」、「倒れるような家具がない」などいろいろな回答が想定されます。

総じて言えるとすれば「必要性や方法は知識として理解しているが、行動はしていない」ということです(「転倒防止ってなんですか?」などの回答の可能性はいったん、置いておきます)。

続いてBさんに「対策をしなければ、地震でご自身や家族がケガをするかもしれません。それでも構いませんか」と聞いたとします。「そういうわけじゃないけど…」、あるいは「そんなわけないでしょう!何を聞いてるんですか」と怒られてしまうかもしれません。

関連サイト:防災に関する世論調査(令和4年9月調査)|内閣府大臣官房政府広報室

Bさんに防災意識はある?それともない?

筆者は周りの人がどう考えようとBさんにも「防災意識がある(高くはないけれど)」と考えます。筆者の定義に準じて、自分も家族も大事だと思っているし、何をすべきかも分かっているからです。ただ、何か理由があって「防災に関する行動」をとっていないだけです。

「いや、何も行動しないなら防災意識はないじゃないか」と言われそうですが、意識という漠然としたものを行動のYESかNOかだけでは判断できないのでは、というのが筆者の意見です。「防災についての意識(関心、知識を含む)はある」と「防災行動をしていない」は両立するのではないかと思うのです。

様々な家庭環境や暮らしの状況も影響します。経済的、環境的、身体的・精神的な要因で対策の必要性が分かっていても十分にはできない、という方もいます。

人生や生活の”枠”は限られています。枠の中に何を持ってくるかは人それぞれです。防災がその枠に入らない、入れられない方=意識が低い人、としてしまっては、溝が埋まらないように思うのです。

では「防災意識がない」人って、どんな人?

「自分が守るべきものも、何をすべきかも、(今は)自覚できていない」人です。

災害だけでなく、事故でも事件でも「失くしてから大切なものに気付く」という後悔をしなくても良いようにしてください、という啓発の意味も込めての定義です。

例えば、0歳の赤ちゃんに防災意識があるか、と聞かれたらないと答えます。防災のことを全く教えてもらっていない子どもも同様です。自ら命を絶ちたいと思っている方に防災意識があるか、と聞かれたら、ないと答えます。

ですが、それが悪いわけではありません。その段階ではないか、あるいは防災より先に意識しなければならないことがあるのなら、人生・生活という枠の中でそのことを優先してほしい、というだけです。

そして「防災意識がある」方々には、そうした方々がいることも頭の片隅に置いていただいて、備えをしたり、災害ボランティアに関わっていただきたいと思います。

防災意識を高めるとは?どのようにすればいいか

「意識を高める」とはどういうことで、高まっているという状況を何をもって判断するのか、難しい問題だと思います。答えは分かりませんが、どのようにしているか、と言えば以下のようになります。

「自分にとっての”たからもの”が何かに気付き、災害から守るために、あなたにできる行動をしてください。」と多くの人に伝え続けることです。

まとめ ~なぜ防災教育や災害ボランティア育成を続けているのか~

「社会の中で、自分が果たすべき役割があると感じているから」です。20年以上、防災教育や災害ボランティア育成に携わる中で、当時も今もまだまだ、やるべきこと・やりたいことがあります。それはつまり、社会の中で何がしかの役割が与えられているのだろう、と感じています。

学生さんによると、筆者へのインタビューは最後で他にも数人の方にインタビューしたそうですが、皆さん同じようなことを回答されて驚いたそうです。被災当事者の方、支援活動に取り組んでいる方、きっと様々な方々であろうと推察しますが、防災に取り組む想いは皆同じであるのだなと感じました。

防災教育も災害ボランティア育成も、防災意識についての考え方もひとそれぞれであろうと思います。ただ、こういう考え方をもって活動している人もいる、ということが伝われば幸いです。

長文最後までご覧いただきありがとうございました。

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