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特別支援学校で体験型防災教育、被災後の「食・トイレ・マイスペース」を考える

被災後の生活を考え「健康維持」の大切さを伝える

都内の特別支援学校で『災害を”生き抜く”ための知恵~避難生活の健康維持を考える防災体験~』をテーマに、およそ100名の教員を対象とした研修会を行いました。災害が起きた時の安全確保ができたら、「災害を生き残る」段階から「生き抜く」段階へと移ることになります。特別支援学校を含む、障害等で何らかの配慮が必要な方々、そしてそのご家族や教員など身近な支援者の方々は、この「生き抜く」段階においても様々な課題と向き合わなければなりません。

生徒本人が健康を維持できることはもちろんですが、もし特別支援学校の教員が「トイレと休憩に行ける、食事や水分をとれる、ある程度眠れる」という環境を作ることができなかったとしたら…?障害をもった児童生徒をサポートする、家族や友人が、自分自身の健康を害してしまったら…?

様々な対策や支援で本人が健康を維持することができたとしても、その身近な人が健康を維持できなければ、結果的に本人の負担が大きくなってしまいます。被災後は「ますます健康になる」ことは難しい状況ではありますが、少なくとも「今の健康状態をできるかぎり悪化させない」健康維持の対策を講じることは、すべての人にとって必要とされる、優先すべき災害対策です。

研修プログラム

映像資料の視聴や、後ほどご紹介する非常食の試食などを含めて2時間のプログラムですので、実際の体験時間は90分ほどになります。100名に対して実技指導を行う(なお、指導員は僕1人だけです)時間としてはかなりタイトですが、大事なポイントについて体験していただき、ご理解いただくには十分な時間です。

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(全体プログラム。全体構成は2時間ですが、訓練時間は90分です)

3つのプログラムについての指導案は 2015.12.8記事『【指導案】学校向け防災学習指導案集を公開、編集・再利用自由』 に掲載の指導案集からご覧いただけますので、本記事では実践にあたってのちょっとした工夫やコツをご紹介します。

災害時の食事づくり

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(炊飯袋や非常用カレーを使った食事づくりに挑戦)

災害時の食事づくりでは、まず「温かい食事を食べることの大切さ」について簡単にお話をさせていただきました。

被災生活でなくなるものは、電気・ガス・水道などたくさんありますが、「食欲」もなくなります。もちろん、災害時だってお腹が空くのですが、命の危険があった、家族の安否が分からない、この先どうなるか分からない、ひどく寒い・暑いといった強いストレスを受ける環境では、たとえ目の前に食事があったとしても「食べたいと思えない」ことがあります。備蓄品としてよく扱われている乾パンや、民間企業が緊急支援の物資として提供する菓子パンなど、比較的早い段階で手に入る「食事」は重要ではありますが、それをずっと食べ続けることはできません。

特に寒い時期であれば、やはり「温かい食事」を食べたくなるものです。そこで、家庭用のコンロや水、お米、インスタント食品といった普段から身近にあるものに一工夫することで、温かい食事をつくるという体験をしてもらいます。なお、炊飯袋を使った災害時の食事づくりについては 2015.11.30記事『中学校で災害食とトイレの体験学習、被災「それから」を考える』 をご覧ください。

訓練に際して学校にご用意いただいた資機材は

  • 家庭用コンロ 3台
  • 大型アルミ鍋(40L程度) 2つ
  • やかん(5L程度)1つ

です。いずれも、学校にある資機材です。これに訓練用の各種非常食(乾パンやアルファ化枚)や非常用カレー(フリーズドライ加工された、水・湯だけで調理する固形カレー)をご提供いただきました。カレーは校長先生自ら調理していただき、作った炊飯袋を煮沸している間に下記のプログラムを実施しました。作った炊飯袋とカレーは、体験の最後で試食しました。

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(炊飯袋は家庭のお米が使え、分量や柔らかさの調整、味付けが自由にできるのが利点です)

安全衛生に配慮したトイレづくり

食事を食べたり、水分をとったりが安心してできるのは、「トイレに行ける環境がある」ということが前提になります。もし、トイレに行けない(使えない、場所が分からないなど)環境だとしたら、たとえお腹が空いていたり、喉が乾いていても、安心してご飯を食べたり水をのんだりできなくなります。

過去の災害事例を見ても「水分を取るとトイレに行きたくなるので、なるべくとらないようにする」という対応をしたことで、体調を崩してしまう事例は少なくありません。つまり食事や水分の適切な摂取は、トイレの確保と切っても切れない関係ということになります。学校にご用意いただいた資機材は

