都内保育園・児童館等でパパママ向け防災講座を実施、託児サービス利用&乳幼児同席も可

都内の保育園、児童館・公民館等で、託児サービス利用や乳幼児同席も可能な「パパママ向け防災講座」を担当しています。本稿では講座でお話している内容のうち、特に乳幼児(0歳~未就学児)を対象とした場合の要点をご紹介します。なお、講座の実施等については お問い合わせフォーム よりご相談ください。

目次

防災対策は料理や子育てと同じ、順番を意識して

講座の冒頭で全体の流れをご説明するのですが、そこで触れているのは、慌てずに「順番に」備えを考えることです。防災対策と聞くと「何を準備すればいいのか」が気になり、準備をしようとします。ところがいざ準備しようとしても「何を用意すれば…」とか「どれくらい備蓄しておけば…」と悩んでしまい、結局後回しになったりしがちです。

なぜそうなるのかというと「何を」「どれくらい」といった具体的なことを考えるためには「何が起きるのか」、「その時どうすればいいのか」といった想定する災害のイメージが必要になるからです。

例えば、子どもに離乳食やご飯を作るときは「今日はこれにしよう」とイメージしてから袋や食材を取り出して調理しますね。抱っこ紐、ベビーカー、おむつ、お洋服などベビー用品…どれも「これが使いやすそうだな、このくらいのサイズかな、これがかわいいな」など、イメージしてから購入する方がほとんどだと思います。 

ベビー用品を買うとき、どんな想像をしましたか。

そのイメージする、というのが防災対策にも重要なのですが、問題はイメージするためには知識や経験が必要という点です。料理や子育ては「必須」なことですから、コンテンツも豊富で、本やネット・口コミなどで調べたり比較検討したりといった「学習」を自然にされていることでしょう。

災害や防災については必要とは感じつつも、ベビー用品に比べたら優先順位はずいぶん後回しですし、それが普通です。いつ起こるか分からないことより、今日明日の授乳やおむつ、日々の暮らしが優先です。いちいち考えたり調べたりしている余裕がありません。

ネットの情報もその辺はよく分かっていて「専門家が選ぶ防災グッズ10選!」とか「災害時にこれがあってよかったベスト3」とか、イメージ不要の情報がたくさんあります。ただ、いくら記事を読んでも何かピンと来なかったり、結局どうすれば良いのか分からなくなったりします。

子育て経験者・当事者として、パパママの皆さんの日常が大変お忙しいことはよく分かります。だからこそ、60分、90分でも良いので(小学生以上ならお子さんも一緒に)自分や家族の状況に合わせた防災を想像する、考える時間を作っていただき、ぜひ「順を追った」備えをしていただきたいです。

まずは自宅や子どもの居場所の「危険=ハザード」を知ること

具体的に何からイメージしたら良いのか、というとまずはご自宅やお子さんが通う保育園・幼稚園や小学校等の災害による危険を知ることです。講座では以下のサイトをご紹介しています。

◯ 東京都被害想定マップ(震度、津波浸水深、液状化等)
◯ 地震に関する危険度調査(総合危険度ランク等)
◯ 重ねるハザードマップ(水害浸水深、土砂災害等)

首都直下地震では都内、特に23区内のほとんどの地域で震度6弱以上が想定されています。また、江東5区(墨田区・江東区・足立区・葛飾区・江戸川区)では大規模水害によって浸水する可能性がある区域に約250万人が居住するなど、水害への備えが不可欠な地域となります。

参考:江東5区大規模水害広域避難計画について|江東区

地震の揺れ、火災、液状化、水害など災害による被害の特徴、停電・断水などの影響が分かれば、備えや対応の方向性が見えてきます。避難所に行くか、在宅避難するか、車を使うか、実家や親戚のところへ行くか…など。

