都内小学校4年生が宿泊型訓練、くらしを支える工夫を学ぶ

都内の小学校で4年生を対象とした宿泊型訓練が行われ、夜間の防災学習プログラムの講師としてご協力させていただきました。本稿ではその内容について、プログラムづくりの過程なども踏まえて紹介します。

目次

“めあて”に沿ったプログラムづくり

学校さんからご依頼いただいた際の「めあて(学習計画における目標)」には大きく2つが記載されていました。ひとつは「災害時の対応について学び安全な行動を身につける(要約)」こと。もうひとつは「帰宅困難や避難生活でも他者と協力して生活し、自分にできることを考え実践できる」ことです。宿泊型訓練の一部ということもあり、今回のプログラムでは後者のめあてに沿った内容を実施することにしました。

既習事項(予め学習した内容)を確認する

めあてに沿った内容としていくために、前提条件…これまでにどのような学習を行っているのかについても確認しました。

  • 社会科:校内防災設備点検、「地震からくらしを守る」
  • 総合的な学習:安全なまちづくり、東京防災を使った調べ学習
  • 防災課の出前授業(簡易トイレ、倉庫見学、公衆電話 等)
  • 消防署の体験学習(AED、担架づくり、通報、初期消火 等)
  • +宿泊訓練で非常食を食べる

いろいろな体験、学習を進めていることが分かりました。「くらし」という点についてもう少し踏み込んで、具体的な作業も交えて考えてもらうと、上記の学びも活かされるのではないかと考えました。

希望する学習内容をふまえて

「児童が楽しみながら学べるよう、体験や実習、防災クイズを交えた内容」を希望されている、ということでしたので、めあてや既習事項、実施の環境や資器材の条件などを考慮して「災害時のくらし(トイレと寝る場所)を考えよう」というテーマを設定しました。

4つのパートに分けて1-3パートは15から20分、4パートは5分ほど、合計約1時間で行う構成です。

プログラムの内容

プログラムの内容は以下の通りです。

パート1 座学で日々の「くらし」について考える

まず最初は座学でくらしの考え方について、被災された方の状況や筆者自身の経験を踏まえてお話しました。特に強調したのは『ひとりひとりの”くらし”にはそれぞれ欠かせないもの、大切なものがある』ということです。命を守ることができたとしても、その大切な何かを失ってしまったら、心も身体もとても辛くなってしまうこと、そうならないために自分の日々の生活を振り返り、備えていくことが大切であることを伝えました。

パート2 くらしに欠かせない「トイレ」をなんとかしよう

次はさっそく体験に移ります。ひとりひとりに異なる大切なものがある一方で、誰にでも欠かせないものもあります。誰もが毎日使うものは?それがなかったり、できなかったりしたら困るものは?災害が起きることによって、使えなくなってしまうものは?いろいろな意見があると思いますが、既習事項でもある「トイレ」についてです。

実際にダンボールトイレを使うのは難しいですし、そのような場面はないほうが良いと思います。ですが、簡易トイレの仕組みをより詳しく理解すると共に、もし簡易トイレがなかったり、足りなくなってしまったときにどうするかを班で考え、行動してもらうようにしました。

みんな一生懸命取り組んでくれて、予定していた作業時間15分で終わる班も多かったのですが「もっとやりたい!(いろいろ工夫したり直したい)」という意見が多く、10分ほど作業時間を延長しました。できたものについて、どのような工夫をしたのかについての発表もしてもらいました。

最後に壊れにくいトイレ(三角トイレ)の作り方について紹介し、パート2は終了です。

パート3 体調を整えるために「すいみん」をなんとかしよう

続いての作業は「睡眠:すいみん」の確保についてです。資材の数が限られているため、各班から代表者に出てきてもらいAチームとBチームに分かれ、それぞれの作業を他の人が見守る・応援するという形にしました。

はじめに段ボールベッドの作り方(三角トイレの要領で作り、それを中に入れて強度を高める)を紹介しました。使う枚数については4年生らしく、一緒に計算をしてみました。

「ベッドは、ダンボールを箱の形にして横3列、縦4列に置いて作ります。全部で何枚必要でしょう?」
「全てのダンボールの中に、もう1枚ダンボールを三角にして入れます。箱と、中で、合計何枚必要でしょう?」
「ここに50枚あります。今日は2つの班があります。最後に残るのは何枚でしょう?」

しっかりとしたベッドができました。実際に子どもたちにも少し寝てもらったりしました。

授業後、管理職の先生が「今日はこのベッドで寝ます」とおっしゃっていました。筆者から「床で寝るのとはずいぶんちがうと思います。ぜひ感想を子どもたちにフィードバックしてください。自分たちで工夫したり作業したことが、確かに誰かの助けになった、気持ちや心を楽にしたのだということが分かれば、自信にもつながると思います」とお伝えしました。

パート4 オンライン防災クイズ+家庭学習で学びを深める

最後のパートは先生からの希望にあった「防災クイズ」を活用したプログラムです。こちらの記事 で紹介している、オンライン防災クイズをワークシート形式にしたものを配布し、冒頭の5問を体験してもらいました。

なお、開始する前に「これまでに体験したことがある人!」と質問したら、2割くらいが体験済みでした。少しずつでも拡がっていることが感じられて嬉しくなりました。また、宿泊体験明けの翌日以降に配布していただく形にしましたが、こちらの記事 で紹介している防災クロスワードのシートも提供しました。

まとめ~楽しみながら理由や仕組みを学ぶ経験を大切に~

「防災を楽しく学ぶ」というのはよく言われることですが、”何を”、そして”どう”学ぶかは大事なポイントです。ただ「こうすればいい」ではなく”なぜ”必要で、”どうして”そうなっているのかを知る・考えるのは大人でも面倒だと感じてしまうところです。だからこそ「楽しめる」プログラムや体験が必要になってきます。

取り立てて目新しいプログラムではなくても、少し視点や伝え方を変えるだけで、子どもたちの関わり方や理解度が変わってきます。皆さんの実践の参考となれば幸いです。

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