  • みかん箱程度のダンボール箱 あるだけ
  • ガムテープ 10巻
  • 新聞紙 朝刊20日分程度
  • カッター、はさみ

です。災害用の非常トイレ袋、吸収剤(粉末状で水分等を吸収、ジェル状に変化させるもの)も展示用にご用意いただきました。充分な数量は備蓄されている、ということでしたが、袋と吸水剤だけだったので担当の先生も「備蓄はしているけれど、封を開けたこともないし、使い方もよく分からない」とのこと。そのようなケースは、少なくないのではないでしょうか。

学校の既存のトイレに、災害用トイレ袋と吸収剤を使って断水時に対応する、というのがシンプルな使い方ですが、いつまで足りるかは分かりません。備蓄されているトイレ袋や吸収剤がなくなってしまった場合、別の手段を講じる必要があります。そこで、学校にあるものを使って、できるだけ衛生的な災害トイレづくりを体験していただきました。

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(学校にあるものを工夫して使い、課題解決に取り組む)

ダンボールトイレは、特別支援学校におけるトイレとして適切ではないかもしれません。既設のトイレを活用したほうが効率的で、衛生的です。従って、学校の安全管理計画・防災計画でも適切なトイレ管理については言及するよう、お伝えしています。ただ、教員や生徒がいつも学校で被災するとは限りません。トイレという環境、設備がない場面もあるかもしれません。

そんな時に求められるのが「今の環境や状況、今ある資材、道具でどのように課題を解決するか」を考え、実行することです。「主体的な学び、行動」が必要なのは生徒だけではありません。

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(災害対応では「結果」が重要、でも訓練では「過程」を大切に)

避難所等での「マイスペース」づくり

食事とトイレができたら、最後に必要なのは「休息・睡眠」です。ご飯を食べ、水分補給し、トイレに行けたとしても、不眠不休では体調を崩してしまいます。最悪の場合、過労によって倒れてしまう、命を落とすことさえあります。ということは、安心して休むことができる、寝ることができるスペース=「マイスペース」が重要になります。

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(保温性やプライバシーを、どうやって確保する?)

一時的とはいえ、しばらくの間見ず知らずの他人と同じ場所で寝食をともにしなければならない環境が避難所です。特に女性にとって、着替えや授乳、就寝場所など高いプライバシーと安全の確保が必要です。かといって、全員・女性だけの個室スペースを避難者数分平等に用意することは物理的に難しいでしょう。

パーティションや間仕切りなどがたくさんあれば、いくらか違うかもしれませんが、それも全員が必要な分だけ使えるとは限りません。そこで、災害トイレと同様に学校にあるものを使ってマイスペースを考える・つくるという体験をしていただきました。学校に用意いただいた資機材は、トイレと同じです(但し、ガムテープの使用は禁止し、大きめのダブルクリップ10個を追加)。

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(体育館の物理的な環境を使うチームも)

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(椅子、ダンボール、アルミックシートを活用)

班は全部で10班ありましたが、ブルーシートやダンボール、椅子などは数が足りませんでした。でも、そのまま実施しました。必然的に『早い者勝ち』になります。大きなブルーシートと椅子とダンボールを活用できる班もあれば、ブルーシートも椅子もない、という班もありました。訓練だからといって、必ずしも全員が同じ環境でなくても良いと考えています。実際の場面でも、隣と同じものが使えるとは限らないからです。

特別支援学校に限りませんが、自分だけのプライバシーが確保できるスペースがあることは、精神的な安定にもつながります。他人の視線や光(できれば音や冷気も)を遮ることができれば、それだけ休息・睡眠をとりやすくなるのです。

校長先生は、実施後に「秘密基地づくりを思い出した」とコメントされました。僕もそのとおりだと思いますし、このプログラムもそう名付けたいところですが、防災教育っぽさを出すためにも「マイスペースづくり」としています。

まとめ

安全衛生の3原則①休憩しトイレに行く。②食事と水分をとる、③睡眠をとる、の最大のポイントは「自分でやるしかない」のです。誰かに「私の代わりにトイレに行って」とか「代わりにご飯を食べといて、寝ておいて」とはいきません。そして、どれかひとつでもやらずにいれば、遅かれ早かれ健康を害することになります。災害が起きてから「どうしよう!!」と慌てても、どうにもならないかもしれません。だからこそ起きる前に健康を維持するための備えが、訓練が必要なのです。

もし、本記事をご覧になって被災後の健康維持を考える防災体験学習に興味を持たれた方がいらっしゃれば、お気軽にご相談ください。進め方その他、環境に合わせて効果的に実施できるよう、お手伝いさせていただきます。

上智大学・法政大学での防災教育訓練、学生による心肺蘇生法指導も

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