埼玉県内の小中併設校からご依頼いただき、地域学校保健委員会での避難所運営演習を行いました。公民館を会場とし、実際の学校・公民館の図面を用いて行う実践的な内容でした。本稿ではポイントをご紹介します。
(地域)学校保健委員会を活用した防災力の向上
学校保健委員会は文字通り、学校(児童生徒)の保健衛生や健康等について校長、教職員・養護教諭・保健主事、学校医、保護者代表者、地域の保健関係機関等が参加する委員会です。学校保健に関する情報共有や意見交換等はもちろんですが、何らかのテーマを設定し、外部人材による研修等が行われる場合もあります。
筆者の場合は学校内だけでなく「地域」学校保健委員会、という形で養護教諭の方からお声がけいただき、地域住民の方々や保護者、児童生徒等にも開かれた委員会で講座等を行うことが多いです。
地域・学校・家庭の防災について広く伝えることができる貴重な機会なので、養護教諭の方々向けの研修等でも積極的に(地域)学校保健委員会を活用してください、とご提案しています。
特に避難所運営や災害時のトイレや食事に関することなどは養護教諭・保健主事はもちろん、多くの人にとって関心のあるテーマなので参加者も募りやすいです。児童生徒・保護者・教職員・地域住民が同じ場で防災について話し合ったり、考えたりすることで防災力(防災に関する知識・想像力・行動力)の向上が期待できます。
HUG(避難所運営ゲーム)と学校・公民館図面の活用
今回は会場となった公民館及び隣接する小中併設校の学校図面を用いて、避難所運営ゲーム「HUG(ハグ)」を実施しました。HUGについては 以下の記事 をご覧ください。
実際の図面を使った進め方などは 以下の記事 をご確認ください。
担当の養護教諭の方にご協力いただき、公民館及び小中併設校の図面データをA3用紙等に印刷したほか、体育館のスペースをHUGのカードの縮尺に合わせて印刷していただきました(A3用紙✕4枚を貼り合わせたA1サイズが一般的な学校体育館の大きさ、これを基準に公民館のホール等の縮尺を合わせる)。
手間はかかりますが、縮尺が一致することで「実際に受け入れられそうな人数」を具体的にイメージすることができます。
公民館職員チームと教職員チームに分かれ、保護者や地域住民が入る
図面に合わせて参加者のチーム分けも行われました。公民館の図面を使うチームには公民館職員の方が、学校の図面を使うチームには教職員が入り、それぞれに児童生徒・保護者や地域住民の方が参加します。公民館でも学校でも避難所開設・避難者受け入れが同時並行で行われることになるため、実際の対応に近い状況で演習を実施できます。
途中の休憩時間ではお互いのチームを行き来して見学したり、他の図面の配置を確認したりします。
(参考)実際の避難所をイメージして
写真でご覧いただければ分かるとおり、避難所で使用されるブルーシートやマットなどを使用した演習となっています。また会場となった公民館に備蓄されているダンボールパーティション等も展示されました。
まとめ 具体的な情報が防災を「自分ごと」にしていく
避難所運営だけでなく防災全般に言えることですが、防災を「自分ごと」として考えるためには、ある程度具体的な情報や想定が必要です。東日本大震災でどうだった、平成28年熊本地震ではこうだった、といったこれまでの災害事例や体験談が必要な場面もありますが、いざ災害時に問われるのは「自分が暮らす地域、通う・勤める学校や公民館」でどう対応するのか、自分はどんな判断をし、どう行動するのかという点です。
避難所運営図上演習で図面を実際の施設に合わせることは、比較的手軽にできる「自分ごと」です。学校保健委員会の活用も含めて、ご参考になれば幸いです。