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災害支援・防災教育を仕事にする~ワカモノ防災がっこう2017講義より~

災害支援や防災を仕事にするとは...

 

2017年12月17日(日)、東京臨海広域防災公園・そなエリア東京を会場に『ワカモノ防災がっこう」が開催されました。イベント概要については、下記の記事をご覧ください。

本記事では同イベントのうち、担当部分を中心にご紹介します。

1限目 施設体験

施設体験では、防災体験学習施設「そなエリア東京」で首都直下地震発生後24時間を生き残る!をテーマとした施設体験が行われました。被災した街を再現したエリアを探索しながら、タブレット端末を用いたクイズ形式で生き残る術を学ぶことのできます。詳しくは、同施設のサイトをご覧ください。

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2限目 講義・演習「災害ボランティアと防災教育 仕事の流儀」

2限目は筆者が担当させていただきました。”対外的な”内容については、当日配布資料のデータをダウンロードできますので、下記をクリックしてご確認ください。

ただ、当日のお話はこちらに準じるのではなく、より「防災と仕事」ということについて筆者自身の状況も交えてご紹介させていただきました。大きな軸として3つの質問を中心にお話しました。

災害支援や防災は「仕事」になるのか?

まず、災害ボランティアや防災教育が「仕事」になるのかという点について。大まかな考え方については別記事でもご紹介していますのでそちらをご覧ください。

筆者自身、在学中から学生ボランティアとして活動してきましたが、大学3年頃、みんなが就職活動に向き合いはじめて感じたのは「(災害ボランティアや防災活動を)ここで終わらせてしまったら、一生後悔する」ということです。親にも相談し、就職浪人覚悟で卒業直前まで活動を続けました。

結果として、活動で関係していた現法人に正社員として採用されたのですが、こうした流れは極めて幸運なケースかもしれません。ただ「過去に実際にあった事例」であり「これからも起こり得る事例」であることは間違いありません。もし本当に災害ボランティアや防災教育を仕事にしたいというのであれば「チャンスが訪れるまで、諦めずに取り組み続けること」が重要であると言えます。

「ボランティア」や「防災」が仕事になるとき

ボランティア活動と仕事の一番の違いは何でしょうか。それは行動の結果に「お給料という対価が発生する」ことです。つまり、給与の支払者(組織・代表者)に対する責任が発生する、ということです。ボランティア活動はあくまで「自分がやりたいこと」ベースでできます。仕事はそうはいきません。会社・法人の利益につながるような結果を出すことが、従業員の責務です。

※なお本記事での「仕事」とはあくまで『会社・法人など雇用主・被雇用者関係が成立している中での業務』を指しています。個人事業主などは状況が違います。

「災害支援や防災に関心がある」、「活動に取り組んできた」のは大きなアピールポイントですが、雇用主が判断するのは「会社・法人の利益に貢献する人物であるかどうか」ということです。例えば、いくら被災地支援経験があり、防災に詳しかったとしても、書類をきちんと作れなかったり、指示を守れなかったり、遅刻欠勤が多いなど生活態度に問題があったりすれば、仕事を続けることはできません。

ほとんどの仕事は事務作業が伴いますから、これから活動をPRしたい人、面接で活かしたい人は、活動そのものだけでなく、その活動を行うにあたって必要な事務作業(裏方活動)もきちんとこなしたこと、任されたことは責任をもってやり遂げたことをしっかり伝えると良いかもしれません。少なくとも、筆者は採用基準のひとつにしています。

3つのスイッチを「ON」にしよう!

