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発達障害と防災~在宅避難と支援者にできること~

障がいをお持ちの方、そのご家族・支援者の方にとって『事前の備え』、自助・共助は大切です。個人や家庭の備えといった自助に加え、支援者同士のつながり、ネットワーク、絆といった共助も重要です。それはつまり、障害と防災を考えるうえで公助=制度的な支援、行政の防災・災害対応には課題も多いということでもあります。

周囲の理解が得にくい、本人も支援者もコントロールすることが難しい感情や特性を持った方々が、災害にどのように向き合うのか、具体的にどんな備えが必要なのかについて考えてみたいと思います。

ご家族の体験談から…

講演会等で伺った、ご家族の方の体験談から、ご家族・支援者の方にとって参考になるであろうメッセージのうちいくつか抜粋して、コメントを加えてご紹介させていただきます。

避難所には「行かない」ではなく「行けない」を前提に

東日本大震災後、内閣府が行った調査では、避難に際して手伝いが必要な方のおよそ4割が「避難できなかった」もしくは「避難できたけどしなかった」と回答しています。「避難できたけどしなかった」理由としては「生活できないと思った」、「避難所に居づらいと思った」と続きます。

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障害の有無に関わらず、避難所での生活は普段と異なる環境で心身に大きな負担となります。障害を持った方への周囲の目線が厳しければ、本人もご家族も支援者もつらくなってしまいます。そのつらさ、ストレス、不安が障害をお持ちの方にも伝わり、突発的な行動や発声などにつながる…さらにその行動に対して周囲の目線が厳しくなる、という悪循環に陥ってしまいます。

発達障害や知的障害、精神疾患など周囲の理解が得にくい、分かりにくい方は特に、避難所に「行かない、来ない」のではなく、現実的な問題として「行けない」のだ、ということを踏まえて、地域での避難所設営訓練や施設や作業所での福祉避難所訓練などは考えなければなりません。

障害がある方の安全安心、安定を第一に考える

被災するという特殊な状況、急激な環境の変化による心身への負担は、誰にとっても大きいものです。障がいがある方の安全安心、安定に必要な物品、環境、人材が失われてしまうことも考えられます。そこで、まず考えなければならないのは『障がいがある方の安全安心・安定のためには、何が必要であるか』ということです。

地震や風水害から「身を守る」ために必要な訓練や防災グッズの準備は、それぞれ障がいの特性や個人の能力に合わせて備えておくこと安全安心につながります。また、例えば何か「モノ」や「行動」に対する執着、好みがありそれがないと落ち着かない、パニックの引き金になってしまうというような「モノ」や「行動」が、災害が起きても継続して使える、できるということが安定につながります。

「在宅避難」という選択肢、そしてやむを得ず避難する時

できる限り「モノ」や「行動」を災害前と同じようにしようと考えると、避難所でそれを維持することは極めて困難です。そういった場合は自宅が無事で、二次災害の危険性がなければ「在宅避難」という選択肢があります。発達障害に限らず、障害をお持ちの方や乳幼児・妊産婦さんがいるご家庭、ペットと暮らす方などにとっても「在宅避難」は重要なキーワードと言えます。在宅避難については、別記事を書いていますので、そちらで詳細をご確認ください。

自宅が被害を受けるなどして、やむを得ず避難所に行かなければならなくなった場合は、施設(避難所)管理者や行政担当者等に障がいのことを伝え、必要な配慮についての要望を伝えます。避難所運営の大原則は「住民(避難者)主体であること」です。従って、避難している一人一人が、意見を伝え運営に関わることができます。障がいの特性、安全安心・安定のために必要な配慮があることを共有し、対策を講じます。

情報を発信すれば、同じような課題、ニーズを持ったご家庭と共に取り組めるかもしれませんし、外部支援(ボランティアや、普段からつながりのある支援者ネットワーク等)の協力が得られるかもしれません。情報が発信されないと、周囲の方や支援者も誰が、どこで、どんなことで困っているか分からず支援が進めにくくなります。何らかの形で、積極的に情報を発信していただきたいと思います。

新しい生活に合った行動パターン、コダワリを考える

在宅避難でも、避難所での生活でも「被災前と全く同じ生活・行動パターン」はできません。食事やトイレにしても、買い物ができなかったり、断水で使えなかったりします。「●●だからできない、ダメ!」と否定してしまうと、パニックや閉じこもりなどのきっかけになってしまう可能性があります。

とても強いコダワリがあり、それが災害時に継続することが難しい場合、その後の避難生活はご本人にとっても、ご家族や支援者にとっても大変な苦労があります。普段からいくつかの代替案に慣れておくことや、次の動作に意識を向けて、コダワリのある動作から気持ちを別の動作へ向けるなどが、対策・支援の方法として考えられます。

会話以外のコミュニケーションを活かし「自己肯定感」を高める

コミュニケーションの仕方は人それぞれです。会話ができない、しないとしても、人に何かを伝えるための行動や動作があります。ただ、ご家族や支援者の方以外には、そうした非言語のコミュニケーションは、分かりやすい場合もあれば、理解しづらいこともあります。

もし分かりにくい動作があれば在宅避難であれば近隣住民の方、避難生活中であれば周囲の方にお伝えし、どのような場面で、どんな情報を伝えようとしているかを理解してもらうことも大切です。下記の記事で紹介しているようなiPadアプリや、普段から非言語コミュニケーションの動作などをまとめたメモなどがあると良いかもしれません。

