東久留米市社会福祉協議会(以下「社協」)主催の第3回『災害ボランティアセンター市民スタッフ養成講座』講師を担当させていただきました。同講座の第1回では、災害ボランティアセンター(以下「災害VC」)の基礎知識、様式についての解説などを行いました。第1回目の報告は下記になります。
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第2回目では実際に社協職員が中心となり、参加者がスタッフ役とボランティア役に分かれ、災害VC運営のロールプレイングと課題抽出のためのグループワークが行われました。社協では市民スタッフの方が関わる役割として「ニーズ・現場調査係」、「受付・説明係」、「マッチング係」、「送り出し係」、「活動報告係」の5つの係を想定しており、第2回目では「ニーズ・現場調査係」を除く4つの係についてのロールプレイング・グループワークが行われました。
- 名札があったほうがよい。
- ボランティア登録や活動報告などに記入例があると分かりやすい。
- 活動指示書の説明はしっかりと行ったほうがよい。
- ボランティア依頼票(ニーズ票)の内容が理解できない。
- 市外から来た方に向けて地図を掲示したほうがよい。
といった課題が、各係から挙げられていました。課題は予め参加者には送付されており、第3回目ではそれらの課題を具体的に解決するためのシミュレーションを行いました。冒頭に、3日目のポイントについて「全員が当事者であり、責任者となったつもりで、次回以降に課題を積み残さないようにする」という意識を持って取り組むことの大切さをお伝えしました。
実際の災害VC現場でも、毎日異なる課題が出てきます。「○○したほうがよい」、「(想定や情報があいまいで)○○が分からない」というのは訓練でもよく出てくる言葉です。意見や疑問は必要ですが、もっと必要なのは具体的な改善案や仮説に基づく考え方です。つまり「○○したほうがよい」という意見があれば、次回はそのようにやってみればいいですし、「○○が分からない」という疑問があれば「△△という状況なら、○○は◇◇ということになる」という考え方をもって、望むことが重要です。「何をどうすれば改善されるか、また分からないことにはどう向き合うか」を他人事ではなく、現場にいる当事者として真剣に向き合うことが、課題解決に向けた第一歩になります。
第2回目の状況を再現してもらい、各係で課題に対する具体的な解決策を検討してもらいました。名札をつくる、災害VC内の案内地図を掲示する、各係の場所を示す看板の位置を高くする(机に貼ると見えない)など、様々な解決策が提案されました。筆者からの指摘事項として、他社協のマニュアル等でも抜けがちで、かつ現場対応で実際に必要になってきたポイントをご紹介しました。以下にひとつ、ご紹介します。
ボランティアのマッチングが完了し、リーダーに活動指示書や地図を渡して説明し、現場に向かってもらいますが、ここで抜けてしまいがちなのが『どの活動に対してどのボランティアが行っているのか』という点です。活動指示書とボランティアが出発してしまえば、連絡をとる手段はリーダーの携帯に連絡、もしくは巡回しかありません。巡回できる人員と手段があれば構いませんが、基本的にはリーダーに電話するのが手っ取り早いと言えます。つまり、送り出す前にマッチングの調整結果を記録する『マッチング調整表』のようなものが必要だ、ということです。筆者が実際に台風で被害を受けたS市の災害VC運営に関わった際は、様式を作っていなかったので手書きで表を作成し、各活動とリーダー名(必要に応じメンバー)、緊急連絡先を記録してから送り出しました。後から追加で来たボランティアを派遣する場合などにも必要になります。マッチング係だけでなく、送り出し係やボランティア受付・説明係との共有し、連携することが重要です。
シミュレーションやロールプレイングと異なり、実際の状況は流動的なので「どんな場面でも最善手」という一手はありません。ですが、実際の場面でたくさんの課題に向き合っていけば「この場面で打ってはいけない悪手」は見えてきます。消去法で悪手を取り除いていけば、その時点での最善手に近づけることはできます。『自然災害』という難敵と戦うための「課題解決力」を養っていただく回となりました。