災害ボランティア講座と大川小の悲劇の教訓、「災害時の決断力」

これまでの活動やご縁もあって、様々な大学で災害救援ボランティア講座を担当させていただいています。こちらの記事 もご参照ください。

その中のテーマで『災害救援ボランティア活動の安全衛生と被災された方との接し方』という科目があります。筆者が担当するコマの総合テーマですが、そのテーマは大きく5つの柱に分けています。それぞれの柱は、自身の活動経験から重要だと感じた内容になっています。

目次

主な構成

  1. オリエンテーション・・・現場での細かなノウハウや心構え
  2. 災害ボランティアの安全衛生と心のケア・・・安全衛生管理の方法と心のケア(自分自身も含む)
  3. 災害情報の収集・伝達とコミュニケーション・・・災害情報の扱い、意志決定、コミュニケーション
  4. 災害時の組織行動とリーダーシップ・・・応急的なチームビルディングとリーダーシップのとり方
  5. 緊急支援から生活再建へ・・・生活再建への流れと、各種制度・仕組みの理解

このうち、第3項だけピックアップして、演習形式で行っている時間が「災害時の決断力」です。決断のためには災害情報の扱い、意志決定、コミュニケーションが重要になります。他の項目も全部ひっくるめて4時間と少しでまとめざるを得ないので、いつもかなり駆け足になってしまうのが申し訳ないのですが・・・

特に第3項、災害時の決断力(災害情報の収集・伝達とコミュニケーション)は「最前線で求められる」スキルであり、考え方であり、価値観だと思っているので、1時間30分近く時間をかけて行っています。グループワークを行う前の事前学習として紹介しているのが釜石の出来事と大川小の悲劇※です。

※本件については高裁判決が出ています。当初、本記事でも状況等を説明していましたが、詳しくは各メディアの解説記事等をご参照ください。

マニュアルの整備や訓練の必要性については言うまでもありませんが、筆者はこれまでの災害で起きた様々な状況もふまえて、到達するのは「災害時の決断力(意志決定)」であると考えています。

そして、決断力・意志決定のベースとなる情報の扱い、他者とのコミュニケーションもまた同様に重要であると考えています。

決断力があったら災害から命を守れるのか、というと必ずしもそうであるとは言い切れませんが、可能性を高めることはできるのではないでしょうか。講座でお伝えしているポイントをご紹介します。

「誰も答えの分からない事態」においてどのような基準で決断するか。

答え=正解が分からない以上、正解を求めれば時間がかかります。「最悪の事態」を想定して、最悪事態を回避するということが、判断基準となります。

決断するために足りない情報や根拠をどのように補うのか。

「正しい」判断に必要な情報や根拠の収集をしようとすれば、対応が遅れます。対応が遅れれば状況が変わり、必要な情報も変わります。その時点で足りない情報や根拠は、事前学習や教育訓練によって補うほかありません。

意見の異なる相手とどう向き合い、対応するか。

なぜ意見の相違がおきるのか、どのようにコミュニケーションをとるかについての理解が必要です。また、緊急時におけるリーダーシップ(専制型:リーダーの指示に従わせる)で迅速に行動させる対応と、平時・復旧復興過程におけるリーダーシップ(民主型・総合型:まわりの意見も聞く)で合意形成しながら対応する場合があります。

まとめ

災害状況を想定したケースワーク、グループワークを実践してもらうと理解しやすいです。いざというときに後悔しないために、最悪の事態を回避する決断ができるように、少しでも学生の皆さんの参考になる時間となればいいなと思っています。

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