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社会福祉協議会でオンラインBCP研修を実施:教材ダウンロードあり

都内社会福祉協議会(以下「社協」)さんで、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)をテーマとした研修が開催されました。社協事務局内等で業務を行うことが多い嘱託職員・正規職員の方々約100名が参加するZoomによるオンライン形式です。同研修で講義とワークショップを担当しましたので、本稿では研修の流れやワークショップのポイントを紹介します。

ワークショップで使用したワークシートはどなたでもダウンロードして使用できるようにしました。本文中でも紹介していますが、社協だけでなく学校・家庭・地域・企業など、あらゆる場面でご活用いただけますので、お気軽にご利用ください。

 

研修の趣旨・背景

市区町村社協の多くは市区町村役所と協定を結び、大規模災害発生時には災害ボランティア活動の拠点となる災害ボランティアセンターを開設することになっています。災害ボランティアセンター(以下「災害VC」)については、下記の記事をご覧ください。

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こうした取り組みは災害ボランティアに参加する方が増えたことにより、多くの人に認知されつつある一方で、社協職員の方々の多くは福祉や介護、生活支援などの専門家ではあっても必ずしも「災害支援・防災対策の専門家」というわけではありません。

社協は市区町村ごとにあり、地域福祉活動の中心となっています。一方で名前は同じ「○○市(区町村)社会福祉協議会」でも福祉施設や学童などの事業を受託している社協もあれば、そうでないところもあるなど、事業内容や規模は異なります。つまり各社協の事業内容に応じた個別の対策が求められるのです。

「なぜ社協が災害支援や災害対策に取り組むのか」ということの大切さ、経緯や仕組みをしっかりと職員に共有してもらいたい。担当部署だけでなく、同じ社協内の全部署で対策について考え、取り組んで欲しい。そんな担当者の方の想いが、本研修の背景にあります。

研修の流れと内容

今回の研修は1回1時間程度で、2回に分けてZoomを用いたオンライン形式で行われました。全部署の方々が参加するためには、できる限り本来業務に影響を与えないようにしなければならないため、1時間程度が限界かと思います。

1回目は講義で概要について理解していただき、ワークショップの課題について説明しました。2回目までの約2週間で、ワークシートを各部署でまとめてもらい、2回目にその内容をプレゼンテーションしていただき、筆者がコメントや講評するという流れです。

それぞれの内容について紹介します。

1日目 講義で社協と災害の関わりを学ぶ

1日目は講義で、社協と災害との関わり全般についてお話しました。災害ボランティアの必要性、社協と災害VC、時系列での活動の変化、復興支援における社協の役割、教育訓練についての5つを軸にしています。

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災害ボランティアの必要性と役割では、発災から72時間、72時間~1,000時間、1,000時間以降の3つで時系列を区分けして、それぞれの時間帯でどのような災害ボランティア活動が求められるかについて説明しました。

この点は地域の災害ボランティア講座等でもよくご質問・ご意見があるからです。

前述の別記事でも紹介しているように「災害ボランティア」として活動する場合は災害VCで登録して、というのが基本的な流れになります。こうした説明をすると「目前で困っている人がいるのに、わざわざ社協まで行って登録しなければいけないのか。社協が災害VCを立ち上げるまで待っていられない。」というご指摘をいただくことがあります。この点をまず、整理します。

自助・共助と災害VCが想定する「災害ボランティア」の違い

発災から72時間程度は、社協だけでなく消防・警察・病院などの公的な助けが得にくい「自助~共助」の時間帯であり、ご指摘のとおり隣近所の助け合いが重要になります。

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災害VCの大きな役割のひとつは「たくさんのニーズ(困りごと)」と「たくさんの災害ボランティア」を調整することで、被災された方の生活を支援していくことです。

発災直後、目前で助けを求めている人がいて、身近な人が助けるとしたら、そこに「調整」の必要性はありません。ひとりひとりが自主性に基づいて安全に配慮しながら行動する、という点で災害ボランティアと言えますが、災害VCが想定している「災害ボランティア」は少し時期が異なるのです。

災害VCでは、主に発災直後ではなく対応に数日~数ヶ月を必要とするような、長期的かつ多くの人の力が必要となるタイミングでの災害ボランティア活動を想定しています。被災された方々の生活面での課題や、災害ゴミの片付けなどがイメージしやすいかと思います。

