都内2大学で防災キャンプ、首都直下地震に備え学生チームと教職員が連携

2019年11月〜12月にかけて、都内の2つの大学で宿泊を伴う「防災キャンプ」が開催されました。いずれも学生チームと教職員が緊密に連携し、学生が主体的に企画運営するプログラムでした。それぞれのイベントについて、企画から当日までアドバイザーとして関わらせていただきましたので、ご紹介します。

2019年は法政大学市ヶ谷キャンパス、東洋大学白山キャンパスでそれぞれ実施されました。東洋大学さんでは2回目となり、2018年にも実施しています。詳しくは以下の記事をご覧ください。

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なお、以降は便宜上、それぞれのイベントを「法政大学防災キャンプ2019」、「東洋大学防災キャンプ2019」と記載させいただきます。

大学で被災したら?[チーム・オレンジ企画]防災キャンプ(11/9-10)

法政大学さんで行われた防災キャンプは、同大学の学生チーム『チーム・オレンジ』による企画です。災害救援ボランティア講座や、チーム・オレンジによる講座やイベント等について、何度かお手伝いさせていただいたことがある関係でご縁がありました。企画の段階から、大学職員の方と一緒にお打ち合わせをさせていただきました。

法政大学防災キャンプ2019概要

法政大学防災キャンプ2019チラシ

近年、様々な自然災害が日本に大きな被害を与えています。

そのような中、2011年3月11日に発生した東日本大震災を機に、災害時のボランティアや防災に高い関心が寄せられています。 もし大学にいる時にマグニチュード7規模の地震が発生し、家に帰ることができず大学内に一時避難をすることになった場合、我々はどのように行動すべきでしょう。

もちろん、イメージが付きにくいのが現状でしょう。今回防災キャンプを企画した意図は、学校内で一時避難をすることに具体的なイメージをつけるためです。そのためには限りなく、発災時に近しい条件にするため、宿泊を伴うことが重要であると考えます。

このことにより、どんな苦労があるのか、就寝の際はどこが安全でどこが危険なのか主体的に考えることができると思います。さらに、この経験は実際に大学内で避難するときに、いくらかの心のゆとりとなって還元されることも期待しています。 ぜひこの機会に体験してみませんか。

http://www.hosei.ac.jp/volunteer/NEWS/zaigaku/191014_01.html

法政大学防災キャンプ2019のようす

冒頭では、導入の講義をさせていただきました。首都直下地震の可能性や主な被害、帰宅困難に関する課題、東日本大震災当時の法政大学の状況などを紹介し、災害対応の心がまえについてお話しました。

宮崎さん講義
提供:法政大学市ヶ谷ボランティアセンター
(導入講義・被害想定の説明)


実技部分では、心肺蘇生法及びAEDの体験、就寝スペース、応急トイレづくり、ロープワーク、搬送法、防災グッズ紹介などを状況に応じてフォローさせていただきました。企画・運営はほぼすべてチーム・オレンジのメンバー(1年生中心に!)が行っていたので、筆者は流れに合わせて必要とされた場面で、必要なことをお伝えしたり、一緒に作業することを意識しました。

AED講習
提供:法政大学市ヶ谷ボランティアセンター
(心肺蘇生法・AED講習)


心肺蘇生法・AED体験と交代で「備蓄倉庫の見学ツアー」も行われました。実際に大学にどんな備蓄があるのかを見る機会は貴重です。自分の目で見て確かめることができると、安心につながりますね。

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(応急トイレづくり)


大学のトイレが破損や断水で使用できなくなったら?人数が多い分、その管理は大変です。携帯トイレや応急トイレなどを備蓄されている大学さんも多いですが、実際に訓練で使用してみたり、設置・配布をどうするかを検討してみることも重要です。

暗闇体験
(暗闇でのワークショップ)

 

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(就寝スペースでの防災ゲーム体験)

 
停電を想定し、真っ暗な部屋を使ってのワークショップや食事・就寝スペースづくり、防災カードゲーム「クロスロード」など、チームオレンジメンバーの進行で様々なプログラムを体験し、翌朝について説明があって就寝となりました。

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(筆者の就寝スペース)

 
筆者は小会議室をお借りしましたが、窓に近いためかなり冷えました。毛布1枚だけお借りしたので椅子の上で寝ました。さすがに熟睡はできませんが、施設宿泊訓練のおかげでだいぶ慣れてきた?気がします。。。
 

ロープワーク
提供:法政大学市ヶ谷ボランティアセンター

防災グッツ見学
提供:法政大学市ヶ谷ボランティアセンター


翌朝の時間を使ってロープワークを体験してもらい、その後防災クイズやバケツリレー、担架搬送訓練などが行われました。防災クイズでは、筆者の手持ちの防災グッズなどもご紹介させていただきました。

法政大学防災キャンプ2019公式レポート

実施の様子については大学ボランティアセンターの公式ホームページでも掲載されていますので、合わせてご覧ください。参加学生による詳しいコメントなども掲載されていますので、企画検討したい学生団体の方や、大学教職員の方は参考にしてください。

予測できない大地震、あなたはどう備える? ~首都直下型地震に備える!東洋大学宿泊サバイバル体験2019~(11/30-12/1)