筆者がボランティアを仕事に変える際に入れた「3つのスイッチ」があります。

MISSION(理想とするもの)
VISION(具体的な計画・方法)
PASSION(努力や研鑽を惜しまぬ情熱)

「僕/私はこれをやってきました、これだけ頑張りました」というのは、どんなにスゴイことでも過去形にすぎません。雇用主からすれば組織の利益には何ら関係のないことで、多少のプラス評価になるくらいです。それよりも重要なのはもっと広い視点、長期的な視点を持つこと。

その「仕事」を通じてどういう社会や世界にしたいのかというミッション、具体的に組織や会社にどう貢献するのかというビジョン、そのために努力や研鑽を惜しまないというパッションが重要です。自分なりの言葉で「3つのスイッチ」をオンにして伝えることができれば、雇用主の心にも響くことでしょう。

ワークライフ・バランスや収入はどうなのか?

イベントを主催したコドモ・ワカモノ・まちingの星野代表はこんなことを伝えてくれました。

「選択に迷ったときは、どっちが(自分や家族にとって)ハッピーになるかで決めたらいい。」

素晴らしい言葉だと思います。ぜひ学生の皆さん(社会人もですが)は心に留めてください。前述のように筆者自身も自分がハッピーであるために活動を諦めなかったという点で共感します。

ワークライフ・バランスについて

特に災害支援系はかなり負担の大きい仕事を任されることもあります。何週間も被災地に入ったり、限られた予算で現地との調整をしたり。どんな業種であろうと、心身の不調につながるほどような仕事は好ましくありません(自分も家族もハッピーにはならないでしょう)。就職活動や面接をする際は、ワークライフバランス(残業や休暇のあり方など)を特に確認してください。

ボランティアだから、社会貢献だから、非営利だからといって、若い人の情熱や体力を無計画に使い、まともな休暇や給料を出さないというのは論外です。もし就職後にそうしたトラブルがあれば(ありそうなら)、労基署はもちろんですが、本ブログからお問い合わせいただいても結構です。力になります。

結婚・出産や育児にも積極的な方にとっては、仕事が割り振れるかどうかも重要です。共働き・子育て世帯になれば、長期出張や残業はなるべく避けたいところ。組織の中で代わりに行ってくれる人や、フォローしてくれる人がいるかどうか、許される環境なのか、将来的には考えていくことも必要になります。

収入について

収入面に関しては公開すべきことではありませんので控えますが、家族4人共働きなら、何とか生活できるかな、という感じです。「(2人の男児を育てる)家族のハッピー」のためには駅、コンビニ、病院、保健所、保育園、学校、スーパーなどが身近にないと困るので、将来的なことを考えるのも大事なポイントです。

筆者は「従業員」なので、雇用主・組織の方針に則って業務をこなし、許された範囲で個人の活動も行っています。所属法人には兼職規定があり、認められた仕事は「兼職」できます。兼職した際の収入は個人でもらうことができます(兼職に係る費用は全て個人持ちです)。

ボランティアに関わるのだから極端に低い給与でも、多少無理があってもよい、という考えは素晴らしいとは思いますが、現実的な負担は大きいはず。あまりに条件が厳しければ、普通に仕事をして、余暇の時間で活動するほうがずっと実り多い人生になります。妥協すべきこと、してはならないことを、自分で考えるだけでなく家族や友人とも相談してみましょう。

中長期的な需要はあるのか?

2017年現在、AIが各所で話題になっています。「◯◯年後にAIに仕事を奪われる!」みたいな話もよく聞きます。では、AIに災害支援や防災はできるでしょうか。できることもあれば、できないこともあります。

支援物資の流通、交通管理、災害情報分野、先端研究などはAIでもできる部分は多いでしょう。ただ、災害支援や防災は最終的には「人の手」によって行われます。被災や災害の個別性が極めて高く、また「人間関係」というどうにも曖昧な概念が『共助』という言葉になるように、データや計算ではうまく処理できないことも多々あります。

もちろん、自然災害がパッと消えてなくなることもありません。不定期とはいえ、災害は起こり続けます。相対的な関心の低下はあっても、防災に関する取り組みや仕事の需要はあり続けるでしょう。時代が変われば、技術が変われば仕事の範囲も広がります。災害ボランティアや防災を「仕事」にするチャンスはいくらでも、出てくると考えています。大事なのは、会社や法人、そしてその従業員が、チャンスを活かせるかどうかということです。

