【報告】EDUPEDIAとみんなで考える防災教育2015〜防災教育とアクティブ・ラーニング〜

2015年9月20日(日)、シルバーウィークの真っ最中でしたが、先生のための教育事典「EDUPEDIA」と、東京臨海広域防災公園管理センターとのコラボレーション・イベント『EDUPEDIAとみんなで考える防災教育2015〜防災教育とアクティブ・ラーニング〜』が行われました。企画・運営、総合ファシリテーターとして同イベントに関わりましたので、当日の様子について資料も用いてご紹介します。

当日の配布資料セット

当日の配付資料をまとめてダウンロードすることができます。資料セットには

・イベントチラシ
・防災教育とアクティブラーニング紹介資料(作成:EDUPEDIA)
・防災教育実践50選紹介資料(作成:EDUPEDIA)
・講義「防災教育とアクティブ・ラーニング」配布用(作成:筆者)

が含まれています。

実施背景

このイベントは、2014年度(2015年2月)に実施したイベントに続く第2回目のイベントです。EDUPEDIAというサービスをより多くの方に運営側である学生スタッフの顔が見える形で知ってもらうこと、防災教育において同サービスが有効であることを知ってもらうために企画しました。イベント詳細は下記の記事でご確認ください。

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なぜ防災教育とアクティブ・ラーニングなのか

アクティブ・ラーニング(以下「AL」)とは、児童生徒が能動的、協働的に学べるような環境をつくる学習法の総称です。

文科省による定義では「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、 教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。」とされています。

小中学校では、現場の先生方が試行錯誤しながら、AL的な学習方法を実践されてきました。その一方で、高校以上では受験や国家試験などを想定した教科教育、授業や講義を中心とせざるを得ない環境もあって、他者との議論などを通じて様々な視点から解決策を模索する、あるいは課題そのものの検証や発見を促すような授業や講義の実践が難しい状況にあります。

驚異的なスピードで技術革新や情報拡散が進む現代社会では、社会的な課題そのものが流動的であり、教師や保護者、有識者や専門家も含めた社会そのものが明確な答えを出せない課題が数多くあります。そして、児童生徒はその変化の激しい時代・社会を、様々な形で関わる他者と共に生き抜いていかねばなりません。そのため、教育現場にはALに代表されるような、受動的に答えを待つだけでない能動的かつ協働的に答えにたどり着こうとする力を、児童生徒の中に育てていくことが求められているのです。

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ALで育成を目指す【汎用的な能力】が最も必要とされる、そして困難な場面こそ災害時なのです。私たちの社会が内包している様々な課題は時間をかけて解決策を模索することもできますが、こと災害対応では、ゆっくり時間をかけることがはきません。

できる限り速やかに課題(リスク)を発見し、複数存在するであろう対応策・解決策からひとつ選択し、具体的な行動に結びつけ、かつ状況の変化に柔軟に対応できる必要があります。「災害から命を守る」と言うのは簡単ですが、いつ何時でもそのようになれるために求められる知識・技術、思考力・表現力、コミュニケーションの育成は簡単ではありません。

そして、それができるようになるためには、継続的な平時の教育訓練より他に方法がありません。故に、防災教育とALはとても親和性が高いテーマなのです。

どのようにして伝えるか~EDUPEDIA学生スタッフによる実践

防災教育とALのつながり、有効性について伝えていくためには、模擬授業のような分かりやすい教材やプログラムによる実践・体験的アプローチと、文字通り参加者が能動的に、積極的に、そして協働によって課題について考えられるようなワークショッププログラムが必要です。

同時に、これからALについて調べたりする先生方が、EDUPEDIAの記事をより有効に活用してもらえるような”しかけ”も作っておきたいと考えました。そこで、無理を言ってEDUPEDIA学生スタッフの皆さんにご協力いただき、ワークショップの企画・運営をお願いしました。

EDUPEDIA学生スタッフの皆さんによるワークショップは、下記の記事をベースに進められました。

◯ 学校での避難行動(日本女子大学 石川孝重研究室)

