今回は「避難情報に”やさしい日本語を”」ということで、ご紹介します。
台風、大雨等で出される避難の警報や注意報に関する用語は難しく、日本人でもよく理解できないことがあります。弘前大学の佐藤先生を中心とするグループが研究している「やさしい日本語」がこんな時に役立ちます。佐藤先生とは数年前に千代田区で行われた帰宅困難者避難訓練における外国人支援訓練で、様々なアドバイスや資料をご提供いただいてからのお付き合いです。
今回、ブログで紹介することについても「ぜひご活用ください」ということで許可を得ましたので、一部を転載させていただきます。外国の方だけでなく、子どもたちに情報を伝えるときも活かせます。
周囲に「やさしい日本語」を必要とする方がいらっしゃれば、ぜひ参考にしてください。
洪水や浸水被害が起きそうなとき、起きたときに利用できる放送用案文
洪水や浸水被害が起きそうなときや起きたとき、外国人住民に伝える情報の放送用案文を用意しました。コミュニティFMや圏域AMラジオ、市町村役場や消防の広報車、防災無線などでの表現にお役立てください。
※文と文の間にある空白は、読む際のポーズ(区切り)表しています。ポーズは、語や文の理解に重要ですので、短いポーズを多く取るようにしてください。特に、文と文の間では長めに取ってください。
情報提供 | こちらは ●●です。 |
ラジオや テレビは いつも つけて ください。
テレビや ラジオを 消さないで ください。 | |
このまま ラジオを 聴いて ください。 | |
●●は、洪水・浸水について 新しい お知らせが
あるとき、すぐ 伝えます。 | |
注意喚起 | [ ]で 雨が たくさん 降りました。 |
川(海)の 近くに 住んでいる人は 気をつけて ください。 | |
家の 中に 水が 来るかもしれません。 | |
川(海)の 近くや 橋の 近くは 危険です。
川(海)の 近くや 橋の 近くに 行かないで ください。 | |
周辺注意 | 周りを よく 見て ください。
危ない ところに 行かないで ください。 |
避難指示 |
外は 危ないかもしれません。 外を よく 見てから 逃げて ください。 |
外が 安全なとき、外に 出て ください。 | |
避難するとき、歩いて ください。 逃げるとき、歩いて ください。 | |
道が とても 混みます。歩いて 逃げて ください。 | |
次のとき、避難して ください。
次のとき、逃げて ください。 | |
崖の 近くに いるとき、避難して ください。
山の 急な ところに いるとき、逃げて ください。 | |
市、警察、消防から お知らせが あったとき、避難して ください。市、警察、消防から お知らせが あったとき、逃げて ください。 | |
自分が 危ないと 思ったとき、避難して ください。自分が 危ないと 思ったとき、逃げて ください。 | |
避難するとき、気をつけることを 言います。逃げるとき、気をつけることを 言います。 | |
近くの人と 一緒に 避難して ください。
近くの人と 一緒に 逃げて ください。 | |
決められた 避難場所、安全な 建物に 避難して ください。
決められた 逃げる ところ、安全な 建物に 逃げて ください。 | |
避難場所が わからないときは、近くの人に 聞いて ください。
逃げる ところが わからないときは、近くの人に 聞いて ください。 | |
狭い 道、川の 近く、山の 急な ところに 行かないで ください。 | |
避難が 必要になった人は、警察、消防の お知らせを 聞いて ください。逃げるときは、警察、消防の お知らせを 聞いて ください。 | |
みんなと(で) 一緒に 避難して ください。
みんなと(で) 一緒に 逃げて ください。 | |
ケガに 気をつけて ください。 | |
危ない ところに 行かないで ください。 | |
今、[ ]に 避難勧告が 出ました。
[ ]に いる人は 避難して ください。 [ ]に いる人は 逃げて ください。 | |
避難場所は [ ]です。逃げる ところは [ ]
です。 | |
[ ]の 避難場所では、水・食べ物・毛布・情報などが もらえます。 |
やさしい日本語を「掲示物」にして分かりやすく
こちらの図は、弘前大学・佐藤先生の許可を得て、筆者が災害ボランティア講座等で使用する配布資料に掲載している掲示物の一例です。冒頭で触れた千代田区での外国人向け防災訓練でも、掲示物やイラストを使った案内を実施しました。
学校の授業等では、特定の文章を「やさしい日本語」に変える練習をしたり、ある情報を文字を使わずに伝える練習をしたりしています。掲載しているイラスト以外にも様々なパターンがありますので、詳しく知りたい方はお問い合わせフォームよりお知らせください。
誰にでも「やさしい」情報提供のために
やさしい日本語は日本語を母国語としない外国人向けに工夫されたものですが、それは誰にでもわかりやすい日本語、と言い換えることができます。難しい表現を伝わりやすい表現にする、イラストや写真を有効に活用することで、誰にでも「やさしい」情報提供になります。
港区国際防災ボランティア(港区)など自治体で外国人支援のボランティアを養成しているところもありますし、国際交流を行うNPOや施設などで、やさしい日本語や災害時の外国人支援に関する研修を行っている場合もあります。ぜひお住いの地域の情報を調べていただき、身近なところから取り組んでいただければと思います。