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【教材】災害情報とコミュニケーション演習-DICE(ダイス)-

無線機やトランシーバーで効果的な訓練ができます

2014年公開の記事を編集して再公開しました。教材セットもダウンロードできます。

本教材について

災害時にまず私たちが触れるのはさまざまな「情報」です。その情報をどのように収集・伝達し、自分以外の誰かとコミュニケーションをとるか、ということは災害対応そのものと言っても過言ではありません。本講では、筆者が被災地支援活動での経験を基に作成したカードゲーム型式で災害情報とコミュニケーションについて学ぶことができる『Disaster Information & Communication Exercise : DICE/ダイス)』についてご紹介します。

「DICE」とその特徴について

DICE(ダイス)は「無線機の操作方法を楽しく、分かりやすく、実戦的に習得する」ことを目的に考えられたゲームをベースに生まれた演習です。ゲーム性を維持しながら、消防分野における災害情報の扱い方による指導プログラム、災害救援ボランティア活動の経験から、災害情報を扱う担当者に求められるコンピテンシー(評価可能な行動特性、指導用スライドP.5)などを取り入れています。

DICEでは、このコンピテンシーを意識することで解決につながるような課題が生まれるよう構成されています。参加者は自身が災害情報を扱う際に求められる能力を、DICEを通じて段階的に習得することができるようになっています。

また、無線機、携帯電話、付せん、口頭といった情報伝達手段と、情報を記載するメモ用紙さえあれば、どのような環境でも実施が可能な汎用性の高さから、様々な教育訓練と併用することができる点も大きな特徴です(防災イベントや訓練でも)。

さらに、DICEでは扱う情報がどのような内容であっても指導内容が変わらないため子どもから学生、社会人、ハンディキャップを持った方など、あらゆる条件で災害情報に接する方が、それぞれの条件に併せて実施することが可能です。

本資料ではその基本コンセプトを紹介します。皆さんの災害対応力向上の一助となれば幸いです。

2014年4月改訂

教材セットのダウンロード

下記をクリックすると、教材セットをZIPフォルダ(圧縮フォルダ)でダウンロードできます(約5.3MB)。ダウンロードが完了したら、解凍してご利用ください。

 【注意事項】本記事で紹介する教材の権利は筆者にあります。講座・研修等で自由に使っていただいても構いませんが、出典の明記をお願いいたします。また、有料販売等での利用は一切認めておりません。

教材を使った指導の流れ

教材を使った指導の流れは次のとおりです。なお、指導用スライドの最新版(2020)は slideshare で閲覧・ダウンロードができます。


事前指導の内容

(1) 災害情報と危機対応を知る

▼災害情報の重要性
危機(災害時等)的な状況で活動するためには、災害情報が不可欠です。次々と変化する状況に迅速に対応するためには、迅速な意思決定が必要です。災害情報が不足・不正確であるうちは、迅速・的確な意思決定を行うことが難しくなります。

キャプチャ
図 – 1

▼日常的な意思決定プロセスとの違い
日常の意思決定プロセスでは、報告された情報を基に状況を見極め、情報を入手できた順に意思決定することが一般的です。従って優先順位が違っても、大きな間違いにはならず、修正することも容易です。しかし、危機的な状況では様々な情報が順序を問わず集まるため、重要な情報の報告が遅れたり、情報を見逃したりする危険があります。加えて、危機対応の意思決定はひとつひとつが重要な意味を持つため、優先順位を間違うと大きな影響が生じます。取り返しのつかない状況に陥る危険があります。

▼状況を安定させ、影響を小さくする情報を整理する
人命に関わる情報、混乱や動揺を防ぐ情報など、危機によって生まれる状況(被害)をなるべく小さく抑えられる情報を優先的に扱います。日頃からどのような情報がいつ必要なのか、予め整理しておくことが必要です。

