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発達障害と防災~ICT機器の可能性と課題~

防災教育や災害支援に役立つICT教材について

ご縁があってこのテーマに防災教育の視点で関わらせていただくことになりました。現在取り組まれている状況を関係者の方からお聞かせいただき、他分野の先生方のお話を聞きながら感じたことを備忘録的に整理しておきます。

また、杉並区の関連事業のお手伝いもさせていただいています。そちらについては別記事をご参照ください。

 

発達障害(はったつしょうがい)ってなんだろう?

本ブログは学校関係者の方や、地域防災に関心のある方にご覧いただくことが多いようです。少しでも理解を広めるという意味で、基本的な理解について参考になるサイトをご紹介します。ただ、あくまで基礎部分の紹介ですので、民間での取り組みや、実際に発達障害児の子育てに取り組まれている方のブログなどがより分かりやすいと思います。

本記事では厚生労働省による説明を引用させていただきます。

生まれつきの特性で、「病気」とは異なります。発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害などが含まれます。これらは、生まれつき脳の一部の機能に障害があるという点が共通しています。同じ人に、いくつかのタイプの発達障害があることも珍しくなく、そのため、同 じ障害がある人同士でもまったく似ていないように見えることがあります。個人差がとても大きいという点が、「発達障害」の特徴といえるかもしれません。

発達障害の子どもたちと災害

発達障害の子供たち(大人の方も)を取り巻く災害の状況は大変厳しいものです。発達障害とひとくくりに言っても、軽度重度、こだわりの種類、個性があります。障害がなくても、あるいは他のあらゆる障害と共に生きる方にとっても、被災は心身ともにつらいものです。それでもなお厳しいというのは、様々な点で「周囲に理解されにくい」ことに起因します。

発達障害、とくに本件で主に取り扱う自閉症(高機能自閉症、アスペルガー症候群)の特徴のひとつである「こだわり」は、単なるワガママやしつけの問題として誤解され、本人だけでなく家族や周りの人も苦しむことは、東日本大震災、あるいはそれ以前の様々な災害におけるヒアリングからも分かっています。

本事業は、ICTを用いた学習支援機器を開発し、防災教育や災害対応の場面に活用しようというものです。”事業”ではありますが、ビジネスベースの話ではないので、個人的には防災面だけでなく機器や教材の非営利での運用についても、何かお手伝いできるかなと思っています。

ICT機器による防災教育(支援)のあり方

僕は「その教材やICT機器が本当に児童生徒の命を守ることにつながるか」を、客観的に考えることになります。まず最初に考えなければならないのは、発達障害、特に自閉症等に関連する何らかの特性を持った子どもたちが、どこまで教材や機器を意図したとおりに扱えるのか、という点です。防災教育用教材に関して言えば、特別支援学校や各種施設で指導者が使用することが中心になると思いますが、一部のコンテンツや機器は児童生徒が使用することを前提としています。

POINT 手段と目的を整理できるかどうか

通常の防災教育教材もそうですが、児童生徒の理解度や発達段階に応じた教材でなければ適切な学習効果につなげることが難しくなります。また、理解のしやすさや親しみやすさを意識して手法にこだわりすぎると、本来の学習目的からかい離することもあります。

例えば「ゲーム形式で楽しく学ぶ」ということができる教材で「生徒が関心を持って取り組んでくれた」という評価がよくありますが、それは「ゲームという手法」に関心があるという意味で、指導すべき防災の内容についての関心ではないかもしれません。そのように評価することができるとしたら、防災に関する質問やテスト等を実施し、学習内容との関連性を客観的に評価しないと本当の意味で「関心を持って取り組んでくれた」とは言えないでしょう。

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POINT ICT機器の特性を最大限に活かせるか

こうした現状を考えてもICT機器の有用性が感じられるのは、タブレットなどが通常の紙媒体の教材や、PowerPointなどによる視覚的な教材に比較して、【インタラクティブ(双方向性・対話性】に長けているという点です。画像や映像を積極的に取り入れて、抽象的概念が理解しにくい児童生徒でも分かりやすい工夫ができたり、自分で納得できるまで何度でも繰り返し操作することができたりする点は、一般教材にはない特徴です。この点を活用した研究開発にぜひ期待したいと思います。

ICT機器による災害対応(支援)のあり方

被災後の自閉症等の児童生徒に想定される課題例としては、

  1. 時間感覚のない状況に耐えられず、衝動的な行動をとってしまう
  2. 「自分」を理解したり、「相手」の認識が難しく、意志を伝えられない
  3. 周囲の理解が得られず、本人や家族の心身に負担がかかる

といったものが挙げられます。つまり、こうした課題を解決してくれる機器があれば、それがICT機器による災害対応(支援)としては有効である、ということになります。

単純作業を継続できるゲームや、自分の好みや意志を視覚的に伝えられるアプリなどが既に開発されています。一部は下記で紹介されています。iPadやスマートウォッチを使った取り組みが今後検討されているようですので、こちらも上手に活用されるようになれば、本人だけでなく家族・友人などまわりの人にも大きな助けになることでしょう。

すべての方を災害から守るために

 

ICT機器が開発されれば万事解決か、というとそう簡単な問題でもありません。問題はICT機器による支援も困難な状況にある方々をどう災害から守るのかということです。それは本人の「いのち」を守るだけでなく、家族なども含めた「生活」や「人生」をどう守るのか、ということです。通常学級の児童生徒の命・生活・人生を守ることも現状課題となっている状況で、ハンディキャップを持った方々への対応を考えるなんて難しすぎる・・・と思われるかもしれませんが、ご本人やご家族にとっては関係ありません。

障がいとその課題への理解を広めるツールとして

課題解決のためには障害そのものをより多くの方に理解していただくことが重要です。かといって、一般の方にいきなり障害を持った方と接しましょう、施設等でのボランティアに参加しましょうというのはハードルが高すぎます。そこで、ICT機器やアプリなど身近なもの、取り扱いしやすいものを導入にして発達障害の方が見ている世界、そのご家族の方が感じているものを、少しでも共有・共感できればいいなと考えています。

当事者の方と一緒に学べる機会、仕組みをつくる

アプリや機器を適切に扱うための研修や講習会を実施し、修了者や支援団体のボランティアさんによる出前授業や積極的なイベントの開催なども有効ではないでしょうか。文科省の支援機器開発事業とは関係ありませんが、研究開発に携わられる方々には、ぜひそうした長期的なスパンでの視点をお持ちいただければと願っています。逆にそうした機会や仕組みがないと「つくって発表したけどそれでおしまい」ということになってしまいます。

防災の本質は助け合いです。各種の教材や機器はそのための道具に過ぎません。ただ、人間は道具を手に入れたことで飛躍的な進化を遂げました。今まで解決が難しかった課題も、新しい道具、ツールの登場で解決できるようになることでしょう。

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