本日は埼玉県総合教育センター主催「災害につよい地域の輪づくり講座」で「学校・家庭・地域の繋がりをつくる〜命を守る学校防災〜」をテーマにお話をさせていただきました。
「繋がり」というのは便利な言葉で、連携とかネットワークとか、平時の備えとか、いろんなものが繋がりという一言でまとめられます。ただ、その本質は「目には見えない、だからこそ大切」という点にあります。そして、繋がりは一人では作れません。ひとりでは、誰とも手を繋ぐことはできないのです。誰かが隣にいてくれるから、はじめて手を差し出すか、差し出された手を握るかすることにより、手を繋ぐことができます。
地域・学校・家庭の繋がりも同じことが言えます。本当に手を繋ぎたいのであれば、自分から手を差し出すこと、差し出された手を握ることが必要になります。それは勇気のいることかもしれませんし、日々忙しい学校の先生方にとっては、負担が大きくなることも否定できません。
それでも、災害に強い・負けない地域になるために、お互いに助け合うために、子どもたちの命を災害から守るために、何が必要なのかをご紹介させていただきました。
防災における学校と地域の関係
一言で「防災」といっても、学校と地域では出発点や考え方が異なります。
まず、学校における防災は文部科学省や教育委員会等が示す「学校安全」の考え方が基本になります。つまり、学校である以上は自然災害だけでなく幅広く学校、児童生徒、そして教員の安全を守るための対策が求められるということです。自然災害対策はこの一環として取り組まれるものです。
具体的には【防災管理】と【防災教育】が挙げられます。詳しくは下記の記事をご覧ください)。
学校外の関係者、地域住民の方が学校へアプローチする時はまずこのことを理解しておかなければなりません。「学校は地域の防災拠点だ!地域防災に貢献するために何かすべきだ」というのは気持ちはあるかもしれませんが、あくまで「学校は学校」です。まず学校としてやらなければならないことがたくさんあります。
次に、地域は都道府県防災計画や市区町村地域防災計画に基づいて様々な防災対策が講じられます。防災訓練や自主防災活動も、原則としてこれらの計画に基づいて行われます。避難所対策などで学校の連携についても触れられていますがこれはあくまで「市区町村から見た災害時における学校」の考え方です。
学校関係者の方、教職員や管理職の方が地域にアプローチをする時は、この点に注意する必要があります。学校の防災力を高めるために地域の方の協力を得ることは重要ですが、そのためにはまず第一に「学校は地域(市区町村)からどんなことを期待されているか」ということを把握し、そのうえで「どこまでのことを学校でやるべきで、どの点は地域住民に任せる(協力してもらう)べきか」という線引きを意識することが重要です。
地域と学校、双方の防災に対する基本的な認識をきちんと整理したうえで「災害からひとりひとりの命を守る」という目的を達成するための目標設定、手段が必要になってきます。
「防災教育」はいのちをまもる手段のひとつ
ここ最近、ともすれば「防災教育をすれば子どもたちの命を守れる=何でもいいから防災教育をやればいい」という雰囲気を感じることがあります。「防災教育で命を守る」というのは間違ってはいませんが正しいとも言えない、といのが個人的な意見です。
あくまで防災教育は「手段のひとつ」であって、それそものを目的や目標にすべきではありません。
防災の目的は「いのち(生活、人生=LIFE)を守る」という一点に集約されます。それを達成するための目標として例えば地域の繋がりをつくる、学校の防災力を高めるといった複数の方向性、アプローチが考えられます。
そして、それぞれの目標を達成していくための具体的な手段が防災教育や防災管理、防災訓練であるべきです。
目的が同じなら学校・家庭・地域で「助け合う」ことができる
地域と学校では防災の考え方は異なります。手段や目標もそれぞれ異なるかもしれません。ですが、目的はどちらも同じはずです。手段や目標の違いでお互いの関係を疎遠にしてしまう必要はありません。
本当に達成しなければならない、災害からひとりひとりのいのちを守る、という目的のために、お互いを理解し助け合っていくことが求められています。
わかりやすい例では、筆者は地域で防災イベントなどを企画・運営するときは積極的に市区町村教育委員会や、校長会などでアナウンスをしていただくようにしています。チラシなどが地域から学校へ、学校から家庭へと広がることで、ご家族で防災について学んでいただく機会が増えます。
まとめ~それぞれが無理なくできることを~
学校に限らず、地域も家庭もそれぞれのスケジュールや都合があります。防災・防災教育だけに時間を割けないのは同じことです。だからこそ学校・家庭・地域それぞれが無理なく取り組めることから、少しずつ取り組んでいくことが重要ではないかと思います。
本ブログでは学校・家庭・地域で手軽に扱えるワークシートや教材も公開しています。最初のとっかかりとしてでも、ご活用いただければ幸いです。