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都立高校の防災講話、命と向き合うために

都立高校の防災講話、命と向き合うために

『おかあさんが一生けんめい生んでくれたから、自分の命は本当に大切だと思ったから、災害で命を落とさないように日頃からそなえようと思った(原文ママ)』

これは、都立高校で実施した防災講話の振り返りシートの自由意見にあった生徒の言葉です。高校生にしては拙い文章かな、と感じるかもしれませんが、それは関係ありません。ここで紹介したのは僕が一番伝えたかったことが、しっかりと伝わったことが感じられる言葉だったからです。

僕はご縁があって、いろいろな都立高校で防災講話を担当させていただいています。どのようなことを意識してお話し、その結果生徒がどのようなことを感じているのか、ご紹介します。

「防災意識を高める」講話とは

私たちは「生きる」ということ、「いのち」があるということを、日々自覚して生活することはありません。それは「当たり前」のことであり、明日も明後日も「当たり前」であり続けるからです。ですが、生きること、死ぬこと、いのちそのものに対する無自覚を放置してしまうと、やがて無関心に、そして自分や周りの命の軽視につながります。

これまで、様々な子どもたち、大人たちへの防災教育・訓練で感じたのは「防災、特に防災活動に関心を持って取り組む人の多くは、自分や家族、地域、身近な人達への命に対して強い関心と興味を持っている」ということです。例外的な人もいるかもしれませんが、ほとんどは当てはまると思います。そうした経験から、次のように考えました。

“防災活動への関心、防災意識とは、命への関心や意識ではないか。災害から命を守るというのが防災の目的であるならば、守るべき命に対する理解や関心をなくしては、あるべき防災の姿が見えないのではないか”

講義内容・構成例

主な講義内容、構成例は下記のとおりです。毎年毎校、多少のアレンジは加えています(全校生徒を対象にした講話を2~3年続けて行う場合など)。

災害の教訓と自助・共助・公助

都立高校の場合は、関東大震災まで遡り、主要な地震災害や風水害についての特徴、繰り返される自然災害の教訓から「生きる知恵」である自助・共助・公助について説明します。ただ「災害は怖い」ということだけでなく、自然から得られるものも多いことも伝えます。一方「自然は恵みも多い」という言葉は、被災した方にとっては受け入れがたい場合もあります。被災された方の言葉などを映像等を通じて「被災する」、「大切なものを失う」というのがどういうことかを伝えます。

首都圏で想定される災害

首都圏で想定される災害について、映像資料を使用しながら説明します。中心となるのは『都心南部直下地震(首都直下地震』と『風水害』についてです。地震については火災や家屋倒壊等を想定したイメージ映像と、中央防災会議の発表に基づく被害想定の紹介、風水害については気象庁や国交省の映像資料と、該当学校周辺の洪水ハザードマップなどを用いて説明します。

災害発生、その時どうしたか

災害救援ボランティア推進委員会が企画し、東京都教育庁が製作した映像教材『助け合う防災教育~学校・家庭・地域のつながりをつくる~』の一部を使用しながら、東日本大震災発災当時の中学生の行動、事前の防災教育事例などについて説明し、日頃からの備えの大切さを伝えます。かんたんな手遊びなども入れて、備えの大切さが体感的に分かるように工夫します。映像教材についてはご依頼・ご相談new_naibuフォームからお気軽にお問合せください。

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防災対策で大事なポイント

備えについての関心を高めてから「大事なポイント」を解説します。あれもこれもと伝えるのではなく、どんな環境(家庭環境や生活環境等に関わらず)でも有効な防災対策について紹介します。具体的には次の5つ(時間がある場合は6つ)です。

  1. 安全行動で身を守る
  2. 災害情報で身を守る
  3. 避難生活に備える
  4. トイレに備える
  5. 心のケアとストレスに備える
  6. 生活を再建する<50分以内の場合は省略>

内容の一部は下記の記事でもご紹介しています。

君にもできる災害ボランティア

必要な備えについて理解を促したら、最後に災害ボランティア活動について紹介します。ここで紹介する活動は「自分が被災していても」できる活動を挙げています。

都立高校の場合、都立大島高校での高校生によるボランティア活動、筆者が経験した被災地で出会った高校生の活動などから、具体的な活動のポイントなどをご紹介します。活動例は次の6つを挙げています。