子育てで例えるなら「月齢・年齢」くらい大事な情報です。まずそれを意識しないと始まらない、というのが「危険を知る」ということです。

次に「その時どうするか」を子どもの年齢で考える

どんな危険が起きるかを知ったら、次は「その時どうするか」です。これは多少の個人差はあれ、子どもの年齢によって変わってきます。

0歳~3歳くらいまでは保護者(パパママまたは保育士さん等)が確実に保護する必要があります。地震であれば、揺れた瞬間、子どもの頭や身体を保護するようにかぶさる、布団やクッションなどで守るなどの対応が必要です。

4~5歳くらいになってくると、保護者の指示で安全行動(ダンゴムシのポーズ、机の下に入る)などもできるようになってきますが、その分、保護者も的確な指示が必要になります。「地震だよ!地震、地震!」みたいな声かけをしても子どもはどうしたらいいか分かりません。「しゃがんでじっとして!」とか「机の下に入って!」など具体的な声かけが必要です。

カードゲームで遊びながら学ぶ方法も

筆者は保育園での防災教育や、防災イベント等では写真のようなカードを使い、遊びながら災害時の行動を学べるような工夫もしています。一部講座では保護者の方や子どもたちと一緒に体験してもらっています。

また、仕事中など子どもと離れている場合は「帰宅困難対策」も必要です。 帰宅困難者対策|東京都防災ホームページ  には詳しいリーフレット等が紹介されていますが、講座では

◯ 東京都防災マップ(ルート検索、施設検索等)

の紹介をしています。例えば指定地点から自宅や子どもがいる園や学校までの距離やルートを検索したり、途中にある避難所や帰宅支援ステーション等を検索できます。職場と自宅等の距離が20km以上ある場合は、徒歩による帰宅は困難となる可能性が高いため、ご家族や親戚とお迎え対応などを検討しておく必要があります。

子どもの”いつもの暮らし”を止めないように「準備(備蓄)」する

ここまで来てようやく「何を準備するか」です。何が危険か分からず、災害が起きたときどうするかも分からない、という状況では備蓄以前に子どもの命、自分の命を守ることもままならないかもしれません。繰り返しになりますが備えには「順番」が大切です。

いくつかのポイントに分けて紹介します。

何を準備するかは「朝起きてから使ったもの」で我慢できないものから

皆さんは朝起きてから、この記事を読むまでの間に何を使いましたか。スマホ、時計、水、トイレ、せっけん、タオル、コンタクトレンズ、冷蔵庫、飲み物…など。女性であれば生理用品、化粧品などもありますし、子どものおむつやミルク、離乳食などもあります。何かに書き出してみると良いでしょう。

その上で「これが無かったら困る、我慢できない!」というものに印をつけていきます。それが「何を準備するか」で最優先する物です。防災の専門家や被災経験者が皆さんと全く同じ暮らしをしている訳ではありません。

重要なのは皆さんの、そして子どもの「暮らし」に合わせた備えをすることです。

筆者自宅や持ち出し用のグッズ例

例えば筆者家庭ではトイレや暑さ・寒さ、明かりなどは「ないと困る・我慢できない」と考え、携帯トイレやポータブル電源、ヘッドライト、携帯式冷蔵(冷凍)庫や保冷剤などは用意しています。

特に小さなお子さんがいる家庭では、エアコンが使えない場合の熱中症対策は重要です。子ども用の水・お茶などの水分、保冷剤(瞬間冷却材)、充電式扇風機等がありますが、酷暑では限界があります。子どもが小さいうちは、無理に被災地域に留まらず、移動が可能になった時点で一時的に広域避難(被災地域外への避難)することも想定しておきます。

どのくらい準備するかは「一週間、買い物に行かなくてもいい」くらい

よくあるご質問ですが、備蓄のボリューム感としては「一週間、買い物に行かなくてもいい」くらい、とお伝えしています。被害状況により一週間以上、物が手に入りにくいかもしれませんが、その間に次の対応を考える余裕が生まれます。前提として、自宅の耐震化や家具固定、浸水想定エリアなら2階以上への備蓄や防水対策等、冒頭の「危険」に応じた工夫は必要です。