(2) 情報の区分と流れを見極める

▼情報の種類を見極めよう
日本語では一言で「情報」といっても、情報にはいくつかの種類、区分と流れがあります。

1.Data(データ=現場に無数にあふれる雑多な情報のこと)
現場で最初に飛び交う、様々な情報です。不正確・不確実なうわさ、デマなども含む。

2.Information(インフォメーション=Dataの集合からある程度整理された情報のこと)
データの集合から、ある程度整理された情報です。ある程度信頼のおける情報になっています。但し、災害対応に必要な情報と不必要な情報が混ざっています。

3.Intelligence(インテリジェンス=Informationからさらに分析された情報のこと)
インフォメーションを分析、比較、推論し認められた情報です。災害対策本部等、意志決定を行う場合に必要となる情報です。

さて、災害対応における意志決定で必要な「情報」はどれでしょうか。その情報を得るためには、どのような過程が必要でしょうか。事前に考え、訓練をしておくことが、適切な情報収集につながります。

(3) 情報を整理する”3つの箱”を用意する
情報には区分と流れがある、ということを前項で説明しましたが、それぞれの区分において、どのように情報を扱うかについてご説明します。まず、情報を整理するには、”3つの箱”を用意しましょう。

★事実の箱まず、事実の箱です。自分の目で確認したことや、根拠が明確なもの、必然性があることなどをこの箱の中に入れておきます。

★伝聞の箱次に伝聞の箱です。誰かから聞いたこと、言っていることなどはこの箱の中に入れておきます。(例:~らしい、~だって、~するそうだ、~と言っていた 等)

★意見の箱最後に意見の箱です。誰かの意見や考え、主張などをこの箱の中に入れておきます。(例:~しなければならない、~のはずだ、~だと思う)

3つの箱で整理したら特に「事実」の箱に注目しましょう。災害時には情報が極端に少なくなるか、あるいは多くなる場合があります。その中には伝聞や意見も多く含まれています。伝聞や意見は事実とは限りません(もちろん、事実であること、事実に近いこともあります)。まずは「何が事実で、何が事実ではないのか」を整理することが、災害情報収集と伝達の基本です。

★★★練習問題★★★
 友人の車で海に遊びに来ていたとき、30秒くらい大きな揺れを感じた。ライフセーバーが「車は使わず、すぐに走って高台に避難してください!」と言っている。友人は「このくらいなら津波は来ないはずだ」と言っている。既に一部の人は車で避難をはじめ、目の前の道路には渋滞が起き始めていた。

Q1.この文章を「事実」「伝聞」「意見」の3つの箱で整理してください。
Q2.あなたが取るべき行動の参考にすべき情報を、箇条書きで書き出してください。

演習・ゲームの内容

(1) 使用する教材

 下記からダウンロードしてください。

(2) 実施のルール

  • 情報の収集、伝達は無線機(携帯電話等でも)を使用します。情報のペアを作る時は「情報カード」を実際に移動させます。
  • 「情報カード」の移動はチームの誰かが1枚ずつ持っていきます。1人で2枚以上のカードを持つことはできません。
  • 一部のチームと直接連絡がとれない場合があります。本部、各チームは無線の内容を正しく把握して、必要な情報を他のチームに伝えてください。
  • 一人の人だけが無線を使うのではなく、全員で交代しながら使ってください。複数で記録をとらないと情報の記録が間に合いません。どうすれば効率的に対応できるか、各グループで相談してださい。
  • 無線機の操作、話し方は演習中に自然と身につけることができますので、操作経験や話し方の上手下手はあまり気にせず、まずは演習を体験してください。
キャプチャ
図 – 2

(3) 演習・ゲームの概要

本部・ABCにわかれ、カードを配布したのち、無線機等を使ってカードの「神経衰弱」を行います。

カードを作る、印刷するのが面倒であれば、トランプを使っても構いません。大切なのは「災害時の情報収集と伝達には、冷静な情報の整理と分析、適切な伝達(=コミュニケーション)が必要になる」ということを理解してもらうことです。詳しくは、指導用スライドをご参照ください。

