2020年7月1日夜、大学生・教職員向けオンラインミーティング(セミナー)「防災・災害ボランティアってなんだろう?」を実施しました。
昨年秋ごろから講座等のご依頼を受けていたり、新型コロナウィルス感染症(以下「COVID-19」)の影響で予定していた講座等が中止になってしまってた6つの大学にお声がけさせていただき、オブザーバーの社協職員、高校生を含む43名の方にご参加いただきました。
本稿では参加していただいた皆さまへのフォローアップも兼ねて、当日の内容について抜粋でご紹介します。
各大学の個別レポート
大学ホームページで、当日のレポートが公開されています。以下のリンクからレポートをご覧いただけます。
- 東洋大学ボランティア支援室 様(PDFファイル)
- 法政大学ボランティアセンター 様
- 青山学院大学ボランティアセンター 様
ご参加、ご協力いただきました教職員の皆さま、ありがとうございました。
実施の趣旨・背景
COVID-19の影響で、全国的な災害ボランティアの呼びかけ及び参加が難しくなっている現状ですが、自然災害の直接的なリスクは変わりません。地震も起こるでしょうし、豪雨・台風も想定されます。被害がでれば支援の力が必要になりますが、広域支援が難しくなると地域の力、地元の力が今まで以上に重要になってきます。
学生も含めたひとりひとりが平時の防災(ボランティア)活動に取り組み、被害を軽減することが、いざというときの災害ボランティア、地域の力につながります。
漠然とした感染症への不安、避難所等への課題意識、いろいろな疑問などを考えるきっかけをつくりたいと思い、各大学のボランティアコーディネーターさんなどにお声がけして開催に至りました。
ミーティング(セミナー)内容
防災活動と災害ボランティア活動のつながり、大学・学生として意識してもらいたいことなどを全体的に取りまとめてお伝えしたいな、と考えたのですが、範囲が広くてまとめるのが難しかったです。
そこで自分自身の整理のためにも、A3の1枚でまとめシートを作ってみました。参加者及びご協力いただいた大学の関係者様限定の資料ですのでぼかしています。
内容は大きく分けるとこんな感じです。
それぞれについてご紹介していきます。
大学・学生との関わり ~ボランティアを続ける理由~
冒頭に自己紹介も兼ねて「ボランティア活動に関わるきっかけ、続ける理由」についてお話しました。
1995年の阪神・淡路大震災、2003年の水俣豪雨災害、2004年の新潟県中越大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、平成30年7月豪雨等での経験から『被災する』とはどういうことなのか、本当に被災された方が望むことは何だろうか、を考えながら聞いてもらいました。
災害はひとつしかなくても、被災は人の数だけあること、大切にしたい「何か」は人それぞれであること、そして「被害を出さない、繰り返さない」ために、今どんな活動ができるのかをご紹介しました。
参加した学生さんと同じ在学中に経験した「失敗(そうはいっても、今につながるほど重要なことなんですが)」、そして仕事として関わっていくなかでの様々な「困難」の体験を経験として整理し、教訓としてお話しました。
全体でみれば僅かな件数の「失敗」や「困難」であったとしても、表に出てこない、出にくい課題に向き合い、予防できるような機会を作りたい。そう考えて大学の職員の方にご協力をいただき、活動を続けています。
COVID-19の影響 ~イマ・コレカラのキーワード~
COVID-19が特に災害ボランティア活動にどんな影響を与えているかについて、不安の感染・分散避難・在宅避難・熱中症などをキーワードとして取り上げました。特に熱中症は猛暑が想定される今夏でもポイントになるので、熱中症警戒アラートについてもご紹介しました。
仮設トイレや避難所等に対する「不安」の感染がどんな影響を与えるのか、「分散避難」とは具体的にどういうことなのか、「在宅避難」が強調されてすぎて逃げ遅れにつながらないか、停電時や災害ボランティア活動中など熱中症のリスクはどう受け止めればよいのか…
すべては解説しきれませんでしたが、今の状況、これからの状況を読み解くヒントになればと思います。
※なお、筆者は医療従事者ではなく、COVID-19に関する専門的な知見は持ち合わせおりませんので、あくまで個人的経験の範囲内での説明です。
これからの災害ボランティア ~災害VCと社協など~
災害ボランティアセンターと社会福祉協議会の関わり、JVOADや支援P等の全国的なネットワーク、COVID-19に関するガイドラインの紹介から、改めて地域の力が必要であることについてお話しました。災害時のトイレなど安全衛生についても触れました。
ボランティア保険はCOVID-19罹患が対象となることについて触れましたが、重要なのは「対象になる」ことと「個人的・社会的な影響」は別の問題だということです。『だから、私なら、どうする?』というひとりひとりの判断、行動が重要になってきます。
この点を意識してもらうために防災カードゲーム「クロスロード・ゲーム」を応用したブレークアウトセッションを15分ほど行いました。セッションではある特定の条件での問題に対して、YESかNOで判断し、その理由を他の人に伝えてもらいました。「正解が分からない問い」にどう向き合うかを通じて、自分自身の価値観や、相手の価値観を知ることができます。
「自分に何ができるかを考え、行動し続ける」ためには、自分自身が何を大切にしたいのかをよく見つめ直すことも必要です。短い時間でしたが、このセッションは本イベントでいちばん伝えたいメッセージのひとつです。
これからの防災(ボランティア) ~防災対策の基本~
地震災害と豪雨・台風を例に、基本的な対策についてご紹介しました。地震災害では5つの危険(うごく・おちる・とぶ・たおれる・われる)の対策を徹底すること、豪雨・台風では警戒レベルの受け止め方や目視による避難の開始、ハザードマップのチェック、対策の7か条(ガラス飛散防止等の基本的なこと)などをお伝えしました。
また、事前に受け付けた質問でも多かった避難所に関連する内容として避難場所・広域避難場所等の関係や、初動対応のポイントについてもご紹介しました。
災害状況シミュレーションのワークシートを事前にご提供し、時間があるときにチャレンジしてもらうようにもお伝えしました。ワークシートは下記の記事からダウンロードできます。
[blogcard url=”https://kenyamiyazaki.com/archives/460″]質疑応答 ~ここが本番と思うほどたくさん!~
質疑応答は、事前にWebサービス「slido」で受け付けました。事後も含めて合計24件ものご質問をいただき、一言ずつではあるのですが全て回答させていただきました。
これだけで90分~120分とってもいいくらい、的確な質問ばかりでした。機会があれば、個別にオンラインでのイベントなどで対応できればと思います。
まとめ ~大切な”何か”を守るために~
防災(ボランティア)活動と、災害ボランティア活動は、これまで以上に密接に関係してきます。日頃から対策を行い、被害の軽減に取り組むことが、地域の災害対応力、支援力にもつながります。
「防災・災害ボランティアとは、大切な何かを守るために、ひとりひとりがいま、できること」。
身近な人、身近な環境に目を向けて、できることから備え、行動するきっかけになれば幸いです。
90分では内容も、ブレークアウトセッションも足りない部分があったかと思いますが、「今後につなげる」という意味でも、ぜひ大学教職員の方、ボランティアセンターの方と一緒に備えに取り組んでいただきたいと思います。
謝辞
本イベント開催にあたり、広報周知・当日参加などでご協力いただきました大学教職員の皆さま、そして当日ご参加いただいた皆さまにこの場を借りて御礼申し上げます。