こうした活動が災害時にいかに重要であるかは言うまでもありません。2013年の災害対策基本法の改正に伴い、地方自治体もボランティアと積極的に連携すべきとの考え方が示されています。

行政支援だけでは行き届かない支援を被災された方に届けるために、災害ボランティアは各場面で重要な役割を担っています。

国・都道府県・市区町村・社協の役割

次に、国や地方自治体、社協の役割の違いです。こちらは筆者が地域で活動している杉並区を例に説明します。文字が小さくて読みにくい場合はクリックすると拡大します。

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前項のとおり、国の災害対策基本法に示された内容と、都道府県、市区町村の地域防災計画、計画に基づく協定と社協のマニュアルという流れが一般的です。スライドは広域支援の重要性を強調していますが、まず求められるのは各社協の対策や、初動対応です。

社協と災害VCの時系列による活動の変化

市区町村との協定に基づく災害VCの開設・運営と、研修の趣旨ともなっているBCPとはどのように関わるのかについてもスライドにまとめました。

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簡単に整理すると、発災直後からしばらくはBCPに基づいて社協法人として職員の安否や福祉サービス利用者の安否確認、サービス継続のための対応などを行います。その後、市区町村からの要請や各社協の判断で、職員の割り振りを行って災害VCを開設・運営する、という流れになります。

1日目~2日目の間 各部署でワークショップを実施

1日目終了時に、2日目までに行ってもらいたいワークショップの内容について説明しました。ワークショップは、以下のワークシートに基づいて「災害時の不安・課題と解決策や予防策について話し合い、2021年度中に各部署で行う防災アクションと、その評価方法についてまとめる」という内容です。

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画像のワークシートを配布し、各部署でディスカッションしてまとめていただきました。2日目は、各部署や担当する事業ごとにシートを使ってプレゼンテーションしてもらいます。

2日目 各部署・担当事業ごとにプレゼンテーション

2日目は、ワークショップで作成したパワーポイントをZoomで画面共有しながらプレゼンテーションしていただきました。他の部署の課題や対応について共有することも貴重な機会となったのではないかと思います。筆者からは、それぞれの対応についてコメントをさせていただきました。

訪問介護の車両に防災グッズを用意しておく、安否確認がスムーズにできるように名簿や訓練を見直すなど、具体的なアクションが提案されました。なお、2021年度末には改めて研修を行い、実際にアクションに取り組めたのかどうかを発表していただくという予定になっています。

結果については当該社協さんの許可を得て、差し支えのない範囲でご紹介させていただきます。

教材・ワークシートのダウンロード

本研修で用いたワークシートは下記をクリックしてダウンロードしてください。筆者が作成したオリジナルとなりますので、使用許諾や改変時の連絡などは不要です。PowerPointファイルを自由に編集してご利用ください。

 

研修後の感想(抜粋)

研修実施後、それぞれの部署や係で防災アクションについて検討されている中での感想をいただきました。許可を得てご紹介します。

  • 各係の通常業務の延長上で、災害対策上の気付きも異なることがわかった。これまでと違った側面から対策を見直すための、良い学びとなった。
  • 対策の成果をどのように確認するのかというところまで踏み込み検討していきたい。
  • 研修を通して係で話し合いの機会をもったことは非常に有意義で、係として取り組むことが明確になった
  • 各係、共通の課題も見られたため、係を超えた防災委員会を立ち上げ、新たな防災アクションづくりをしていきたい。
  • 発災時の不安を共有したことで、課題の棚卸しができたと同時に、職員間の経験・知識の差異を埋め合わせる機会にもなった。

まとめ~事前の備えで負担の軽減を~

社協におけるBCPそして災害VC開設・運営で重要なのは「いかに職員の方々の負担を小さくするか」だと思っています。全国の社協職員の方々、NPO・NGOなど支援団体の方々、筆者を含む個人で平時から活動している災害ボランティアなど、多くの人がいざというときには社協・災害VCのサポートに入ります。

ただ、それらはあくまで「災害ボランティア」に関することが多く、社協本来の事業の運営までサポートすることは困難です。社協・法人本体としてなんとしても継続しなければならない事業はなにか、そのためにどのような対策や人員が必要なのか。

そうした対策を考え、実行していくことが、災害時の負担軽減につながるのではと思います。ご要望があればより詳細な資料等はご提供しますので こちら からお気軽にお問い合わせください。

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