公園防災イベントでプレイパーク 被災地子ども支援の教訓を遊びで伝える

筆者がご縁のある公園では、定期的に防災に関するイベントを実施しています。

公園は災害時には「(広域)避難場所」としての役割を担っていることが多く、家屋倒壊や火災から身を守ることのできる広いスペースが少ない都内では、重要な場所になります。また、避難生活でのストレスや運動不足解消の場としても大切な役割があります。

そんな公園で行う防災イベントではただ「防災の知識を伝える」だけではなく、災害時の様々な課題と公園が果たす役割や機能を体験的に伝えられるプログラムが必要と考え、およそ10年かけて様々な工夫をしながら実施してきました。本稿では、公園イベントで積み重ねてきたノウハウを基に、事例やポイントを紹介します。

目次

被災地支援イベントから見える「自由な」空間・時間の大切さ

下記の写真は 熊本災害デジタルアーカイブ で公開(二次利用許可)されている、子ども支援イベントの写真です。

筆者も平成28年熊本地震には個人・法人で関わりましたが、公園などの広いスペースは地震直後の安全確保だけでなく、被災された方々の憩いの場としての機能も担っていました。余談ですが、その時の経験や教訓も公園スタッフの方々と共有しています。

出典:熊本災害デジタルアーカイブ/提供者:大津町
出典:熊本災害デジタルアーカイブ/提供者:大津町

写真から見ても分かるとおり、救援物資や各種資材で発生したダンボールを活用した空間づくりが行われていました。マーカーやペン、折り紙などを使った簡易なワークショップなども実施されていました。

子どもたちにとって遊びは日常、暮らしの延長線にあります。大人にとっての仕事がそうであるように、子どもたちが「日常に戻る」ために重要な過程です。平成28年熊本地震のこのイベントに限らず、被災後の生活の中でも子どもたち(とその保護者)が自由に遊べる空間・時間の大切さは他の被災地域でも痛感してきました。

災害時にも作れる「安心できる、居たくなる」環境と雰囲気

平成28年熊本地震は連続した強い地震に伴う家屋倒壊、建物被害を多くの方が目にしたことから、建物内ではなく公園など屋外での寝泊りや車中泊をやむなく選択された方が多くおられました。

安心できるはずの自宅、遊びに行く場所であるはずの公園が、地震によって”危険な場所”や”避難生活の場所”に変わってしまうという経験は、子どもたちの心身に影響を与えます。そうした教訓から「安心できる、居たくなる」場所をいち早く作ることが、特に子どもたちが災害をのりこえていくうえで重要だと考えるようになりました。

この取り組みを長くを実施してきた公園は住宅地にあるため、地震災害時には多くの方が避難してくることが想定されます。そんな場面でも、公園管理者や周囲の大人がちょっとした工夫と身近なもので「安心できる、居たくなる」環境や雰囲気を作り出すことができれば、子どもにも保護者にも大きな支えになるはずです。

遊びの空間づくりは「災害時の居場所づくり」でもある

「大人の関わり」は最低限、安全管理と自由度のバランスを保つ

こうした空間・時間の重要性を平時のイベントで伝えるために、ダンボールなどを活用したあそび場を作るのですが、ポイントになるのは「大人の関わり」を最低限、具体的には安全管理を中心とした関わりのみに留めることです。

乳幼児連れで参加をされることもあるので、ダンボールの欠片やシール、ペンのキャップなどを口にしないようにする等に注意を払います。ハサミやカッターは原則として使用せず、どうしても使いたい場合は保護者の方など大人と一緒に作業するようにしてもらいます。また、マーカーやガムテープ、使っていたダンボールの取り合いにならないよう、みんなで仲良く使う、使ったら元の場所に戻す、などの説明を行います。