筆者自宅の食事対策用品、一例

食事に関して言えば、一週間非常食を食べ続けるのではなく、冷蔵庫や棚の中にある食材・レトルト食品、乾物などを活用していきますが、写真のような備蓄があると便利です。衛生用品、日用品類も日頃からある程度のストックがあると思いますので、使ったらすぐに買い足す「ローリングストック」を意識してください。

なお、100円ショップでも災害時に役立つものを購入できます。「いつもの暮らし」で使うものも多いので、非常持ち出し袋や備蓄ケース等に一部入れておくと役立ちます。

100円ショップで買えるグッズ例、黄ラインがおすすめ

(参考)乳幼児家庭の非常用品例 ※わが家でも当時に準備

乳幼児家庭での備蓄品例について、わが家で実際に備えていた(一部は今でも備えています)ものをご紹介します。手帳類などは貴重品と一緒に管理し、紙おむつやおしりふきその他は「おむつポーチ(バッグ)」に数回分をセットしておきます。これは日常的にされているご家庭も多いと思います。

あとはすぐに取り出せる、持ち出せる非常持ち出し袋に1-2日分を想定した物をまとめ、3-7日分は折りたたみコンテナ等に入れてまとめて保管しておきます。

保護者の「ゆとり」が、子どもの”いつもの暮らし”を守る

講座では乳幼児の同席参加も可能なので、筆者が話している間も0~3歳の子どもたちが保護者の方とおもちゃで遊んだり、マイクスピーカーにつかまりたっちしたり、走り回ったりが普通にありました。ボールが転がってきて、話しながらボールで遊んだり、一緒に手品をしたりなんてこともあります。

「しずかに!とかおとなしくしてて!なんて気にしなくていいんです。声を出しても遊んでも問題ないです。彼・彼女たちにはそれが”いつもの暮らし”であって、僕がその暮らしにお邪魔する立場だし、保護者の方はその中で学び、考えることが大切なんです。」

もし子どもがうるさくして、周りの人の迷惑になったら、と考えたら「ゆとり」がなくなりますよね。それが続けば、子どもに厳しく当たってしまったり、その場を離れるしかなくなるかもしれません。また、携帯トイレや水、食事の備蓄が少なければ「明日からどうしよう…」という不安で「ゆとり」がなくなります。

それでも、子どもたちには”いつもの暮らし”が必要です。パパママ・保護者に優しく声をかけてもらい、おしゃべりして、好きなおもちゃで遊ぶことが”いつもの暮らし”なのです。今が被災しているかどうか、どれだけ大変なのかは、自分ではどうすることもできない子どもたちにとって、関係のないことです。

子どもに向き合うゆとりを作るために「備える」

「ゆとり」がなければ、いつものような笑顔で、優しい声で、子どもたちに関われません。どう備えるかは個人の自由ですが「誰のために、何のために、備えるか」は、小さな子どもの保護者の方はぜひ、この機会に考えていただきたいと思います。

まとめ 園や学校、保護者同士のつながりを大切に

災害は平等にやってきます。小さな子どもがいても、自然は配慮や気配りなどしてくれません。一方で、被害は平等にはなりません。起きる季節、時間、場所、備えの有無、知識・経験などでも大きく変わってきます。

だからこそ他の人とのつながり、支え合いが重要になります。例えば筆者の支援活動では、子どもの遊び支援・学習支援などがあります。数時間だけでも子どもが安心して遊べる空間・時間があることで、子どもはストレス解消に、保護者の方もその時間に自分のことができます。

支援者・支援団体がいなくても、園や学校、保護者同士のつながりでそうした時間・空間を作ることもできます。防災に関する講座やイベントを企画したりするのも、その練習と言えるでしょう。

小さなお子さんがいる家庭であれば、災害時の心配事は同じという方も多いはず。ぜひこの機会に、ご家庭の中で、あるいは日頃関わる先生・職員の方、知り合いのパパママ等とも一緒に、子どもの命や暮らしを守る防災について考えてみてください。

親子で防災イメージ

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