ご本人が自分の力でできることを増やすのは、発達障害の方にとって難しい課題である「自尊感情」や「自己肯定感」の向上につながります。「このくらいできて当たり前」とは「できなければならない」と決めつけるのではなく、できないことはできない(家族や支援者、代わりの人にお願いするなど)、できること、やりたいことに取り組もう、と思えるようになることが大切です。

ご本人、ご家族・支援者の備えのポイント

上記の点は個別性が高い部分もあり、誰にでも該当するというわけではないのですが、下記に障害の種類、程度、環境を問わず、すぐに活かせる備えをまとめてみました。

緊急地震速報と安全行動訓練

緊急地震速報やエリアメールは、日常的な生活パターンの中に突然飛び込んでくる、イレギュラーな情報のひとつです。緊急地震速報やテレビやラジオから「ピロンピロン」というやや高めの音が鳴り、地震が来ることを知らせます。エリアメールはスマートフォンなどが「ブイッブイッブイッ」と鳴動します。

ご本人はもちろんですが、ご家族や周囲の人も突然鳴りはじめる音にびっくりして、動揺してしまいます。その驚きや動揺、不安は発達障害をお持ちの方、小さな子供、ペットなどにも伝わります。いざという時に冷静に行動できるよう、それぞれの音や発信元、とるべき行動について知っておくことが重要です。

また、緊急地震速報やエリアメールで地震が来ると分かった場合の安全行動についても、定期的に訓練を行うことが望ましいです。杉並区では毎年「シェイクアウト」という防災訓練に取り組んでいます。「まず低く、頭を守り、動かない」という3つの安全行動を、決められた日時に区内全域で行います。参加者は事前に意思表示をして、自分がその日その時間、いる場所で訓練に参加します。

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(提供:効果的な防災訓練と防災啓発提唱会議)

防災マップ&ハザードマップで地域の災害リスクを知る

災害から身を守るための行動、避難行動などが他の人よりも遅れてしまう場合があるとすれば「いかに早く、災害に関する情報を手に入れ、早め早めの行動を心がけるか」が重要になります。最も基本になるのが、お住まいの地域の防災マップ(地震等)や洪水等ハザードマップです。

ただぼんやりと見ていると何がどう役立つか分からないので、簡単ですがポイントをご紹介しておきます。

避難所や福祉避難所、医療機関の場所とルートを確認しておく

どこか一箇所だけだと、何らかの事情(道路が使えない等)で移動できない場合にどうすればいいか困ってしまいます。それぞれ2~3箇所、自宅からのルートを確認しておきましょう。自宅のすぐ取り出せる場所(後述の防災グッズなどと一緒に)に地図を入れておくと安心です。スマートフォンをお持ちの方は、各自治体で防災アプリを提供している場合もありますので、予めインストールしておくのも良いですね。

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杉並区はJR中央線、京王井の頭線という乗降客の多い路線と、青梅街道・井の頭通り・環八通りという交通量が多く、緊急輸送路(災害時に緊急車両の通行が優先、一般車両が通行禁止になる場合も)に指定されている道路が縦横に走っています。その分、帰宅困難者の課題も多いと考えられます。また、JR中央線荻窪駅周辺には避難所(杉並区では震災救援所という)が少なく、南側の神田川沿いも一部避難所が少ないエリアがあります。

こうしたエリアにお住まいの方は、避難所の位置や避難経路をよく確認しておかないと、いざという時にスムーズに避難できない可能性があります。

害の危険箇所は予め確認し、いざという時は近寄らない

洪水ハザードマップで気をつけなければならないのは、自治体によって「避難所=地震も水害も同じ」とは限らないという点です。杉並区が「震災救援所」という表現にしているのは、この点もあるからと考えられます。杉並区の洪水ハザードマップをチェックしてみると、浸水が予想される地域にある小中学校などは水害時の避難所としてはマップ上指定されていなかったりします。「大雨の時はいつもの小学校に」というのが正しいとは限りませんので、お住まいの地域の洪水ハザードマップ等をチェックして、安全な避難ルート、避難場所を確認してください。

防災グッズを備えよう

防災グッズについてのチェックリストは、下記の資料が参考になります。

前述の「在宅避難~」でもご紹介したように、それぞれの家庭の特徴・特性に併せて備えていただくことが重要です。外せない備えとしては『飲料水』、『携帯トイレ』でしょうか。

生活再建支援の手続きを知っておく

もし家屋や家財が地震や水害で被害を受けてしまった場合は、役所等で手続きをして、被災したことを証明する「り災証明書」を申請、受理することが必要です。税金の減免手続きや保険料の請求など、その後の事務手続きで重要な書類ですので、なるべく早く窓口で申請して受け取ります。被災時の手続きについては下記の資料が参考になります。

今後に向けて

被災された方の体験談、ご本人やご家族・支援者の備えについてご紹介しましたが、これを踏まえて災害救援ボランティア、防災教育、社会福祉それぞれの視点からどのようなアプローチができるのか、そして僕自身がどのようにこれから活動していくのかについて、改めて別記事でご紹介したいと思います。

在宅避難・車中泊の知恵袋~おうちでサバイバル7つのポイント~

[イベント]公園で防災について学ぼう@城北中央公園(10/7)

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