「災害を考えるつどい」で考える”災害から守りたいものは何か”

本日は埼玉県富士見市で、社会福祉協議会(以下「社協」)主催『災害を考えるつどい』が開催されました。以前にふじみ野市社協さんによる同様のイベントで講演とコーディネーターをさせていただいたことがあり、そこに富士見市社協のご担当者の方もいらっしゃって、というご縁です。さらにイベント後半に行われた報告会では、先だってフォローアップ講座を担当させていただいたReVA復興支援ボランティアチーム上尾の皆さんも登壇されました。イベント報告は下記のfacebookページにも記事が掲載されています。

◯ 富士見市ボランティアセンター(うさみんクラブ)facebookページ【2016.3.5投稿記事に掲載】

本記事では、講演の冒頭でお話させていただいた「あなたが災害から守りたいものは何ですか?」という質問を中心に、ご紹介します。

目次

「災害を考えるつどい」の構成と課題

つどいは大きく三部構成で行われました。第一部に僕が講演を担当しました。第二部で東日本大震災の支援に関する映像を視聴、第三部でテーマごとの報告と質疑という構成です。社協さんによるこうした災害ボランティアや防災に関するイベントは、東日本大震災以降、さらに積極的に各地で行われている印象を受けます。今回のような「~集い」は、災害ボランティア活動も地域防災もどちらも組み込むので、その点では市民の参加を得やすい構成だと思います。実際に今回の集いでもかなりの人数(ざっと見て6~70名くらい)が参加されていました。

ただ、どうしても参加者の年齢構成が高齢化してしまう印象は否めません。後述しますが、中学生・高校生・大学生など若者による発表や報告をうまく取り入れていくと、こうした課題解決の糸口になりそうです。

講演テーマと内容

まず僕の講演テーマですが「被災者の生活再建に向けた支援のあり方~災害ボランティアセンターの役割~」です。ポイントを下記にいくつかまとめました。なお、当日は聴覚や視覚に障がいをお持ちの方も参加されており、手話同時通訳、要約筆記や磁気誘導ループ(ヒヤリングループ)などのサポートも行われました。過去にも何度か経験があるので、いつもより少しペースを落とす、要約筆記しやすいようにキーワードを強調するなどの工夫をしました。

あなたが「災害から守りたいもの」は何ですか?

まずはじめにこの問いかけから。皆さんなら何を思い浮かべますか。そして、その理由は何でしょうか。

何としても守りたいものを失ったとき、今と同じ生活はできますか。できないとしたら、その先どう生きたいですか。あるいは、どうなりたいですか。そんな答えの出ない、出せない問いと向き合い続けるのが被災するということではないかと、僕はこれまでの経験から考えています。

「つらくて、くやしくて、たまらない」というあらゆる被災地の、あらゆる被災された方の言葉を、文字面ではなく心で受けとめること、災害を被害の数字やメディアの報道ではなく、そこで生きる人のいのちの問題として受けとめること。それが災害ボランティアとしての最低限の心構えであり、またそれを伝えていくという意味も含めて、大事な役割のひとつです。

生活再建と災害ボランティア

次に大切なのは「災害支援、ボランティアの到達点はどこにあるか」を意識することです。はっきり言えば「ボランティアはどこまでやるのか」を考えることです。ボランティア活動には様々な活動がありますが、それら全ては「過程」なのです。ボランティアからすると、”活動することそのもの”が「目的」だと思えるかもしれません。ですが「誰のための、何のための支援なのか」を冷静に考えてみましょう。そして、支援活動を被災地の視点から見直してみましょう。

活動は、被災地、被災された方が目指すもの、到達点にいたるまでの途中経過に過ぎないということが分かります。その到達点こそ、個人としての生活再建、分かりやすく言えば、その人がその人らしく生きられるようになることなのです。生活再建に何が必要かは、阪神・淡路大震災の復興過程で調査結果が出ています。

すまい、そして人と人のつながりがいかに重要であるか分かります。すまいが再建(単に仮設や災害公営住宅に入る入らないではなく、自分らしく生きていける住まいという意味で)できて、自分らしさを感じられるコミュニティがあることです。このコミュニティとは地域のコミュニティだけを指すのではなく、学校や会社、友人関係なども含めた広義のコミュニティも含めていると考えられます。

いわゆる「ガレキ撤去」や「清掃」といった、緊急対応的なボランティア活動がその役割を終えてくると、こうしたコミュニティに関わるボランティアが求められます。それは「災害時」「被災地」だからというわけではなく【誰もが暮らしやすい社会・生活のためには安定したすまいと人と人とのつながりが必要】だからです。

「災害時に必要なことは、いつも必要なこと」。そう考えると災害ボランティア活動の捉え方も変わってくるのではないでしょうか。

失われた命や財産は、元には戻せない

こうした被災地、被災された方の「生活再建」に至るまでの過程を支えることが災害ボランティアや災害ボランティアセンターの大きな役割です。ただし「被災地、被災された方」のために、ということは避けることのできない大前提があります。

「失われた命、財産、時間があり、は元には戻せない」

ということです。冒頭の質問を思い出してみてください。形あるものは元通りにできるかもしれませんが、本当に大切なものは、目に見える形のあるものばかりとは限りません。本当に大切なものほど目には見えず、失われたら元には戻らないというものが多いはずです。だからこそ、どうしても守りたかったのではないでしょうか。災害ボランティアとして、被災された方々が本当に大切にしたいもの、したかったものに心を配ること。そのうえで、生活再建に向けたサポートを、継続的に続けていくことが必要です。

中学生による発表から

第三部の報告会では、自治会の方、聴覚障害をお持ちの方、中学生、災害ボランティア経験者とそれぞれの立場から防災やボランティアについてお話がありました。中学生からは「子供たちの世話など、自分たちにできることをやっていきたいし、それが大切なことだと思う」といった趣旨の発表がありました。

「やらなければならないから無理をしてでもやる」のではなく、「できることがあるから、できることをする」。ボランティアとしても、また防災においても、大切なことです。

まとめ 災害について考えるとは…

「災害について考える」とは、自然災害そのものや結果としての被害、防災についてを考えることだけを示すのではなく、その地域で生きる一人一人の命について考えることであり、何を守りたいのかを考えることです。そのためにどうすべきか、何から始めるべきかは、自分が何を守りたいのかをよく考えてみてからでも遅くはありません。

ぜひ、この機会に「私は災害から何を守りたいのか」について、考えていただければ幸いです。

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