当日のワークショップは「学校での避難行動」というEDUPEDIAに掲載された、ALに対応する記事をベースにして災害時の危険(リスク)を探し出し、災害発生時の対応行動と、事前の備えについて考えてもらうことを目的に行われました。

参加者の方々は、写真で示された学校の様々なシチュエーションを題材に、災害時に想定される危険や対策などをそれぞれの視点から考えていました。

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活用される記事・教材の注意点

これからよりAL型の授業実践、記事が増えることが想定されます。そして、掲載される教材やプログラムの実践には、授業者(教員等)本人も無意識のうちに、ある種の「前提条件」が組み込まれます。

例えば、僕は防災や災害支援について一定の知識があるという「前提条件」があります。それが担当・得意科目であったり、経験であったり、職場環境であることもあります。「前提条件」に気付かなかったり、理解していなかったりすると、書かれたとおりの実践をしたり教材を使っても、授業者が想定するような効果が得られない場合があります。

「プリント1枚で防災教育シリーズ」などは、そうした「前提条件」をできる限り取り除き、あらゆる環境・状況の授業者が扱えることをコンセプトに作成しています。それでも、一部の教材は「意図は分かるんだけど、このままだと(よくまとめ方が分からないし)使えないな」と思うものがあったかもしれません。

それは掲載した実践や教材が必要とする「前提条件」が複雑で理解し難いためです(分かってるならもっと分かりやすくしろよ、と言われそうですが・・・)。具体的に「前提条件」の何がどう整っていないのかを感じる段階は3つあります。

パッと見(直感)で”ムリ”と思われない

1つめは「パッと見」つまり、直感的な印象です。パッと見て「あ、これムリ」と感じたら実践・教材提供者とのかい離(前提条件の差)が大きいためすぐに使うことは難しいでしょう。そのかい離を埋めるとしたら、どちらかが時間と労力をかけて埋めていく必要があります。

「準備の段階」で必要なことを明らかにする

2つめは準備の段階です。その教材を活用する(授業やイベントを実施する)にあたって、事前に必要な知識や技能があるのかを明らかにします。「この説明が足りないんじゃないか」「この資料を加えよう」など、実践・教材には含まれない細かいノウハウも重要です。

「実践の前後」で評価できるようにする

実践事例や教材提供者は「やってみて良かった」という経験、前提があるわけですが、利用される方にはそれがありません。従って「やってみて良かった」という前提を理解するためには、やってみて評価するより他にないということになります。具体的に「どういったことが学習成果・効果として認められるか」を示し、評価できるようにすると安心して活用できます。

まとめ

これからのALや防災教育の普及には「実践されている」あるいは「実践しやすそうな」記事や情報が、EDUPEDIAに増えていくことが大切だと考えています。引き続き、EDUPEDIAスタッフの皆さんとは連携を密にしつつ、イベントも定期的に開催できるようにしていくつもりです。

(追記)参加者アンケート

参加者アンケートの記載内容を一部をご紹介します。一部、厳しいご意見もありましたが、これを教訓に、より良いイベントをスタッフの皆さんと作っていきたいと思います。

  • 初めての参加ということで、どんなことが行われるか不安な面も持ちつつ会場を訪れたが、最終的には参加してよかったと感じた。2回目以降だと、「とても満足している」に近づけるようになると思う。
  • 防災教育という大きなカテゴリの中で実践事例に基づく身近な実践が行われたのでよかった。
  • そなエリア東京のリニューアル後を体験できた。ワークショップで学びがあった。知恵を出し合うと必ず発見がある。
  • ワークショップだけでなく、そなエリア自体の見学がついていたのが良かったと思う。
  • アクティブラーニングの手法の一例を学ぶことができた。
  • 団体自体の目的や概要説明をしっかりしていて、好感が持てた。
  • 学生さんたちの企画力、学ぼうとする先生たち応援します。ここから学んだことを自分たちの糧にしてほしいと思います。みんなで一つのテーマの授業づくりをしても面白いかもしれませんね。
  • 午後だけでなく、1日を通してイベントしてもらえるともっと実りある学習会になると思う。
  • 導入部分の時間をもう少し丁寧にとっていただけると、アクティブラーニング初心者にも取り組みやすくなると思った。

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