被災のつらさ、身近な人ほど言えないことも~災害に負けない心とからだを支える~

 

ご家族や兄弟、友人、恋人、学校の先生、サークルやクラブ、趣味の仲間たち。もし皆さんに「この人には自分のつらさを打ち明けられる」あるいは「この人ならきっと自分につらさを打ち明けてくれる」という方がおられたら、その方々を思い浮かべながらご覧ください。

“被災”のレベル、心とからだの備えの大切さ

まずはじめに「被災体験の4つのレベル」についてご紹介します。”被災する”というと直接的な(個人的な)生命・財産への影響のイメージが強いのですが、直接被害を受けていなくても、映像や音声を見聞きしたり、お話を聞いたりすることが「恐怖心」につながることがあります。取引先が被害を受けた結果、経営に影響が出て残業など労働環境が厳しくなったり、冠婚葬祭など大事な予定ができないといったことも「生活の支障」として被災体験には含まれます。

便宜上「間接的な被災」と表現してはいますが、ポイントは間接的か直接かという問題ではなく

・り災証明書を発行された方
・避難所で生活している(た)方
・自分が被災していることを伝えられる方 など

だけが『被災している』わけではない、ということです。り災証明書を発行されていなくても、生命生活人生に大きな影響があるなら、被災体験に含まれます。

行政手続き上の客観的な『被災』と、個々人の主観的な『被災』は別の問題なのです。

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防災対策では「生命を守る」ことが最優先ですが、もし家屋・財産・生活に被害が出てしまったとしたら、その後どのように暮らしていくのか、あるいは人生を再建していくのかといったことについて備えておくことも重要になります。

心とからだの備えについて、特に「からだ」の面については下記の記事などもご参照ください。

[clink url=”https://kenyamiyazaki.sakura.ne.jp/blog/archives/1241″]

以下で「心」の面について触れていきます。

被災してつらい時、”身近な人”に相談できますか

特にご家族や友人など、物理的にも心理的にも距離が近い方、思い浮かべてください。いつもなら、気軽に相談したり、話し合ったりできるかもしれません。普段からあまり相談したりしない、という方も「この人がいてくれたら安心する」という方でもかまいません。自然災害は、ある特定の地域に大きな被害をもたらします。皆さんが心に傷を負うような、あるいは悩み苦しくなるような被害が出たとしたら、ご家族や友人も同様に被害を受けている可能性が高いのです。

物理的にも心理的にも距離が近ければ、表情、言動、様々な情報からそのこと(相手も被災してつらい思いをしている)が分かる、分かってしまうこともあるでしょう。

何か話そうとしたら、とても疲れて見えた -
あの人も頑張っている、だから私も -
大切な人だから、心配させたくない -

災害時に限ったことではありませんが相手への想いがよぎって、言葉を飲み込んでしまう方もいるのではないでしょうか。

悲しいのは、相手もまた同じように想うこと

前項は自分の視点から相手の方を見たときのことです。では、今度は相手の方から自分を見てみましょう。ここでは読み手の皆さまを「あなた」と呼称します。あなたにとって大切な方は、あなた自身がその方にとって大切な人である場合がほとんどです。家族であれ友人であれ、そうした交流があるからこそ、支えになるものです。

では、相手の方はあなたに何でも打ち明けてくれるでしょうか -

いろいろな方と接してきて、お話を聞いて、何よりも悲しいと感じたのは、怒りや否定、諦めなど負の感情からではなく、愛情や思いやり、優しさ、配慮などから「お互いに伝えて欲しいと願いながらも、伝えられない、伝えたくない」と想っていることです。こんなに「優しくて悲しい」人間の感情は何と複雑なのだろう、と思いました。

相談する時のポイント、第三者が支援で果たす役割と注意点

どうすればこんな優しくも悲しい状態を乗り越え、あるいはサポートしていけるのでしょうか。そのポイントは、ボランティアをはじめとする「物理的にも心理的にも一線を引ける第三者の関わり」にあります。筆者自身の経験から「誰かに相談したい時のポイント」は別記事にまとめていますので、そちらをご覧ください。相談援助演習でのワークシートや、大学生に実施した際のアンケートなども紹介しています。