従って、ただ災害ボランティアや防災のことを追い回しているだけでなく、世界的な情勢や政治経済・金融への関心も重要になってきます。社会全体の情勢がどうなっていくか、その中で災害支援や防災はどう位置づけられるかを意識していれば、チャンスは見えてくると思います。

演習『社会課題を解決!イノベーション・ワークショップ』

データや計算に基づく取り組みはAIにかなわないかもしれませんが、人間には想像力や発想力があります。AIや情報技術が進歩すればするほど、そこでは解決できない「何か」が貴重な財産となります。

南海トラフ巨大地震の被害について紹介し「被害を最小限に抑える」ことのできるアイデアを考えてもらいました。アイデアは『某猫型ロボットのひみつどうぐ』という形式で考えてもらいました。

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これから想定される災害は、誰も想定していなかったような被害が起こる可能性があります。今まで通りで対応できることと、できないことがあるでしょう。温故知新、事例や教訓に学びながらも常に未来を見据えて行動していくこと。それが災害ボランティア、防災教育を仕事にするうえで大事なことだと考えています。

3限目 ワークショップ「世界でたった一つの防災プログラムづくり」

3限目はコドモ・ワカモノ・まちingの星野代表によるワークショップでした。これまで様々な防災ワークショップのアイデアを考案してきた星野さんから、子供たち向けの防災プログラムについてご紹介があり、その後実際に学生の皆さんが班でプログラム作りに挑戦しました。

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紙芝居や劇、体操など様々なアイデアが出されていました。「アイデア」は形になってこそ。ぜひ各学生団体の皆さんで実践してほしいなと思いました。

4限目 シンポジウム「日本の防災の未来は!?」

最後の時間は、参加した学生団体の代表者の方にそれぞれの活動を発表してもらった後、これからの防災についてのディスカッションを行いました。

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活動を通じて感じた日本の防災の課題についてそれぞれ登壇した学生からコメントや解決策についての意見があり、その意見のとりまとめをさせてもらいました。

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東日本大震災から時間が経つにつれて忘れ去られてしまい、今の子どもたちの教訓としてつながっていないこと。被災地の状況、経験が変わっていってしまうこと。学校教育に限界があること。命について考える機会がないこと。などが課題として挙がりました。それぞれ学生団体での活動や個人の経験を通じて、みんなでアイデアを出し合っていくことや、人と人との関係づくりなど、解決に向けた意見が出ていました。

イベントを通じて感じた「可能性」と「課題」

今回のイベントには様々な大学で活動している学生団体のメンバー、関心のある学生さんや若手社会人の方々が参加してくれました。災害支援や防災が「学生団体」という組織的な活動に広がっているのは、今後の「可能性」という点でよい動きだと感じました。

一方で彼らが卒業後の社会で受け皿があるかどうか、というと「課題」があると思いました。ほとんどの学生は卒業と同時に活動も辞めざるを得ないのげ現状です。学生時代の経験が、社会に反映されにくいのです。かといって「じゃあ地域で活動し続ければばいい」というわけにもいきません。

ワカモノのライフステージを考えれば「社会人として働く」、「結婚・出産」、「育児」、場合によっては「介護」など様々な場面があります。まずはそうした個人的なことがきちんと行われてこその地域での関わりです。

これまで取り組まれてきた「地域防災活動」、「学校での防災教育」、「大学生による活動」の次のステップとしては『(あらゆる)会社・法人における働きながらの防災』が重要ではないかと考えています。

小中高校での防災教育、大学生としての幅広い活動、そして地域での防災活動。その間をつなぐ「何か」が必要であると思っています。すぐにはパッと出てきませんが、これからも引き続き防災教育や大学生の活動に関わりながら、探っていきます。

長文最後までありがとうございました。

特別支援学校で福祉避難所対応を想定した講義演習|日野市

2017年活動実績

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