ただ、そうした関わりや説明は最初のみで、子どもたちが増えてくると関わり方は変化していきます。

子ども同士のコミュニケーションから学ぶ、思いやりや助け合い

子どもの人数が増えてくると、子ども同士でのコミュニケーションが自然と生まれてきます。例えば

「青色のペンがないなぁ」 「はい、どうぞ」 「あとでもどしてね!」 

「ガムテープどこ?」 「ここにあるよ!」 「ありがとう」 「つぎ、わたしね」

といったやりとりです。保護者の方も驚くくらい、積極的にお友だちと関わったり、ほかの子の手伝いをしたり一緒に遊び始めたりする子もいます。何でも大人が指示するのではなく、お互いに限られた道具を使いながら楽しむ空間づくりをします。それが「自由に遊べる」という雰囲気、感覚へとつながっていきます。

子ども同士のコミュニケーションを見守り、サポートする

加えて、こうした自然発生的なコミュニケーションの背景には、子どもたちなりの思いやりや感謝、助け合いなどがあります。避難所など限られた空間、資源で多数の方が生活しなければならない環境で重要なコミュニケーションでもあり、筆者はこれらの会話が見られたときには、子どもたちをほめて、すぐに保護者の方に共有します。

今の声かけ、よかったですね!避難所などでは大人もこうして助け合えるといいですよね。

禁止(〇〇しない!)ではなく提案(〇〇しよう!)を、子どもの目線で

とはいえ、乳幼児~小学校低学年くらいの子どもたちが5人、10人と集まれば、混沌としてきます。ある程度はルールを整える必要があるのですが、ポイントは禁止ではなく提案で伝えることです。

× 使ったペンを置きっぱなしにしない!
〇 あかペンくんがまいごだから家(ケース)につれてって!

× ガムテープをひとりじめしない!
〇 ☆☆くんにテープを分けてくれる? など

これらは実際の避難所運営における管理運営ルール、生活ルールの応用です。興味のある方は 下記の記事 もご参照ください。

安全な環境とルールの中での自由が「居たくなる」環境、雰囲気につながる

本稿第2項でも記載したとおり、このプログラムは「居たくなる」、つまりどれだけ子どもたちや保護者に楽しく滞在してもらえるか、がポイントになります。滞在時間の長さは環境や雰囲気づくりの結果であり、プログラムの成功ともいえます(子どもが帰りたくない、まだ遊ぶ!となって保護者の方が困ってしまうという課題はありますが、他のプログラムや体験を紹介してうまく切り上げてもらいます)。

子どもたちが遊んでいる間、保護者の方が別のプログラムに行く、ちょっと買い物に行ってくるなど、一時的な託児所的な機能を担うこともあります。保護者の方同士でお互いに子どもを見合いながら、交代でそれぞれの用事を済ませる、といった場面も頻繁にあります。これらは災害時の助け合いにも直結するコミュニケーションです。

これらの環境や雰囲気を支えているのはただ「楽しければいい」ではなく、公園という公共の場における安全管理への配慮と、トラブルを防ぐ適切なルール、子どもたちへの関わり方によるものです。とはいえ、必ずしも専門性が必要というものでもなく、本稿をここまでお読みいただける方々でしたら、すぐにでも実施できるのではないかと思います。

補足 ダンボールは自治体の協力を得られると実践的

体験で使用するダンボールは市販されているものでもよいですし、家庭や近所のスーパーやドラッグストアからもらっても構わないです。防災イベントであれば、自治体と連携して非常食や非常用水の空き箱を活用させてもらうのがベストです。ダンボールベッドやトイレの作り方を学ぶ機会にもなります。

自治体から提供された備蓄品の空きダンボールを活用

まとめ 子どもたちの笑顔を守るために、大人ができることを

講座や座学で子どもたちへの支援の教訓を伝える、というのは難しいと感じています。そもそも多くの防災講座には子どもたちがいないので、当事者不在なわけです。ですが公園での防災イベントであれば子どもたちなり保護者なり「当事者」たる方々がたくさん来てくれます。

さらに周りには防災に関心のある大人も大勢いるわけですから、何十枚のスライドを使って説明するよりもずっと環境や雰囲気の大切さを感じてもらえます。

本稿の内容に限らず、歌って踊ってもよいですし、ゲームをしたり、鬼ごっこをしてもよいでしょう。被災後の子どもたちの笑顔を守るために、大人が何ができるのか、考えるきっかけとなれば幸いです。

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