体験から得られるものを大切にして
茨城県内の特別支援学校で、PTA研修会を担当させていただきました。最初ご依頼いただいた際は「防災教育に関する講演会」ということでしたが、やりとりをさせていただくうちに「なるべく実践的に体験しながら理解できるほうがよい」ということでテーマを『障がいと共に発災一週間後を生き抜く!』として体験型の研修会を行うことにしました。
参加対象者はPTAのみの予定でしたが「せっかくの機会だから、参加できそうな児童生徒はなるべく参加してもらいたい」とお伝えして、親子連れでご参加いただきました。また、実際の避難行動(自宅or最寄り避難所から特別支援学校への避難)を想定して、非常持出袋などを持ち込んでいただくこともお願いしてお持ちいただきました。
知的障がいを中心とする児童生徒が多いため、担当の先生も保護者の方も「研修会に参加するのは厳しいのでは…」というご心配もあったようですが「少しでも実際に近い場面で、体験から得られるものを大切にしてほしいです。落ち着いて話を聞けなかったり、作業ができなくても、それ自体がひとつの体験です。まったく問題ありません。本人に負担がない範囲で参加してください」と予めお伝えしました。
震災の教訓と学校、個人・家庭の備え
冒頭に東日本大震災と熊本地震での特別支援学校の対応についてご紹介しました。学校そのものが被害を受けて機能しなかったこと。避難所としては指定されていなかったものの、校長の判断で高齢者を中心に避難者を受け入れたこと。それが地域との絆につながったこと。近隣の支援学校教職員の応援派遣が心強かったこと。子どもたちが最初は頑張っていたけれど、一週間ほどで限界が来てしまったこと。救援物資や流動食などの入手、子どものパニックなどで保護者が大変な苦労をしたこと。
こうした課題を踏まえて、障がいと共に一週間を生き抜くにはまず保護者自身が一週間をゆとりをもって生き抜けるような備えが必要であること、などをご紹介しました。また、特別支援学校での備蓄品についても、保護者の方々にお見せするのは初めてということでしたので、会場で展示・紹介しました。
学校の備え
学校で用意されている備蓄品はこちら。食事やトイレ、投光器など。この他にも後述する段ボール間仕切りセットなどが用意されています。
個人の備え
個人・家庭の備えについては下記の記事をベースとした新たなテキストを用いてご紹介しました。詳しくはまた改めて。
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また、筆者自身が日常的に携帯しているグッズについてもご紹介しました。A3サイズにまとめてリュックの背側に収納しています。それなりに重くかさばりますが「何があっても(子どもたちのお迎えのため)保育園までは辿り着く」ために必要なものを選んでいます。目的のための手段としてのグッズですので、多少重くてもお大きくても何ら負担になりません(慣れてしまえば気にもならないです)。誰にでもオススメできる備えではありませんが、参考まで。
トイレ、食事と水分、ゆっくり休める場所の確保
講義・展示紹介の後は実際に体験です。体験は主にトイレ、食事と水分、ゆっくり休める場所(安心して寝られるくらい)の確保をテーマに行いました。学校で用意している段ボール間仕切りセットを工夫したり、ビニール袋と新聞紙を携帯トイレの代用にしたり。非常食は保温材を使った温かいものを学校から供出してもらい、みんなで試食しました。
ある児童は、ブルーシートで囲われた場所が落ち着くといって秘密基地のような就寝スペースを作っていました。ただ、別の児童は「こわい!」といってオープン型のスペースをつくっていました。個性・特性によって備えや対応が異なることを、保護者の方も体験的に感じられる場面でした。
障がいと共に生きる人たちが参加しやすい訓練や研修を
保護者の方々のお話を聞くと「子どもたちと参加できる防災訓練や講演会がほとんどない」ということが分かります。今回も、こちらから提案するまでは児童生徒が一緒に参加するということは想定されていなかったようです。ですが、こうした訓練や研修の機会は障がいと共に生きるからこそ、必要な面もあります。地域で行われる訓練や研修に参加が難しければ、自分たちで企画してチャレンジしてみるのも良いと思います。
地域の方々や防災関係者の方々もぜひ、積極的に地域の特別支援学校や福祉施設の方々にお声がけいただき、双方負担のない範囲で訓練や研修を企画・実施していたただきたいです。本記事がその参考になれば幸いです。