今回は災害時の避難所における【運営】ルールと【生活】ルールについてご紹介します。学校や避難所運営協議会などでのマニュアルづくりや、避難所運営ゲーム実施時のまとめなどに役立てば幸いです。
避難所・避難場所・緊急避難場所等のちがい
避難所とは一般的な言葉にすれば「災害等で普段通りの生活ができない時に、一時的な生活環境を提供するところ」です。ただ、避難所と避難場所、緊急避難場所といった言葉の意味を理解しているかいないかは、特に津波・土砂災害、水害の想定区域にお住まいの方にはとても大切なポイントですので、下記文科省の資料をご確認ください。
▶ 文部科学省資料「緊急避難場所」と「避難所」について[PDF]
避難所の【運営】ルールと【生活】ルール
避難所は不特定多数の方々との共同生活が基本ですが、被災の程度や個人の背景は様々です。ある人にとって都合の良いことが、ある人にとっては都合が悪い、ということは日常でもよくあることです。平時ならばいくらでも逃げ道がありますが、災害時、ましてや共同生活となれば逃げ道なし。放置すれば、毎日毎時間どこかでイザコザが起きてしまいます。そうしたトラブルをできる限り未然に防ぐために決めるのが「ルール」でありマナーです。
ルールを作る時は、大きく次の二本立てで考える必要があります。
事前にしっかりと決めておく【運営】のためのルールの例
- 避難する時のルール(車やペット)
- 場所の割り振り、立ち入り禁止区域
- 入所退所その他の届け出
- 意見の出し方応え方
- 遺体安置 等
避難生活の中で、柔軟に決めていく【生活】ルールの例
- 設備の利用について
- 生活時間について
- 清掃等の当番について
- 食事、配給について 等
避難所の【運営】ルールと【生活】ルール
さて、僕が講評した自治会の方によるルールをひとつご紹介します。
このルールは「避難者に見ていただく」前提で考えたそうです。…何か違和感を感じませんか。これらはどれも「運営側の」ルールです。元々そういう話し合いなら構いませんが、避難者向け、つまり「生活ルール」ではありません。もちろん、運営ルールとして重要ではあるのですが、一般の避難者の方が見ても「???」となってしまいますね。もしこの「運営側」ルールを生活ルールに落とし込むと、次のようになります。
男女のリーダーを具体的に示す
この避難所のリーダー(責任者)は ●●●●(★★町会会長)です(サブリーダー、女性リーダーは ●●●● です)。●●や●●(主に生活ルール関係)については、リーダーの指示には従ってください。など
■解説■
避難者として知りたいのは「誰が責任者(決定権を持つ人)なのか」ということです。厳密には施設管理者(公民館長、学校長等)になりますが、自治の範囲においてのリーダ-、ということで示します。リーダーを示した上で「リーダーの指示に従う」という「ルール」にします。また、リーダーは行政や福祉関係者とのコミュニケーションを綿密に行い、リーダー、サブリーダーで判断できないことや分からないことを、該当する関係者につなぐ役割もあります。
スペースの目的や利用対象者をわかりやすく示す
=●●●●は女性専用(男性専用)スペースです。
=★★★★は乳幼児・保護者専用スペースです。※授乳室は女性保護者専用スペースです。
=▲▲▲▲禁煙・喫煙可能です。 等(できれば間取り図等で場所を表示する)
■解説■
「スペースがあるかないか」はもちろんですが「どこにそれがあるのか」も大事です。文章だけの場合はなるべく具体的に場所や利用時間を明記します。
トイレの使用ルールは予め掲示物を用意
=トイレは●●階と●●階です(間取り図で表示)使用時間は原則として●●時~●●時です。(清掃時間は●●時~●●時です) 等
運営側も被災者、できるかぎり負担を抑える
避難所を運営・管理する側が、できるだけ事前に決めておくルールが「運営ルール」。避難所にきた避難者に、よりよい生活環境を提供するために守ってもらうのが「生活ルール」。と考えれば分かりやすいです。
どちらにも関わるルールもありますので一概に整理することはできませんが、学校や公共施設が避難所になった場合のルールを考える際はこの2つを意識しながら検討することで、ルールが分かりやすい・伝わりやすい=いくらかでも生活しやすい避難所に近づけることができます。より詳しいルール例等については こちら からお問い合わせください。
災害が起きる前に、事前に決められることは決めておくことで、避難者、運営側双方の負担を少しでも小さくすることが求められます。