東洋大学さんで行われた防災キャンプは、ボランティア支援室の企画です。プログラムについては学生団体(IVUSA)のメンバーが中心になって企画・運営するという形で行われました。

東洋大学防災キャンプ2019概要

   

「予測できない大地震、あなたはどう備える?~首都直下型地震に備える!東洋大学宿泊サバイバル体験2019~」を実施しました。

講師
宮崎 賢哉さん
災害救援ボランティア推進委員会主任
(一社)防災教育普及協会教育事業部長
社会福祉士

日時
2019年11月30日(土)18:00 ~ 12月1日(日)12:30 (1泊 2日)

会場
東洋大学 白山キャンパス 4号館 4B14教室

目的
1.参加者の防災・減災のための備えの意識の向上。
2.防災・減災のために自発的に行動できる学生リーダーの育成。
3.東洋大学の災害時対応について理解すること。
4.東洋大学白山キャンパスにおける、大規模地震時の行動についての動きを実体験し、実際の場面でスムーズに動けるようになること。

参加者数
14名

企画概要
今回の体験型プログラムは、実際に大規模地震が発生し、交通機関が突然ストップしたという状況を想定し、 キャンパス内に留まり発災直後の状況を追体験することで、実際の場面でどのように行動するか、その時に向けてどのような備えをすべきか、ということについて学びました。

https://www.toyo.ac.jp/ja-JP/pickup/SocialPartnership/csc/survival/

東洋大学防災キャンプ2019実施のようす

冒頭にボランティア支援室の方からのオリエンテーションがあり、アイスブレイク等が行われたのち、法政大学さんと同様に導入講義を行いました。

参加した学生が「ボランティアとして帰宅困難者支援に協力する」という想定で、具体的にどうサポートしていくかをディスカッション形式で考えてもらいました。

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(学生ボランティア緊急ミーティングのようす)


開放する場所はどこにするか?学生はどこに大量するか?物資はどこから、どうやって搬送・提供するか?傷病者等への対応は…実際に想定される課題を、参加者全員で考えて対策を検討してもらいました。

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(ミーティング記録に基づいて役割分担)


その後は、トイレ、食事、寝る場所、それぞれの役割に応じて活動に取り組みました。途中「停電」を想定した室内を真っ暗にするというシチュエーションも加えました。

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(停電中の活動)

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(ダンボールを使った応急トイレ)

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(大学に備蓄されている非常食も食べました)


翌朝は、構内の防災設備をチェックしながら楽しめる防災クイズラリーや避難所運営ゲームが学生企画として行われました。

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(学内設備や情報を使った防災クイズラリー)

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(防災クイズの答え合わせ)


防災クイズラリーは、数年前から大学に掲示されていたのに、ほとんどの学生があまり気に留めていなかった情報がクイズの答えにつながるなど、参加者にとって学びの多いプログラムになっていました。

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(避難所運営ゲームの体験)


クイズラリーの後は避難所運営ゲームを体験し、最後にそれぞれが今後取り組みたいことについての「宣言」を発表してもらいました。見えるように書き出したり、誰かの前で発表するということが、知識や経験を実際の行動につなげていくきっかけになればと思います。

東洋大学防災キャンプ2019公式レポート

実施の様子については東洋大学社会連携センター公式ホームページでも掲載されていますので、合わせてご覧ください。

まとめ ~学生・教職員の具体的な連携と信頼関係構築のために~

事前の講義でもお話しましたが、首都直下地震では「帰宅困難者」の問題が学生・教職員の安全安心にとって大きな影響を与えます。

帰宅困難に伴う集団転倒、火災からの逃げ惑い、家屋倒壊、体調不良など諸々の課題を防ぐためには「慌てて帰宅させない」、「無理な行動をしない・させない」ということが重要になるのですが、一般企業とは違い、明確な管理体制がある訳ではないので学生は帰りたいと思えば帰れる状況にあります。

その時、学生の立場からすれば「大学(教職員)を信頼できるかどうか」が重要になります。どこにいればよいのか。誰かの指示があるのか。非常食や水が配布されるのか。情報は迅速に提供されるのか。帰宅したいときはどうすればいいのか。

学生が在学中に大きな災害が起きれば、ボランティアを含め行動を希望する学生が必ずいます。その行動にどう応えるのかを、大学としての安全管理の責任も含め、想定しておく必要があります。具体案のひとつが大学における災害ボランティア講座(初期消火や応急手当など安全管理を含めた上で)であり、学生による主体的な活動の支援であり、本稿で紹介したようなイベントへの協力です。

災害時に事態を少しでも良い状況に持っていくことができるのは、大学という大きな組織の中、「教職員」あるいは「学生」という立場で、自らの被災に向き合い、考え、そして率先して行動できる人たちです。

多くの学生が自らの判断で行動できる大学だからこそ、こうした平時からの関係づくりを教育訓練を通じて育んでいくことが、重要になってくるのではないでしょうか。

「この職員さんなら信頼できる」、「この学生(たち)なら安心して一緒に活動できる」。

そんなつながりがひとつでも多くの大学で生まれてくることを願っています。

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