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課題解決型授業で帰宅困難時の宿泊体験、高大連携・職員参加で演習も実施(2022年9月)

2022年9月に法政大学市ヶ谷キャンパスで開講された「課題解決型フィールドワーク 首都大規模自然災害時に一時帰宅困難者となった本学学生・教職員と一般人の救済」に、前回から引き続きアドバイザーとしてご協力させていただきました。授業の詳細なシラバスは大学ホームページで公開されていますので、リンクからご確認ください。

目次

これまでの取り組み

法政大学における帰宅困難を想定した宿泊型のプログラムについては、本ブログでも何度かご紹介しています。下記の記事でこれまでの取り組みについて確認できます。お時間があるときに併せてご覧ください。その他、大学・学生団体関係の活動に関心のある方はタグ「大学」も参考にしてください。

本記事の趣旨について

本記事執筆時点で授業日程は終了していますが、履修生による課題は現在進行系となります。本記事の趣旨としては、他学他校の皆さんの参考になればという想いとともに「履修生による課題解決提案の参考」になればと考えています。授業の要点は”課題解決”にあり、学習内容や体験をまとめるだけでなく具体的な解決策を考え、提言としてまとめることが評価の観点として示されています(冒頭のシラバス参照)。

従って、本記事では「こうしたらいい」という具体例や筆者の考えを示すというよりも「このあたりがポイントですよ」と示すに留め、写真や参考リンク等から、読者の皆さん自身でどうすべきかを考えていただけたらと思います。

授業全体を通して気付いたチェックポイントまとめ

全体の流れはシラバスのとおりですので割愛し、全体を通して気が付いたことをチェックポイントとしてまとめました。概ね、口頭や授業中に使用したLINEオープンチャット(以下「OC」)でも共有していますが、補足も含めて整理しておきます。細かい点も多く大学全体としての帰宅困難者対策に役立つものばかりではありませんが、学生・教職員個人の安全衛生、体調管理、トラブル防止という視点では重要と考えています。

多数の携帯トイレの利用は「環境整備」と「衛生管理」を意識して

授業では「大学に備蓄されている携帯トイレを、訓練でも実際に使用してみる」という機会がありました。展示紹介はいろいろなところで行われていますが、宿泊訓練の過程で実際に使用する(用を足す)というのは筆者の経験からしても珍しい取り組みです。ただ、これまでの経験上「使ってください」だけでは訓練であっても、あまり使ってもらえないので「携帯トイレを使いやすい環境づくり」を意識することが重要になります。

以下、ポイントとなる写真を掲載しておきます。「飛沫防止の結び方」は、結び口を下に向けてしまうと、袋内に残った水滴などがトイレ・床にこぼれてしまう場合があります。そうならないよう、結び口を上に向けたまま結ぶ方法の動画をOCでシェアしました(個別にご覧になりたい方はこちらからお問い合わせください)。

今回は人数が30名程度、全員が使うわけでもなく回数も少なかったので回収も余裕がありましたが、もし停電・断水で大学構内のトイレも使えず、かつ多数の学生教職員、帰宅困難者がいた場合で携帯トイレを使うとしたら、どのような準備や工夫、ルールが必要でしょうか。

体育施設利用時の「外履き管理」は最初の関門

大学構内は基本的に土足で移動しますが、体育施設(体育館、武道場等)だけは例外です。では、もしここで帰宅困難者を受け入れるとしたら、靴は脱いでもらうべきでしょうか。

入り口で靴を脱ぐ学生

施設の汚損や衛生面を考えれば「原則として靴は脱いでもらう」となりそうですが、では脱いだ靴はどうなるでしょうか。靴箱は足りませんし、入り口においたら言うまでもなく大混乱です。持ち込んだとしても、靴を持って歩くわけにもいかず、結局その辺に置いておくしかないでしょう。一晩に数百人~千人くらいが写真のような入り口を出入りするとしたら?どんな準備やルール整備をすれば良いでしょうか。

帰宅滞留の指示・案内は、理屈や条例だけでは行動を変えられない

これは筆者がOCに投稿した投票の一例です。ここでは「家族から早く帰ってきて」と言われた場合、すぐに帰るかどうかを質問しました。結果として多くが「すぐに帰る」という判断をしています。もちろん、実際の場合は距離や天候、交通機関の状況によるかもしれませんが、いずれにしても「家族の状態」は帰宅判断に大きく影響するということです。

東京都の条例に基づき、都内事業者は一斉帰宅の抑制に務める必要があります。また学生の安全管理という面でも、地震直後から長距離の徒歩帰宅を大学としては推奨できません。大学として帰宅の許可を出す出さないという話ではありませんが、これで帰る学生が入れば同調する学生も少なくないでしょう(逆に1人での帰宅は男女問わずリスクがあります)。

