法政大学ではかれこれ10年近く「災害救援ボランティア講座」を毎年担当させていただき、そのフォローアップとして市ヶ谷ボランティアセンターが行うボランティア総合講座や、学生団体「チーム・オレンジ」の防災関係企画などをお手伝いさせていただいてきました。
今回は、チーム・オレンジ内で特に防災に関心の高いメンバーによる「防災班」が、要援護者支援について考える機会を持ちたい、ということでご相談をいただき、何ヶ月も前から学生メンバーが準備をしてこの日を迎えました。名目上、僕は「講師」になっていますが、企画・運営は全て学生が行っています。
▼【市ヶ谷】チーム・オレンジ企画「要援護者体験」「応急処置体験」参加者募集(11/29、12/13)※リンク切れ
災害時の要援護者対応は、見過ごすことのできない課題となっています。東日本大震災では、平成22年度国勢調査ベースで、犠牲者の約66%が60歳以上の方であることが厚生労働省等の調査で分かっています。また、各種障がい者団体などの調査では、障がいをお持ちの方はそうでない方よりも犠牲になる確率が高い(おおよそ2倍程度)ことが分かっています。
つまり、高齢であること・障がいを持つことは「災害による被害を受けやすい」ということです。そして、問題はそうした事態が東日本大震災だけではなく、これまでのいくつもの自然災害で同様の結果であったにも関わらず、東日本大震災でもまた同様の結果が出てしまった、ということです。
高齢化はもちろん、障がいをお持ちの方の数も年々増えています。正確には、高齢化に伴い障がいをお持ちの方も増えている、と言ったほうがいいかもしれません。詳しくは下記のデータもご参照ください。
▼厚生労働省「障がい者数の推移について」PDF形式
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001y1j0-att/2r9852000001y1ov.pdf
このままでは、次の災害でもやはり高齢者の方、障がいをお持ちの方が、相対的に「多く」亡くなることになります。それが分かっているのに、何もできないのか、という想いが今回の企画につながっています。
「高齢」「視覚障害」「車椅子」それぞれの状況について体験した後、体験内容を振り返って考えるグループワークや、学内で要援護者の避難支援をするとしたらどのように行動するかを考える図上訓練も行われました。
体験では実際に全盲の状態(アイマスク)で白杖を持ち、ガイドをつけてコンビニを歩いてみることや、車椅子を使ってトイレに着座してみる・介助するといったことも行ってもらいました。
自然災害は平等です。誰にでも等しく訪れる事態です。ですが、私たちに与えられている状況は、生き方は平等ではありません。人それぞれに違いがあり、支援を必要とする人もいます。そして、その必要とする支援は決して大げさなものではありません。ちょっとした声かけ、ほんの数分のお手伝い、「もし自分の家族や友人だったら・・・」という共感や思いやり、そういったものだけでも充分な効果があると考えています。
学生中心の企画ですので、見る人が見れば課題や誤解も少なくないでしょう。でも、そんなのは大した問題ではありません。大事なことは、彼らのように例え人数は少なくても「本当に助けを必要としている人の姿に目を向けよう。声に耳を傾けよう」としている若者がいる、という事実です。
これからも、今回の企画の気持ちを忘れずに、経験を積み重ねていって欲しいと思います。いつか来る、その日のために。