事後指導用の資料

(1) リーダーシップとミス・コミュニケーション

▼本部機能とリーダーシップ
 ● 一般知識、専門知識が必要性
 ● 即決・即断と的確な分析
 ● 「本部」「リーダー」としての役割をはっきりさせる 

▼ミスコミュニケーションを防ぐ
 ● パーセプション(認識・理解)、思い込みや先入観が原因となる
 ● 一方通行ではなくキャッチボールをする
 ● 復唱する、相手を明確に
 ● 内容はカンケツ、メイリョウに

(2) 災害対応・防災活動に求められる人材像

阪神淡路大震災の対応経験者が感じた理想の人材像はヒアリング調査が行われています。前半5つ(ア~オ)は個人の仕事(活動)に対する取り組み方に関するもの。後半6つはリーダーとしての資質に関するもの。

(ア)体力的・精神的に強靱である人
(イ)個人的事情よりも仕事を優先できる人
(ウ)その場で自分に何ができるかを考える人
(エ)全体像を把握した上で仕事ができる人
(オ)自分の判断で迅速に事態に対応できる人
(カ)声の大きい人
(キ)誰とでも対等に渡り合える人
(ク)コミュニケーション能力が高い人
(ケ)周りの人の動きがちゃんと理解できる、読める人
(コ)調和が取れている人
(サ)いろいろなタレントを組み合わせてうまく使える人

 林春男『防災を担う人材育成』より抜粋

(3) 指導上のポイント
▼本部の役割は「被害の全体像」をいち早く掴むことである。本部が、十分な情報を集めないまま、場当たり的に決断を下すと本来必要とされる場所に必要な資源が届かない(以下「ミスマッチ」)が起きる。

▼被害の大きさに比例して、情報が入りづらくなる。被害が大きければ大きいほど、情報を発信する環境が整うのが遅くくなるか、断絶する。被害が小さければ小さいほど、人が集まり、環境も整うため活発に情報が発信される。

▼「情報の鮮度」を意識する。ある時点では「正しい」情報もある時点から「正しくない」情報に変わることがある。但し、スピードだけで決断するとミスマッチが起きる。また、ミスマッチを恐れて情報の分析・収集に時間をかけすぎると、情報の鮮度が落ち活用できなくなる。「何を優先すべきか」を考え、情報処理を行う。

▼「3つの箱(前述)」を意識する。本部は、はっきりしない情報や、又聞き(伝聞)だけで決断を下してはいけない。本部が決定するときは、確かな情報に基づいているか、判明している事実から確実性が高いと判断できる情報を根拠とした意志決定を行う。

▼「情報トリアージ」を意識する。正確な情報、必要な情報、緊急性の高い情報を積極的に選別し、活用する。

▼本部がリーダーシップを発揮する。本部が必要とする情報以外の送受信を待たせることも必要である。

▼全員がお互いの状況を考え、意識的に「情報のキャッチボール」を行う。一方的な送受信では、マッチングが遅れる。自分たちは伝えたつもりでも、相手に正しく意味が通じていない場合もある。分かりやすく、簡潔明瞭に情報を伝える。

▼情報カードに全ての情報が記載されている訳ではない点に注意する。足りない情報があれば、他の被災地の状況などから推察する(但し、推察した情報と、事実とを混同しないよう注意する)。

▼本部以外のグループも「本部に協力する」姿勢を持つ。本部が機能しなくなれば、各グループの情報収集と伝達にも影響が出るためである。

▼二重マッチングや、マッチング忘れを防ぐため、情報カードのやりとりは常に記録しておくこと。

まとめ

DICEは、災害時に起こりえる情報処理のミスを、なるべく少なくすることができるようプログラムした教材です。最初は難しいかもしれませんが、ある程度訓練を重ねると、情報の取り扱い(無線機を使っている場合は無線機の取り扱い)に慣れることができます。様々な地域、学校等で、防災訓練の教材としてご利用いただければ幸いです。DICEを用いた教育訓練等についてのご依頼もお引き受けしております。お気軽にご相談ください。

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