小学校4-6年生を対象とした防災教育で、ワークシートとオンライン防災クイズを併用して学校での学びから、家庭学習につなぐ総合的なプログラムを実施しました。
また、参加した児童全員を対象に「学習振り返りシート」を配布して記入してもらい、その集計結果をまとめて、講演会やクイズ、学校で実施された防災倉庫見学などの防災学習も含めた学習成果を確認しました。
本稿では防災教育の流れや使用教材、振り返りシート等についてご紹介します。使用したワークシートや振り返りシートのテンプレートもダウンロードできますので、皆さまの実践の参考資料としてお役立てください。
防災教育実践の流れ
今回の防災教育実践の流れを準備、実践、継続の順に整理しました。
事前準備
まずコロナ禍での開催ということで、実施の方法がオンラインか、対面かについて学校側と調整しました。
当初はオンライン併用、筆者は学校で、児童生徒は各教室から参加するという方式で調整していましたが、最終的には体育館で間隔を空けて着座のうえ全体で、となりました。
教室分散型は技術的なトラブルの可能性もあり、人数的に体育館でカバーできるのであれば、進行としては安定しますし、教える側としても顔が見えてスムーズかと思います。
使用する教材や資料はもともと、児童生徒の手元と画面で使えるものを用意していましたので、直前の変更にも対応できました。
実践
実践に際して、児童生徒の手元には2つのワークシートを配布しましたのでご紹介します。表面が下記のワークシートで、裏面は後述するオンライン防災クイズの回答シートになります。
オンライン防災クイズの回答シートについては著作権の都合上で公開できませんが、いわゆる「スタンプラリーシート」のようなものをイメージしたいただければと思います。利用したい方は お問い合わせフォーム よりお知らせください。
児童生徒が体育館に集合、着座したら冒頭は講義です。
映像や写真も交えながら、地震・風水害・避難所の備えについてお話しました。ワークシートにあるように、できるだけ児童生徒自身に考えてもらいつつ、大事なポイントを伝えていくという内容にしました。講義スライドの一部をご紹介します。
「自分のたからもの」について考えてもらうワークからのつながりで、防災について学ぶときに重要な「動機」に意識を向けてもらうようにしています。
地震や風水害から命を守る方法、避難所で生活を守るための方法を学んだり、訓練したりする必要性について伝える部分です。かんたんな手遊びなどを通じて体験的に理解してもらったあとにお話します。
地震災害のときに気をつけたい、5つの危険についての紹介です。実際に児童生徒に質問して、答えてもらいながら進めました。
ワークシートを用いながらの講義を終えたのち、最後にオンライン防災クイズを使って基本的な部分を確認しました。オンライン防災クイズについては下記の記事をご覧ください。
継続
今回の防災教育で使用したワークシート及び防災クイズ回答シートは、コロナ禍で広がった「家庭学習」にも対応しています。防災クイズで体験できる内容はごくわずか(5問)ですが、残りの45問は家庭でスマートフォンやタブレットを使い、ご家族と一緒に楽しみながら学べるようになっています。
筆者のように外部講師による防災教育は年に1回ということも多く、伝えられることは限られています。かといって、分厚いテキストやたくさんの資料では、なかなか学ぶきっかけも作りにくいものです。
GIGAスクール構想などで広がりつつある児童生徒のタブレット端末や保護者のスマートフォン・パソコンが教材となり、防災学習が継続的に行えるよう、ワークシートには防災クイズの続きを楽しめる工夫(QRコードでクイズページを読み込み「あいことば」で続きからできる)をしています。
教材及び資料のダウンロード
ワークシートのダウンロードはこちら。1枚目が配布用で、2枚目が指導者・保護者用となります。
小学校4年生以上向け防災教育ワークシート(配布用及び指導者用)
振り返りシートのテンプレートはこちら。必要に応じて内容をアレンジしてご利用ください。
防災学習共通振り返りシートver.5.0
学習成果の確認
学習成果の確認には、筆者が防災教育訓練や教職員研修等で共通して使用している「学習振り返りシート」を使用しました。シートは様々な形態の防災学習に対応していて、テーマや対象に関わらず防災教育で重要なポイントを自己評価できるようにしています。下記から.docx形式のWordファイルをダウンロードできますので、必要に応じてアレンジしてご活用ください。
児童生徒の回答シートをGoogleフォームに入力してグラフ化しました。自由記述項目は非常に回答数が多いので、主に数値部分をご紹介します。
まず対象者の属性とメッセージの確認です。今回は全員、小学校4年生から6年生となります。メッセージは、防災教育において一番伝えたいことが児童生徒に伝わったかどうかを確認するものです。結果としては97.8%の児童生徒が「わかった」または「少しわかった」と回答してくれました。
2.2%の児童生徒については「どちらともいえない」以下だったのは、内容が多岐に渡ってしまったことで「一番」伝えたいことがぼやけてしまっていたかもしれません。
次に災害から命や生活を守る方法についての確認ですが、こちらについては「わかった」「少しわかった」の回答率が100%となりました。地震、風水害、避難所のそれぞれの項目について具体的に提示し、ワークシートにも記入したことで理解度が高まったと思われます。
また、災害に備えて何らかの主体的な行動を起こそうと思うかという設問については「思った」、「少し思った」の回答率が95.7%でした。
この点は講義というよりも事後の防災倉庫見学などの学習で、具体的なイメージを確認できたことが大きいと思われます
※自由記述欄の回答は実際はひらがなによる記載でしたが、読みやすさを考慮して漢字に変換しています。
災害発生時に他の人のために何かしようと思うか、という他者への積極的な関わり方については「思った」、「少し思った」の回答率は92.5%でした。小学校4年生から6年生まで、それぞれの立場からたくさんの積極的な意見が見られました。
まとめ~児童生徒からのフィードバックを大切に~
もし皆さんが「講師を依頼する側」として本稿をご覧いただいておりましたら、ぜひ児童生徒に伝えたいと思っていることを講師側に伝え、事後のアンケートや評価シートではその点をしっかりチェックしてください。「講師をする側」で本稿をご覧になっている方は、逆に学校側・依頼者側にその点を確認し、講義や授業の中に取り入れて、評価シート等で確認されると良いと思います。
単なる「感想」ではなく、もう少し具体的な項目・内容を確認することで、防災教育実践の学習成果・効果がより高まります。
「防災教育は実施しているが、本当にこの内容で良いのか」と不安や疑問をお持ちの方々も少なくありません。実際に防災教育・授業を受けている児童生徒に確認することも重要なフィードバックです。本稿紹介の振り返りシートは小学校低学年~管理職・一般研修まで幅広く対応していますが、アレンジも自由ですので、お気軽にご活用いただければ幸いです。