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看護学校で学生主体の医療救護所開設・運営訓練、地域住民も参加

埼玉県内の看護学校で、地域と連携した医療救護所開設・運営訓練が行われました。同校の授業「災害看護」で筆者も定期的にゲスト講師としてお話ししているご縁もあり、本訓練もアドバイザーとしてお手伝いさせていただきました。本稿では同訓練の内容や、それぞれのポイント等を中心にご紹介します。

目次

なぜ看護学校で住民参加型の医療救護所訓練が行われるのか

今回訓練を実施した看護学校は、市との協定で医療救護所として位置づけられています。また学校として地域連携にも力を入れており、住民の皆さんとの関係ができています。こうしたことが、訓練の背景となっています。

医療救護所について、簡単にご紹介しておきます。東京都では以下のように示されています。

通常の医療体制では対応できない場合、区市町村は、各地域防災計画等に基づいて医療救護所を設置します。医療救護所は、主に災害拠点病院等の近接地等に設置される緊急医療救護所と、避難所に設置される避難所医療救護所に分類されます。

https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/bousai/1000027/1000344.html

大規模災害発生時に、傷病者等が多数発生した場合、通常の医療機関だけでは対応が困難になる可能性があります。軽症者も重症者もその家族も、関係なく病院に集まってしまったら、優先的に処置が必要な重症者への対応が遅れてしまいます。

そこで市区町村は医療を逼迫するような災害が発生した場合は、病院敷地内・避難所内・後述する関連施設(看護学校等)を医療救護所としてまず傷病者を受け入れ、そこから重症者を病院・災害拠点病院等へ移送する、という仕組みを整えています。

訓練の様子とポイント

訓練全体の流れについて、ポイントを押さえつつご紹介します。

事前準備(シナリオ・レイアウト作成)

訓練では、ご協力いただく近隣住民の方々に「登場人物」になっていただくため、様々な個別シナリオが設定されました。学生さんが考えた人物像(ケガをしている、赤ちゃんと避難している等)がカードに記載されており、住民の方はそのカードの人物になって行動します。

また、学校内のスペースをどのように使うかのレイアウトも事前に作成し、写真のような形で掲示されています。

せっかくレイアウトが掲示されていたのですが、住民の方が見る機会がほとんどありませんでした。学生さんが的確に誘導してくれるのですが、レイアウトがあること、避難者ご自身がどこにいて、どこに何があるのかを伝えられると良いかなと思いました。

避難者の受付

はじめに地域住民の方(避難者)の受付が行われました。それぞれの事情に応じて、学生スタッフが事前に設定したレイアウトに基づいて誘導しました。

広いスペースでの一般・要配慮者・高齢者の受け入れ

こちらの写真は、校内で一番広いスペースでの受け入れ訓練のようすです。学生と避難者の方が力を合わせてマットを設置しています。向かって左手側に一般の方、中央に要配慮者、右側に高齢の方と、それぞれ区分けがされています。

その後、ダンボールベッドやパーティションも設営されました。これらの備品は「避難所」のための備品ではありますが、この看護学校は小学校と隣接しており、状況によってはこうした備品も共有される可能性があります。地域の皆さんと共に看護学生が使用方法を習熟しておくと、いざという時の対応がスムーズに行えます。

保健衛生(傷病者、乳幼児、仮設トイレやおう吐など)に関する対応

看護学校ならではの対応として、傷病者(骨折)への応急処置や乳幼児への対応なども行われました。特にリアルだったのがおう吐への対応です。おむつに入っているような吸水ポリマーかと思いますが、それを吐しゃ物に見立てて処理をする、という訓練です。

医療救護所では、必然的に体調不良の方や、感染症対策により慎重な対応が必要とされる方が多く集まります。そうした場所での適切な保健衛生管理のための訓練はとても重要だと感じました。

現状報告と、地域の方々との意見交換

訓練後半、ホワイトボードに医療救護所の状況がまとめられました。受入人数や性別・年齢などの基本情報から、傷病者の状況、市区町村災害対策本部への連絡事項などが記載されています。

後述しますが、自治体や保健医療関連団体等とスムーズに連携していくためには、正確な情報の収集・記録・伝達が不可欠です。医療のリソースは限られていますので「けが人がいっぱい」とか「病気の人が多い」といった情報だけでは、適切な支援に結び付けられません。

医療救護所、看護師が孤立しないためにも、現状を整理し報告する訓練として重要です。

最後に参加された地域の方々と看護学生による意見交換が行われました。日頃の備えや、訓練の感想などいろいろなお話が各グループで行われていました。こうした地域の方々とのコミュニケーションの積み重ねが、いざというときの信頼関係にもつながってくるのではないかと思います。

まとめ 「災害看護」で大切なことは

訓練のまとめで講評させていただきましたので、特に看護学生の皆さんに向けたお話を少し整理してご紹介し、本稿のまとめとします。

傷病者への応急処置や、高齢者・乳幼児への対応、吐しゃ物の処理など医療救護所で必要とされる様々な活動に対する皆さんの判断や技術は素晴らしかったです。落ち着いて、正確に対応されていました。いざというときには、自信をもって率先して対応してください。

それと同時に、応急的な医療救護所としての役割、看護師・看護学生としての役割を常に意識してください。ここは応急的な”通過点”です。骨折した人の処置をしたら、次はどこへ行けばいいでしょうか。高齢者や乳幼児に必要なものはどうすれば手に入るでしょうか。おう吐された方には、どんな経過が想定され、どう対応していけば良いでしょうか。

いずれも看護師だけ、医療救護所だけでは完結しません。一人で悩み、抱え込んでしまうことがないように、災害看護において看護師は誰とつながり、どこと連携し、何を手に入れるべきなのか、今回の経験を踏まえてこれから学んでいってください。

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