体力に自信があれば片付け、子供と遊んだり掃除などが得意なら避難所の手伝い、お話をしたり聞いたりするのが好きならお茶会や足湯、何かを作ったり描いたりするのが得意ならイベントや炊き出しなど、自分の個性や特技に合せて「できることを、できる範囲で」行うことの大切さを伝えます。

  1. 片付け、清掃活動
  2. お茶会、サロン活動
  3. 炊き出しサポート
  4. イベントのお手伝い
  5. 避難所運営のお手伝い
  6. 足湯活動

もちろん、これらは「自分や家族に無理がない」ということが前提ですので、こうした活動ができるようになるためにも、普段からきちんと備えておくことの大切さを改めて伝えます。

“忘災”から”防災”へ

最後に、阪神・淡路大震災で被災された方の様子などをご紹介し、改めて備えることの大切さを伝えます。一方で、いかに人が、そして社会全体が防災について忘れやすいかということも伝えます。同じ被害を、これ以上繰り返さないためには「忘災」を「防災」へ変えていかなければいけないこと、そのためには「自分にとって守るべき大切なものは何か」をよく考えてみることなどを伝え、まとめとします。

講話で理解すること、後から身に付けられること

もちろん、災害や防災の知識、技術の習得は重要です。ですが、知識や技術はいくらでも後から身に付けさせることができるものです。特に技術(地震や火災発生時の安全行動など)について言えば、半ば強制的にでもやらせれば身に付けさせることができるのです。一方、自分や大切な人の「命への関心・理解」は誰かに身に付けさせてもらうものではありません。何らかのきっかけで自分で気付き、そして考えなければいけないことです。

そして、防災講話の大切な役割のひとつが、その「きっかけ」づくりではないかと考えています。限られた時間でも「守るべき命や生活、人生への関心」を身に付けてもらう、そのための工夫、努力はできます。

大切なメッセージを、ごまかさずに伝える

私たちは、災害や事件事故のニュースを通じて、ご遺族の悲しみや怒りに日常的に触れています。あまりにもそれが日常的すぎて「それが自分の身に起きたなら」と考えることができなくなっているのかもしれません。

災害や事故による犠牲者の方が、そしてそのご遺族が、私たちにその悲しみを繰り返してはいけないと伝えてくださっているのに、受け止めることができていないのかもしれません。本当に大切なメッセージをごまかさずに伝えることが重要だと考えています。

『災害を忘れてしまうことは悪いことではありません。みんな、忘れていきます。でも、災害で大切な人を失った人は、決してそれを忘れない、ということは忘れちゃいけない。災害や防災そのものに関心がなくたっていい。周りの大人だって、関心のある人は多くはないのだから。例え周りが防災に関心がなくても、みんなの、そして大切な人の命についてはいつだって関心を持ち、そして大切にしてほしい。本当に怖いのは、災害そのものでも、みんなが災害や防災に無関心なことでもありません。みんなが、自分や大切な人の命に対して、無関心になってしまうことです。防災とは訓練や勉強することだけを指すのではありません。防災とは、みんなの、そしてひとりひとりの命について関心を持つということです。今日は、そのためのお話です。』

生徒に、防災と命についてのメッセージは伝わるか

下記に、防災講話の事後評価シート集計と、生徒の感想を掲載します。スライドシェアで閲覧できます。ほんの1時間のお話ですが、彼らの反応、言葉は「適切なきっかけさえあれば、誰もが命や災害に対して向き合えるのだ」ということを感じさせてくれます。

これまでにおよそ8,000名分のシートを集計していますが、小中学生に比べるとやや高校生はポイントが低い傾向はあるものの7割~8割の生徒が、講義や体験内容について肯定的に受け止め、具体的な行動をしようと考えていることが分かります。

 

 

中学生、高校生に対して、防災や命のことを伝えたいと思っている方の参考になれば幸いです。現在、こうした講義や講話、授業の際の伝え方のポイントなどについての記事を作成中です。今月~来月中旬頃までに公開できればと考えています。

NHKラジオ「阪神・淡路大震災から16年〜若者の力で地域をどう守るか」まとめ(2011.1.17)

法政大学チーム・オレンジ企画「要援護者体験(11/29)」「応急処置体験(12/13)」

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