本日は新座市社会福祉協議会さんのご依頼で「災害ボランティアセンター運営訓練」の指導を担当させていただきました。特徴的なのは新座市に近接する和光市、志木市、朝霞市など他市の社会福祉協議会(以下「社協」)職員の方も多数参加されていることです。
新座市社協さんは県社協の災害ボランティアセンター運営マニュアル手引きに基づいて市社協としてのマニュアルも作成されています(新座市社会福祉協議会HP※H23年版です、今回はH26年版を使用)。
他市社協さんもマニュアルを作られていますし、訓練も行われているとのことでした。なので「マニュアルも読んでいて、訓練もしているんですね。じゃあ、今回の訓練も細かい説明は省きますけど、できて当たり前ですよね(笑)」とお伝えしてから訓練に望みました。
訓練の流れは概ね以下のとおりです。時間としては4時間ほどかけて行いました。
① 主催者挨拶
② 訓練の流れの説明
③ 2グループ編制、移動
③ 訓練1回目作戦会議(両チームの役割分担や配置など)
④ 訓練1回目(Aチームが運営側、Bチームがボランティア側)
⑤ 休憩、作戦会議
⑥ 訓練2回目(AB交代)
⑦ 訓練終了、ボランティアさんの炊き出しすいとんを食べつつ意見交換
⑧ 会議室に戻り振り返り、まとめ
訓練のようす
写真:マッチング班による「職安方式(掲示物にボランティアが直接ふせん等をはる)」掲示
写真:受付のようす。ボランティア自身が記名しスタッフがチェック、養生テープに名前を書く。
写真:送り出し班では資機材を模したダンボールや地図を貸出。貸出票で管理もする。
写真:マッチング班裏手でオリエンテーション。リーダーに注意事項や詳細を説明。
訓練で出てきた課題やポイント
『悪い意味で社協職員が「訓練慣れ」している』
基本的には良い意味なんですが、後述するような極めて初歩的なポイントや、当たり前にできてなければならないポイントが抜けていたりしました。その原因はこれまでの訓練が「失敗しない(させない)」ための訓練だったからだと思われます。つまり、多くの方が「慣れている」災害VC運営訓練は、次に何が起きるかわかっていて、そのために必要なものが揃っていて、その通りにやればスムーズに時間通りに、滞りなく進む訓練だったということです。失敗しない訓練にいくら慣れていたところで、現場では失敗ばかりなので、あまり意味がないように思います。ぜひ「失敗ばかり」だけど、それを改善していけるような訓練に慣れていただきたいところです。
『受付が単純作業になっていて、本来の意味を理解していない』
ここからは個別の課題です。後半のグループの5人に「受付を通らないでマッチングしに行ってください」と指示をしました。結局、最後までその5人は誰にも気付かれずに活動を終えることができました。何のためのボランティア受付でしょうか。受付という掲示をしておけば、受付にスタッフがいれば、誰もが間違えずに受付を通過してくれるとは限りません。受付を単純作業として捉えているから起きてしまう事態です。
ボランティア受付は「災害ボランティアセンターの顔」となり得る場所です。できる限りで構いませんので明るく元気に受け付けていただきたいのはもちろんですが、受付で迷っている人や、受付に並ぶのが嫌で勢いあまって先に進んでしまう人がいないかなど、チェックすべきことがたくさんあります。
「実際、そんな細かくチェックできないのだから仕方がない」というのも事実ですが、今、行っているのは訓練です。訓練でさえそのような状況であれば、もっと大きな課題(受付外ボランティアによる事件事故や犯罪行為など)が発生してもおかしくないということです。
『ニーズ受付からボランティア派遣依頼までの流れがあいまい』
全く同じボランティア派遣依頼票が2枚、掲示板に張り出されているという状況がありました。ボランティア派遣依頼票の取り扱いに関するミスです。マニュアルによっては次のような流れになっているところがあると思います。
① ボランティアニーズを電話や口頭で受ける
② ニーズをボランティア派遣依頼票に起票する
③ ボランティア派遣依頼票(の一部等)をコピーする
④ マッチング用掲示板に掲示する・ボランティアリーダーに渡す ・・・
この③で起こるのがこうしたミスです。コピーが効率的かどうかはとりあえず置いておくとして、コピーをした派遣依頼票を誰がどこへ持っていくのか、持っていったことをどうチェックするのか、どう管理するのかを把握していないと、こんな事態が起きます。
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ニーズ受付班のAさんが依頼票を起票します。
Aさん「●●さんの派遣依頼票コピーしてマッチング班に渡しにいこう」→ 机に依頼票を置いておく
そこにBさんが来ます。
Bさん「あれ、ここに●●さんの派遣依頼票があるぞ。コピーして持っていこう」
コーディネーター「あれ、●●さんの派遣依頼票が2枚あるんですけど???」
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極端な例ですが、今回の訓練で実際に起きたわけですから、同じ作業手順を同じ感覚で進めていたら、現場でも同じミスが起こりえるということです。
まとめ
いつも言っていることですが「できると思っていることと、実際にできることは別」ということです。ぜひこれからの訓練では「できること」の確認ではなく、あえて難しい課題や想定外の事態を積極的に取り入れ「できないこと」の確認ができる訓練にしていただきたいと思います。
ただ、もしかしたら内部の方だけではそうした「しかけ」が難しいかもしれません。そうした時はご相談いただければご協力させていただきます。お気軽にお声がけください。