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区民団体を対象に災害ボランティアワークショップ、被災者支援に”地域の力”を活かすためにできること

杉並区社会福祉協議会・杉並ボランティアセンター(以下「杉並ボラセン」)さん主催による災害ボランティアワークショップを担当させていただきました。本稿ではワークショップの内容や、全体進行を担当して気が付いたことなどをまとめています。杉並ボランティアセンターブログでも報告が掲載されていますが、非常に熱量・活気のあるワークショップになりました。

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市区町村で災害ボランティアセンターに関する業務を担当されている社協職員の方や住民の方、地域で活動されているボランティア団体(災害支援や防災に限らず)の方々等の参考になれば幸いです。

目次

実施の経緯

杉並区には、杉並ボラセンさん主催の「災害ボランティアセンタースタッフ養成講座」を受講された方々を中心とした区民による災害ボランティア団体「杉並災害ボランティアの会(以下「SSV」)」があります。社協が事務局となって区内の災害ボランティア・防災関係者が集まる”災害ボランティアネットワーク連絡会”に筆者も参加させていただいているのですが、SSVもこの連絡会のメンバーとなっています。

かねてより被災者支援…特に被害が長期化した場合の継続的な支援や日頃の備えに、区内で幅広く活躍されている様々な団体さんの力を活かすにはどうしたら良いか、という話題があり、今回SSVの皆さんのご協力も得て団体向けのワークショップを実施することになりました。

事前アンケートで団体の状況や課題を把握

実施に際しては一方的にならないよう、区内団体に対して丁寧なアンケート調査と分析が行われました。その結果、災害ボランティアセンターの認知度が低いことや、具体的な活動が想定できる団体がいる一方でどうしたらいいか分からないという団体も少なくないことが分かりました。

ワークショップや今後の取り組みについては、団体同士のつながりや具体的な災害時の活動を考える機会が欲しい、というご意見もありました。こうした調査を踏まえて、以下のポイントをふまえたワークショップの内容、進め方を考えました。

○ 災害ボランティアセンターの流れや仕組みの理解につながること
○ 災害時の団体による支援活動を、具体的にイメージできること
○ 平時からの備えやつながりの大切さを感じられること

杉並ボラセンさん、SSVの皆さんのご尽力によってしっかりと準備された大切なワークショップになります。参加される団体さんも意欲のある方々が多いと想定されていたので、中途半端な内容にならないよう試行錯誤しました。

ワークショップの内容と要点

ワークショップの具体的な内容についてご紹介します。ヒントになったのは(正確にはこちらのワークショップを念頭に置いていたのですが)、以下の記事で紹介した手法の団体への応用です。本稿ではこの手法を「テーマ別マッチング方式」と呼ぶことにします。

「テーマ別マッチング方式」とは

テーマ別マッチング方式とは、災害ボランティアセンター(以下「災害VC」)におけるマッチング(被災地域の困りごと/ニーズと、活動できるボランティアをつなぐこと)の仕組みを、ワークショップの手法に転用したものです。

ワークショップにおけるマッチング方式

実際の災害VCがそうであるように、必ずしも上記が全てではありません。自主的に選択しますので「特定の困りごとに多くの人が集まってしまう」、「誰にも選ばれない困りごとが生まれる」ということがあります。今回のワークショップでも同様のケースがありました。

そうした場合は「コーディネーター」の出番です。うまくマッチングできなかった「困りごと」と「ボランティア」を文字通り”調整”します。一番シンプルなのは以下のようにお声がけすることです。

こちらの困りごとにご協力いただける方(団体)はいませんか?

実際の場面でもワークショップでも、多くの場合はどなたか手を挙げてくれますので、その方とマッチングします。もちろん、それでも揃わない場合もありますが、その時は当日の活動、つまり話し合いのテーマから外れます。外れたテーマは必要に応じて講師からフォローします。

災害ボランティアや災害VCを理解するための「自発性」

杉並社協さんに限らず、どの社協も地域のボランティア団体がどのような活動をしているか、概ね把握されているかと思います。こんな面倒なことはせず「この困りごとならこの団体さんにお願いしよう」と直接、依頼をすることもできるでしょう。そのほうが実際でもワークショップでもスムーズかもしれません。

ですが、今回重視したのは活動…話し合いのテーマを自発的に選択するという過程を取り入れたことです。災害VCの仕組みを、あるいは災害ボランティアそのものについてご理解いただくためにも大事な過程だと考えています。

何ができそうかを考え自ら選択し、行動するということが、各テーマでの積極的な意見交換へとつながっています。

なぜ個人ではなく団体なのかを想定で説明

団体の活動を考慮した「分類別テーマ」の設定

話し合いのテーマはこれまで経験した被災地での課題をベースに、参加予定の団体の活動につながるような「困りごと」を大きく3つの分野(高齢者・障害者・子ども)で設定しました。今回の参加団体では該当する団体さんがいませんでしたが「ペット」に関する話題もテーマとして作成しています。

困りごと(話し合いテーマ)の例

困りごとは全部で6種類(ペットも含めると8種類)あり、参加団体はいずれかを選択して、困りごと別に班に分かれて話し合いを行います。

区内災害ボランティア団体によるファシリテート

とはいえ、災害支援に経験のない団体が多いわけですから、いきなりテーマについて話し合ってくださいといっても難しいかもしれません。そこで、前述したSSVの皆さんが各班に1名ずつ、ファシリテーターとして入ってくださいました。避難所や災害支援活動について、ある程度の知識や経験を持った方に入ってもらうことで、より具体的に話し合っていただけたように感じました。

SSVの皆さんにはこの場を借りて、改めて御礼申し上げます。

SSVの皆さんによるファシリテートで話し合いがスムーズに

まとめ ~広くゆるやかな”地域の力”は、都市型災害対応の要に~

“地域の力”というと、向こう三軒両隣、自治会・町内会単位といった限定的な範囲のイメージが強いものです。初動においてはそうした「ご近所」での地域の力が必要になることは間違いありません。もし、地震や風水害等によって甚大な被害が出てしまい、自治体や「ご近所」だけでは対応しきれないとなれば、災害VCが開設され、災害ボランティア活動がはじまります。

近年では災害ボランティアの募集範囲は被災地区町村、都道府県内など限定的で徐々に広くしていく傾向にあり、これは今後も同様でしょう。従って他の記事でもくり返し触れていますが、東京23区内など人口の多い都市部での災害では、被災される方も多い反面、少し離れた被害の小さい地域にもたくさんの人がいて、その人達の力を活かせるかどうかがポイントだと考えています。

「隣近所というほどではないけれど、散歩や自転車でもまぁまぁ行ける距離にいる人」、「その地域で普段からいろいろな活動をしている人」、「その地域で仕事をしている人」など、広くゆるやかな意味での”地域の力”が、都市型災害対応の要になるはずです。

今回のワークショップはスタートラインです。これからどのような取り組みにつながっていくのか、関心のある方はぜひ杉並社協・杉並ボラセンやSSVの活動をチェックしてみてください。

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