[clink url=”https://kenyamiyazaki.sakura.ne.jp/blog/archives/1700″]

ボランティアや養護教諭、社会福祉関係者など、第三者として支援に関わる場合のポイントを2点、ご紹介します。

事情を知らない、すぐいなくなる人の役割

このように書くと何だか頼りなく思われるかもしれませんが、こう考えてみましょう。「事情をよく知っていて、長く(1週間~数ヶ月以上)関わり続ける人」がいたとします。カウンセリングなど長期的な心のケアでは変化を知ることも必要なので、重要な役割です。ただ、被災された方やその親しい方にとって、事情を知っている人が長く側にいるというのは、安心とイコールではありません。大事な事柄であればあるほど「ほかの人や関係者に伝わるのではないか」「迷惑や手間をかけてしまうのではないか」という不安も残ります。その不安を払拭しながら、信頼関係を築き支えていくのが専門的な支援のできる方々の役割です。

では、その日だけのボランティアには何もできないのでしょうか。筆者はそんなことはないと思っています。

「心のケア」を目的としたボランティアは困難ですが、その日だけの片付け作業、避難所での聞き取り、サロン活動のお手伝いなどに来ているボランティアさんのほうが、本音を割り切って伝えられるときもあります。ふとした一言などが、生命や生活に関わるような深刻なことだと感じたら、ご本人の許可を得て専門家の支援につないだりすることもできます。★その日限りであろうとなかろうと、被災された方から知り得たことを許可なく誰彼構わず話したり公開してはいけません★

もし専門的な支援に携わられる方々は、こうした「一般ボランティア」の方々が得られるちょっとした言葉などにも、耳を傾けていただければ幸いです。

支援が必要な方との関わり方を知っておく

社会福祉における相談援助の基本原則として有名な「バイステックの7原則」があります。ただ、個人的にはこれは対人援助の場面だけでなく、身近な人、大切な人との関わり方でも大事ではないかなと思っています。普段から身近な人などへの接し方でも心がけていただくと、いざという時にも落ち着いて向き合うことができます。

関わり方には様々な視点や意見がありますが、原則を知るという意味では役立ちます。

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どうすべきかを決めるのは自分自身

前述のバイステックの7原則にもありますが「自己決定」というのは大事なポイントです。

被災のつらさ、苦しさ、悲しさを身近な人に打ち明けるべきか ー
専門家にきちんと相談するべきか ー

これからどうすべきかを決めるのは、自分自身である必要があります。周りがたとえ善意であったとしても「こうしたほうがよい」、「こうすべき」といったことを伝えれば、その言葉自体が負担になってしまうこともあります。ですから、本記事でもあまり具体的にどうすべきということは申し上げられませんが…あえて参考までに申し上げるとしたら

もしご自身や身近な人も被災していたら

相手に心配をかけたくない、あるいは負担をかけてしまうのではという想いもあるかもしれませんが、辛いことや悲しいことも共有したほうが乗り越えやすくなると思います。よく言われる「喜びは倍に、悲しみは半分に」です。もちろん、様々な事情があると思いますので、どうしても身近な人に相談しづらければ、第三者の力を借りてください。

もし第三者として支援に関わるとしたら

長期的な心のケアについては専門家や組織的な支援により行われます。個人として何か関わりたい、という場合はそうした専門的な支援のなかで指示に従って行動していただく形になります。また、心のケアを目的としていなくても、被災された方と関わっていればふとした時に打ち明けられたり、相談をされたりすることもあります。その場合はいち個人として受け応えし、重要・深刻な内容だと思った場合はご本人の許可も得て専門的な支援へつないでください。

まとめ

自分の気持を言葉にして伝えるというのは、簡単なように見えて難しいものです。特にお互いつらい状況にあることが分かっていればなおさらです。別記事でもご紹介しているような『事実→考え→気持ち』というような伝え方を普段から意識しておくと、困った時に相談しやすくなります。本記事が皆さまの心とからだを支える一助となれば幸いです。

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