自宅での防災対策をしておくことが何よりですが、最悪このような状態になったとしても、少しでも安全に帰宅を促すにはどのような工夫があると良いでしょうか。また、学外の帰宅困難者に対してはどこで、どのような情報提供をすれば、効果的な支援につながるでしょうか。

帰宅困難者受け入れスペースは適切か、どのように管理すべきか

帰宅困難者支援(受け入れ)施設は、避難所とは違い長期的な生活場面を想定する必要はありません、原則として。ただ、だからといって物理的距離感をないがしろにして良いというものではありません。

受け入れスペースのイメージ

こちらの写真は大学が想定する配置イメージ(畳一枚に一人)の状況です。これに手荷物があるとすると、かなり窮屈な印象です。最終的にこうならざるを得ないにしても、最初からこの状況だと「あっちは空いてるじゃないか!」と言われてしまいそうです。何より、もしそうしてスペースが広がったとして、毎回職員や学生ボランティアが「詰めてください!」と注意し続けるのは現実的ではありません。数値上の滞留者数に囚われず、ある程度柔軟な、現実的な管理ルールが必要となります。

トラブルを避け、なるべく帰宅困難者の方々の自発的な協力・理解を促すには、どうしたら良いでしょうか。

災害対応は「自分たちではなく環境や相手を変える」ほうが良い場合もある

今回の授業では体験をして、最後に図上演習で全体の流れを意識しながら帰宅困難者受け入れのシミュレーションをする、という構成になっています。非常に具体的で、理解につながる構成だと思います。だからこそ、その成果をより具体的な形にまとめ、次につなげていくことが大切です。

授業のまとめでもお話しましたが、ポイントは「課題解決の提案は、その課題解決に直接つながる身体の動き(アクション)を示すルールや作業に置き換える」ことです。

例えば「日頃から帰宅困難者受け入れ訓練をしておく」というのはそのとおりなんですが、具体的に何の課題を解決するためなのかが分かりません。仮にテーマを定めて訓練をして、自分たちの能力を高めたとして、想定外の事態は起こり得るもので、訓練による備えには限界があります。

高大連携による図上演習の様子
訓練通りにいくなら良いのですが…

では、どうすれば良いのでしょうか。筆者の経験上「環境や相手を変える」のがコツだと考えています。

これは授業でもお話しましたが、仮に「タバコを吸いたい」という方に対して「どこで吸ってもらう・いつ・誰が決める?」など議論するべきなのかどうか、という話です。施設内は禁煙である、キャンパス内は分煙であり指定箇所しか喫煙できない(法政大学HP)、というルールがあります。であれば、自分たちでどうするか考えるよりも、ルール(環境)を伝えて相手に行動を変えてもらう(我慢する、移動する)ほうがより効率的ではないでしょうか。

これはあらゆる課題に対して言えることです。すべてを受け止めて解決しようとするのではなく、あくまで一時的な受け入れ施設なのですから、難しい問題は割り切って「●●について、ご理解・ご協力をお願いいたします」でも良いのではないでしょうか。

ただ、一点だけ。

ご理解・ご協力をお願いする内容は具体的でなければ理解も協力もしようがありません。あるいは誤解や曲解がトラブルを招きます。なので先ほど述べた「具体的なアクションを示すルール・作業」が大事なのです。

まとめ~大学の帰宅困難者対策のモデルとなるような取り組み~

今回の授業は宿泊の実体験と図上演習という構成でしたが、演習には高大連携で高校生も大学生と一緒に参加し、また大学職員の方々も参加しました。この演習だけでも様々なポイントがあって紹介したいところではあるのですが、記事ボリュームの都合から割愛させていただきます。

使用した教材は「帰宅困難者支援施設運営ゲーム(KUG)」(東京大学大学院都市情報・安全システム研究室)」を同学の廣井先生の許可を得て法政大学が作成した「法政大学版KUG」です。実際の施設図面を、コマの縮尺に併せて作成するなど具体的な作り込みがされています。

今後、より多くの職員の方々に体験していただくための取り組みや、実施経験のある学生のファシリテーター参加など、大学の帰宅困難者対策のモデルとなるような様々な取り組みが予定されています。履修生の皆さんは、ぜひ今後の活動にも参加してみてください。

学外の皆さんは、こうした取り組みが大学・教職員・学生間で行われていることを知り、それぞれの大学や地域での活動の参考にしていただければ幸いです。

高大連携による図上演習の様子

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