保護者と低学年児童、地域住民向けの避難所運営・生活研修~みんなで考えるルールの大切さ~

本日は東京都小平市で「学校支援ボランティア養成講座」をお手伝いしました。東京都の学校支援ボランティア事業については こちら(東京都生涯学習情報) をご覧ください。

目次

低学年~中学年児童とお母さん方を中心に

会場に来ていた3分の1が小学校低学年〜中学年くらいの児童、3分の2がお母さん中心に保護者、ぽつぽつと住民の方、という構成でした。主催者の方も『うれしい誤算』でしたが、話の内容や話し方は低学年児童向けで行いました。

図面をどう使うかは事前に配置が決まっています

テーマが『避難所運営』だったので、おなじみの『避難所運営ゲーム(HUG)』に挑戦してもらいました。校長先生は「HUGについて知ってはいたが、なかなか取り組む機会がなかった。小学生には難しいのではないか」と心配されていましたが、これまでの経験から「避難所運営ゲームは、保護者や教員がサポートしてくれれば、低学年児童でも充分学ぶことができます」とお答えしました。

保護者や地域住民と一緒に取り組む

伝えるべきこと、考えるべきことは変わらない

対象が学校支援ボランティアを希望する住民であれ、6〜8歳くらいの子どもたちであれ、そのお母さん方であれ、防災、今回であれば避難所運営において、伝えなければならないこと、考えて欲しいことは何も変わりません。大事なポイントはただひとつ、ひとりひとりが災害によって引き起こされる様々な状況について考え、話し合い、普段からどう備えれば良いかを学び、行動(実践)することです。全ての教材やプログラムはそのための手段に過ぎません。変えるのは伝え方や表現だけなのです。

身を乗り出しながら考える児童と地域住民

親子と地域住民が一緒に避難所生活や運営を考えることの大切さ

低学年児童は、保護者(お母さん)とコミュニケーションをとりながら、自分なりの意見を提案します。「水が出ないならトイレはつかっちゃいけないんじゃないの?」といってトイレにチェックをつけたり、「小さな子(2,3歳の子)はお父さんのひざの上がいいよ(安心するから)」といって避難者に見立てた父と子のカードを重ねてみたりします。

お母さんはそれに対して「でも、トイレつかえなかった大変だよ、どこでするの?」とか「お母さんもお父さんや子どもと一緒にいたいと思うけど、着替えとかどうしたらいいの?」、「●●(ペットの犬)はどうしたらいいかな?」と伝えるなど、避難所を想定したコミュニケーションがあちこちで行われていました。

今回の研修では、事前に学校が指定した場所やルールがありますので、僕が気付いたところはフォローに入って「トイレは●●の仮設トイレを使って」、「●●が女性用のスペースに」といったことをお伝えしました。実際には何も決まっていない、という学校も少なくないのではないでしょうか。住民・教員等による「避難所運営協議会」などが平時から設置されている場合はもちろん、そうでなくても、女性や小さな子どもという、なかなか意見を言いづらい、伝えにくい方々の意見を積極的に取り入れ、対策を講じていくことは重要な学校防災です。

  • トイレ、プライバシースペース、ペットなどの課題にどう対策を講じ、解決するか。
  • 女性や小さな子どもの意見を(事前、事後問わず)どのように反映させるか。

などは、避難所運営を考えるにあたって、必ずご検討いただきたいテーマです。

避難生活におけるルール等については 下記の記事 もご参照ください。

防災教育は「子どもたちの力を信じる”共育”」でもある

児童生徒を対象とする防災教育にとって大切なことは、子どもたちの力を「信じる」ことだと考えています。何か作業をさせても、うまくいかないかもしれません。何かを答えさせても、正しい答えが返ってこないかもしれません。それでも、作業をすること、答えを探そうとすることの中に必ず学びがあります。

「いま(教育の時点)は失敗しても、うまくいかなくても、正しい答えが分からなくてもいい。まずはできるだけのことを、できるだけやってみよう。君たちならできる。」そう信じ、また児童生徒に対して言葉で伝えるようにしています。もしうまくいかなかったら、その部分を重点的にフォローしていくのが指導側の役割です。僕自身は防災教育の順序は「教える→考えてもらう」よりも「考えてもらう→教える」ほうがよいと考えています。そのためには「彼らは(知識や経験が少ないなりに)自分で考える力、答えを出そうとする力はある」と信じることです。

ロープワーク等、身体を動かすイベントも同時開催

私たちは、予め想定される事態からルールを決めることはできても、災害対応の「正しい答え」を持ち合わせているわけではありません。例え低学年児童、子どもたちであれ、彼らの意見が間違っている、聞くに値しない意見であるという根拠は、どこにもないのです。これから児童生徒への防災教育に関わろうという方には、ぜひ意識していただきたいと思います。彼らの力を信じて、問いかけてみてください。私たちが教えるべきことは何か、考えるべきことは何か、そして防災教育に関わる者が学ぶべきことは何か。そのヒントが隠されています。

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